強制ログアウト もう一つ その2
Added 2020-05-12 14:54:37 +0000 UTCここに居るのは俺のはずなのに、鏡に映っているのは俺じゃない。おかしい、どういう事なんだ。 原因として考えられるのはゲームのメンテナンスでの強制的なログアウト、もしくは俺の精神がおかしくなってしまったかだ。 俺の精神がおかしくなっていたのなら俺にはどうしようもない。とりあえず前者の可能性で現状を把握しよう。 考えられることと言えば、俺の精神が違う人間の中に入ってしまったという状態だ。現実的にあり得るかどうかはこの際置いておこう、実際に起きてしまっているのだから。 まずは目覚めた家を見て回った、1LDKの単身者向けの部屋らしい。部屋にある食器や生活用品の数からみても間違いない。 そこでダイニングテーブルに置かれている郵便物を見つけた。住所を確認すると、ここがとある地方都市であることが分かった。そしてこの家の住人の名前、今の俺だと思われる人間の名前も分かった。 「ナツミ・・・?」 思わずその名前をつぶやいたが、聞き覚えが無い。それも当然か、見覚えも無かったのだから。 とにかく今は情報が欲しい、少し気が引けるがパソコンの中身を見せてもらおう。同じゲームのプレイヤーなら俺との繋がりがあるかもしれない。 ゲームにログインできない今の状況、他の部分でアプローチをかける。そうして開いた画像フォルダだが、思いのほか収穫があった。 ゲーム画面のスクショが出てきたのだが、見覚えのあるキャラクターが並んでいる。どうやら俺と同じギルドに所属しているらしい。 そのフォルダに入っている画像を一通り確認していくと、どの画像にも移り込んでいるキャラクターを見つけた。見間違えるはずがない、テロスだ。 「ふむ、ナツミが・・・テロス?」 テロスは男性キャラクターだったが、ナツミは見ての通り女性だ。俺はテロスのプレイヤーも男性だと思っていたが・・・いや、そういう事もあるか。前にネカマに騙されたという知り合いの話も聞いたことがある、女性が男性キャラクターで遊ぶこともあるだろう。 ここで一つの可能性が浮かび上がる。 俺がテロスのプレイヤー、ナツミになっているというのなら、逆にナツミは俺になっているのかもしれない。短絡的すぎるかもしれないが、可能性としてはあり得る。 となれば俺の身体の方に連絡を取ってみる価値はあるかもしれない。そのままパソコンを探ると俺も使っているSNSを見つけた。 一応、SNSの中身を見ないように気を付けながら俺のアカウントを検索する・・・見つかった。 すぐさま友達申請をすると、ほとんど間を置かずに申請が承認された。念のため、むこうに伝える情報は絞ったほうがいいだろう。 伝わる人間には伝わるよう、簡潔な文章を送る。 『俺はケイモン、お前は?』 俺になっているのがナツミ、もしくは同じギルドのメンバーならばこれで伝わるはずだ。伝わらなかった時は・・・その時はその時だ。 それから数秒、俺のアカウントからボイスチャットの通知が飛んできた。 少し不安は残るが、答えるしかない。 『あ、あの、私テロスです!アナタはテイモンさんですね!?そのアカウントは私のですよね!?どうなってますか!?』 そのボイスチャットに答えた瞬間、俺が口を挟む間が無いほどに言葉が浴びせかけられた。その声は確かに俺の声だが、その口調はどこか女性らしさを感じる。それに俺が使っているナツミのアカウントを自分のものだと認識している、予想通り俺とナツミが入れ替わった形だ。しかし、疑いもなく信じていいのだろうか? 『えっとですね、私は今どうなっているのか分からなくって、テイモンさんは何かわかりますか!?どうですか!?教えてくださぁい!・・・はぁ、はぁ・・・』 ・・・嘘を言える人間ではなさそうだが念には念をだ、少し探りを入れておこう。 「テロス、今日のクエストで最後に使ったスキルはなんだ?」 『え、えっと・・・スキル名は覚えてないんですけど、大きな岩を作って敵にぶつけるスキルで・・・あ!クエストが終わってから話したじゃないですか、エフェクトが好きだから取ったって!』 「そのほかに話したことは?」 『そのほか、そのほか・・・て、テイモンさんが装備を変えていて、全体コーディネートのためで、私も見繕って欲しいなって・・・!』 今まで質問した内容は今日のもの、しかもログアウトする直前のものだ。 クエストクリアの打ち上げという名目上、その場にいたのは挑んだ四人。団長、ソウジ、テロス、俺だ。 団長とソウジは別に話をしていたから詳細まで聞いていないはずだ、となると俺と話している相手はテロスと判断して良いだろう。 「・・・すみませんでした、試すような真似をして。あなたがテロスさんではない可能性を考慮し、警戒させていただきました。」 『あ、あっ、なるほど・・・』 「それでは、お互いに現状の確認をしたいのですが・・・」 さて、とりあえず俺の身体の無事は確認できた。 しかし、それが分かったところで事態は好転しない。元に戻る方法が分からないからだ。