とどのつまり今日の日記である。
こんばんは、人類諸君。僕は君たちの隣人にして侵略者。
堕落の魔法使い、縷々道生我。
まずタイトルの説明、キルレとは何かという話。
キルレとはFPSゲームで頻用される言葉で、キルレシオの略らしい(キルレートだと思ってた)撃墜数と、被撃墜数を比較して出す数値で、とどのつまり『自分が1回死ぬまでに敵を何人葬ったか』という事である。
某有名ゲームが行ったアンケートによるとFPSプレイヤーの平均的なキルレ数は1.0~1.5程度らしい。もちろん撃墜数と被撃墜数がゼロサムゲーム(総撃墜数=総被撃墜数)の関係にある以上、究極的な平均値は0になると思われる。まあアンケートというのは少し事実を誇張したくなるものだ。化粧品のアンケートなどは2,30代女性の利用者が周辺人口の年齢比率から見て不思議なほどに増えるらしいし、要するにそういう事ではなかろうか。
ではこの僕がキルレ5.0という小中学生のついた嘘のようなスコアを叩き出したのは何故なのか、それは日々の努力の賜物でも天性の才能が宿っていたわけでもない。要するにこの一件はFPSと何の関係もないのである。
ここからは昨日の明け方の僕の話、何となく眠れない夜。明け方4時に僕はふらりと家を出た。目的もなく歩くのは楽しい、暗い道なら尚更。見知った道でも躓きそうになる危うさと、獣が草を掻き分ける些細な音に張り詰める緊張が、人間世界での退屈な生活に刺激をくれる。
24時間営業のネオンに誘蛾灯の如く導かれた僕は、コンビニに吸い込まれ、そこであずきバーを買って帰った。あずきバーを選んだことに特殊な理由は無くて、この時間帯に生クリームの甘さは馴染まない気がするし、フルーツの色彩は満点の太陽の下で楽しみたい。そうなると、選択肢が殆どなかったのだ。地味な豆の棒、このくらいが丁度いいのである。
今頃眠気を思い出してきた身体を引きずって、近くの公園のブランコに腰掛ける。こういう時だけ、自らの細い体躯に感謝しながら。
空は徐々に明らみ始め、夜の帳は上がる。不便な体だな、なんて考えながら、僕は破いた袋から冷気を纏う地味な豆の棒を取り出すと、一口噛み砕こうと
固ッた―――――――――――――――――――――!!!!!!!!
やられた、完全にやられた。久方ぶりに食べた物だから忘れていた。あずきバーはやたら固い……あごが、あごが痛い……なんだこれ、修行用か?犬とかが噛んで顎を強くするやつだよって言って売れるだろこれ。地味なルックスに溢れんばかりの危険性を内包しよって貴様……!ばか!ばーか!!
仕方なく僕は地味豆棒を片手にしばらくブランコに揺られていた。時刻は4時半、当然ながら誰もいない。明るいけれど人がいない世界というのは実に奇妙だった。まあ傍から見たら地味豆棒を持ってブランコに腰掛けている僕も必要十分に奇妙なものだったのだろうけど。
地味豆棒が解けるのを待つ事にする。しかしながら、20分くらい待っただろうか、あるいは2分ほどかもしれない。僕はせり上がる眠気と程よい暖かさに耐えかねて、眠りに落ちてしまったのである。
何かから落ちる夢、下腹が冷えるような感覚と共に目を覚ます。視界に入った風景が公園である事に多少の困惑はあったものの、すぐに状況を思い出した。嗚呼、嗚呼、そうだ。僕は確かこの地味豆棒が溶けるのを待とうと―――
しかし、僕の片手には何も握られてはいなかった。そして自らの手を見た視線の先、地面には、それはもう無残な落下死体が転がっていた。落下死体は哀れにも早出の働きアリたちに群がられており、3秒ルールだのなんだのという次元をとうに超越した物体であろうことは太陽を見るより明らかで。
そして、なんと溶け出す地味豆棒に溺れてしまったのか、5体のアリが、甘味の海で死んでいた。その様はまるで、太陽に近づきすぎて蝋の羽を溶かした英雄の逸話のようだった。
これが僕がキルレ5.0を出しただけの話。退屈な日常の中で5つの命を奪ってしまった話。
木陰にアイスの棒を立て、それを疑似的な墓とした帰り道に、懲りずに地味豆棒を買った反省のない僕の、繰り返される日常の1コマ。
え?あずきバーでキルレ5.0を取った話ではなく、あずきバーがキルレ5.0を取った話だろうって?
ナイフが人を殺すのではなく、ナイフを持った人が人を殺すのだよ。ふふ。
縷々道 生我
2020-07-04 12:57:50 +0000 UTC楚夏部すう
2020-07-02 11:23:12 +0000 UTC