「ねえ、昨日の言った事は……ちゃんと覚えてるよね?」
朝の食卓で、姉ちゃんが意味深に笑う。俺は味噌汁をすする手を止めた。
「な、なにが……」
しらを切ろうとしたが、視線を合わせられない。昨日の感触が、まだ体に残っている。
姉ちゃんはにやりと笑った。
「ほら、あんた……下着、一枚しかないでしょ。昨日あれだけ濡らしたんだから、洗濯回してる間はノーパンだったんじゃない?」
「えっ……」
いきなりすぎて言葉が詰まる。
「それとも……男だった時にこっそり買った下着でも穿いてるの?」
「……いや……サイズ合わなくて……っ!?」
口を滑らせてしまった瞬間、姉ちゃんの目がきらりと光った。
「へえ……あんた、そんなの買ってたんだ。」
「うぅ……っ」
図星を刺され、顔が一気に熱くなる。羞恥が喉の奥で膨らんで、声が出ない。
「ふふ、じゃあ今日は一緒に下着を買いに行こうか」
◆
外出のために姉ちゃんは私服を貸してくれた。デニムにTシャツでいいのに…。用意してくれたのは、大きく胸が開いた青い半袖のブラウスと白のミニスカート。
「似合ってる似合ってる。私の妹って紹介してもいいくらいだね」
「うぅ……」
からかわれながらも、結局逆らえないまま一緒にモールへ向かった。
休日のショッピングモールは人で賑わっていて、胸がざわつく。
人混みを抜けて、下着ショップの前に立つと、足がすくんだ。
女物の下着ばかりが並ぶ店内。場違いな気持ちで胸が苦しい。
「ほら、入ろ」
姉ちゃんが腕を引っ張った、その時――。
「あれっ!友月(ゆずき)先輩!」
背後から、明るい声が響いた。
◆
振り返ると、そこに立っていたのは――倉島彩音。
中学時代、俺が密かに憧れていた初恋の人。
まさかこんな場所で、こんな見た目で再会するなんて。心臓が跳ね上がり、息が詰まった。
「わぁ!彩音ちゃん、久しぶり!」
姉ちゃんが笑顔で駆け寄る。高校では同じ陸上部で先輩後輩だったらしい。
二人は楽しそうに談笑し始める。俺はただ立ち尽くすしかなかった。
「今日はどうしたんですか?」と彩音が尋ねる。
姉ちゃんは一瞬こちらを見て、意味ありげに微笑む。
『言わないで』と必死に目で訴える俺。
「今日は姪っ子と下着を買いに来たんだよ。良かったら彩音ちゃんにも選んでもらいたいから、付き合ってくれない?」
一瞬で血の気が引いた。彩音の瞳が、まっすぐ俺に注がれる。
逃げ場はなかった。
◆
「へぇ……姪っ子さん、すっごく可愛いじゃないですか!」
彩音がにこっと笑う。その笑顔は中学の頃と変わらない。
だけど今は、心臓が潰れそうなくらい強く鼓動している。
「じゃあ、私も似合いそうなの選んでみますね」
彩音が店内のラックに手を伸ばし、次々と下着を手に取っていく。
レースたっぷりの可愛い系、落ち着いた色味の大人っぽいもの、華奢なストラップのちょっと挑発的なデザインまで。
俺の視線は勝手に逸れてしまう。けれど彩音はそれを許さず、ひらひらと目の前に差し出してくる。
「ね、これとか絶対似合うと思う」
「や、やめっ……」
拒否の声は情けなく掠れるだけ。隣の姉ちゃんは楽しそうに見守っている。
「……あの、ほんとに……」
「試着してみましょうか!」
彩音の笑顔が、決定打だった。
俺は逃げられないまま、試着室へと追い立てられる。
◆
カーテンの内側、狭い試着室。
「一人で着られる?それとも、手伝おうか?」
姉ちゃんの声が背後から降ってくる。振り返る暇もなく、ずかずかと入ってこられる。
「ちょっ……ここ狭いだろ……!」
「いいじゃん、姪っ子の面倒見るの」
姉ちゃんは当然の顔でハンガーから下着を取り出し、服を剥がしていく。
「彩音ちゃーん、ちょっと待っててねー!」
姉ちゃんがカーテン越しに声をかけると、「はーい」と彩音の返事。
背筋が凍る。彩音はすぐそこにいる。
「……ほら、腕上げて」
言われるままニットを脱がされ、下着姿になる。
その瞬間、姉ちゃんの指が肌をなぞる。ブラのホックを外され、胸が解き放たれた。
「……やっぱり、柔らかいね」
低く囁かれ、乳首を軽く弾かれる。
「っ……あ……」
声が漏れるのを必死に噛み殺す。彩音に聞かれたら……。
「ほら、新しいのつけよっか」
レースのブラを当てられ、肩紐を通される。
でも手がわざとらしく遅く、指が胸を撫でては摘まんでくる。
腰が震え、脚に力が入らない。
「ねぇ、似合ってるかな?」
カーテンを少しだけ開け、彩音に見せようとする姉ちゃん。
「ちょっ!待っ……!」
慌てて押さえる俺の手を、姉ちゃんは強引に退けた。
「わぁ……すごく似合ってる!」
血の気が逆流するみたいに顔が熱くなる。
俺の秘密が、憧れの人に丸見えになっていく。
◆
「下も、試してみよっか」
姉ちゃんがショーツを手に取る。今、着ている布を下ろされ、素肌を晒された瞬間、空気が触れて疼く。
「……声……出しちゃダメだよ」
姉ちゃんの指が、敏感な部分を軽く撫でる。腰がびくっと跳ねる。
「っ……やめ……っ」
「声、聞こえちゃうよ?彩音ちゃんに」
耳元で囁かれ、理性が吹き飛びそうになる。
姉ちゃんの指が、ビラビラの周りを優しくさする。
「あぁ……ダメだって……本当に……」
そのまま指が、入口を通り中に入ってくる……。
「あっと!下は試着出来ないんだったー。パンツ上げて」
姉ちゃんがわざとらしく声を上げた。
「せんぱーい、大丈夫ですか?」
カーテンの向こうから彩音の声。
「ごめんごめん。大丈夫だよ」
「よかったぁ。じゃあ、次はこっちもつけて欲しいな」
彩音の笑顔が透けて見えるようで、逃げ場なんてない。
「うん、ちょっと待ってねー!」
試着室の中、姉ちゃんの手は止まらない。
ブラの隙間から手を入れられ、敏感な突起を転がされ、時に優しく、時に強くつねられる。その緩急に俺は身体が勝手に震える。
吐息が抑えきれず、喉の奥から漏れてしまう。
「……外にあんたの同級生がいるんだよ……。声聞かれちゃうよ……」
甘く囁かれ、膝が崩れそうになる。
カーテンの外では彩音の声。
「友月先輩、もっといろんなの着せてあげたいです!」
俺の羞恥は、もう限界を超えていた。
【6章へつづく…】
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