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桜梅桃華@女装・TSF小説
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女性限定ヨガに紛れ込んだ俺の末路:5

断たれた退路

スタジオの空気が急に重くなった。

「女性ホルモンが入っている」なんて言われて、俺は頭が真っ白になる。

胸の奥からせり上がってくる恐怖で、手のひらが汗ばむ。


「ま、待ってください……! そんなの、聞いてない……!」

声が震える。俺はバッグを掴んで逃げ出そうとした。


けれど、JURIAがすっと立ちはだかり、柔らかい笑顔を浮かべたまま首をかしげる。

「え?女の子になりたいって、言ってましたよね?なんで止めるんですか~?」


「ち、違っ……」


「まさか……下心があって、このヨガに参加したんじゃないですよね?」

その声はいつもの穏やかな声と比べると、冷たくトゲがあった。


「もしそうなら……すぐに警察に通報しますよ?」


「……っ」

心臓が凍りついた。

通報なんてされたら、仕事も今の生活も全部なくなる。生きていけない。


リリーが俺の横に立ち、肩にそっと手を置いた。


「ねぇ……体の変化、もう始まってますよね?」


「え……」

思わず彼女の顔を見る。

リリーの瞳は真剣そのものだった。


「今やめても、もう元の男性には戻れないよ。二度と勃つことはないし……極端に小さくなっちゃうから、女の子を満足させられないよ」

囁き声が耳の奥に焼き付く。


この数日間感じていた違和感が、急に現実味を帯びて押し寄せてきた。

女性のきわどい姿を見ても“ムラムラ”しないし、勃つ事が無くなったのだ。疲れているだけだと思っていただが……。


「……そ、そんな……」

膝が笑う。腰から力が抜けて、その場に崩れ落ちそうになる。



「じゃあ選んでください」

JURIAが机の上に置いたシェイカーを取り上げ、もう一杯用意する。

中にはさっき飲み干したものとは少し色が違う、白濁した液体。ほんのり甘い香りが立ちのぼる。


「こっちは女性ホルモンがさらにた~っぷり入った業務用のタイプです。ちなみにさっき飲んだのは家庭用です」

彼女はにっこりと笑う。


「飲み干してくれれば、通報はしません。今までと同じように“女の子”として接します」


リリーも追い打ちをかけるように微笑んだ。


「業務用は自宅で飲んでいるものより、数倍早く効果がでるよ。明日の朝……体質が合えば今晩から体が反応するかも。だから、安心して飲んで。女の子になりたいんだよね?先生が少し勘違いしてるだけだから」


――逃げられない。


俺はシェイカーを凝視する。喉の水分がなくなり、呼吸が浅くなる。


(飲めば……もう戻れない。飲まなければ……すべてを失う……。でも、リリーさんの言う事が本当なら、今、止めても……)


「どうしますか?」

JURIAの声が優しく響く。


「女の子になるか、性犯罪者になるか……」

心臓が暴れる。耳の奥で血の音がうるさい。

俺は震える手でシェイカーを掴んだ。軽いはずの紙コップが、やけに重い。


「……うっ……」

唇をつける。甘い香りが鼻を刺す。


「……っ……ごく、ごく……!」

一気に喉へ流し込む。冷たい液体が舌を覆い、胃の奥へ沈んでいく。



「あー良かった!やっぱり女の子になりたい気持ちは本当だったんですよね!疑っちゃってごめんなさい」

JURIAがやわらかく微笑む。


「これで……本当に女の子になれるんですよ。業務用のプロテインも家庭で飲めるように、後でお渡ししますね」


「……っ……」

喉を押さえ、俺は息をついた。

頭の奥で何かが弾けたように、全身が熱くなる。

胸の奥がじんわりと重くなる。



あれっ?リリーさんは……。

ふと気づくと、リリーさんはスタジオの隅で誰かと電話をしていた。

低く抑えた声で誰かと言葉を交わしている。


「……はい。ええ、今からでも大丈夫ですか?――ありがとうございます」

そう言って通話を切ると、にこりと笑って俺の方を見た。


「今から大丈夫だって!」


「……え? な、なにが……?」

足がすくむ。嫌な予感が背中を走った。


リリーさんはさらりと言い放つ。

「何って、性別適合手術だよ。私の知り合いのお医者さん、モニター枠で格安にしてくれるって」


「――――っ!」

耳の奥で爆発音が響いたように、頭の中が真っ白になる。


JURIAがぱんっと手を叩いて、跳ねるように喜んだ。

「わぁ!良かったじゃないですか!これで完全に女の子になれるんですよ!楽しみですね~」


俺の視界が揺れる。

息ができない。喉が勝手に閉じて、空気が入ってこない。


(性別適合……手術……? 俺が……? そんな……)


力が抜け、足元がぐらりと崩れる。

必死に壁に手をついたけれど、胸の奥がざわざわして視界が暗く塗りつぶされていく。


もう――逃げ道なんて、どこにもなかった。


【6章へつづく…】

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