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縷々道 生我
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僕が幽霊と出会った話

子供の頃の冒険心が思わぬ出会いを生むことがある。


これは僕が「幽霊を信じてみよう」と思った時のお話、僕が怪談・幽霊という物に興味を持ち始めた、一番最初のエピソード。


何年か前。


近所にある小さな山、その上り坂を走るのは複数の自転車。子供の足には辛い急勾配を登っていた僕らは仲の良い友達3人だ。山の上にある高台に行こうと、幼子特有の快活さで自転車を走らせている。


しかしながら、子供の足に山道の負担は徐々にのしかかってくる。ペダルを漕ぐ足が重い、立ち漕ぎ、全体重を預けてペダルを踏み、前に進む。季節は秋だったが、記憶に残っているのは途方もない足の疲労感だけだった。山の中腹まで来る頃には、一度止まってしまったら二度と登ろうと思わないかもしれない、だから頑張ろうという、後ろ向きな前向きさを発揮して、只管に自転車を進めていた。


一番後ろを走っていた僕は、二人に置いて行かれないように一生懸命ペダルを漕いだ。その刹那、踏み込んだ足がペダルを外れて空を切った。バランスを崩して勢いよく倒れる僕、幸い山底へ落ちることは無かったが、襲い来る足の痛みと疲労感に立ち上がる事も出来なかった。擦りむいた足からは赤い血が湧いている。


『ちょっと待って、足が――』


二人を呼び止める僕の前には、すでに誰もいなかった。


山道であるが故に、他の二人も必死だったのだろう、後ろで音が聞こえたとしても振り返る余裕などなかったのだ。まさか友人が倒れているなど思いもするまい。詰まる所、僕は置いていかれたのである。時刻は夕暮れに差し掛かる、とりあえず追いつこうと自転車を立てた、しかしペダルに引っ掛かりがない。さっきの転倒でチェーンが外れてしまったのだ。治し方など、僕は知らなかった。


災難は続く、されど好転せず。


とりあえず降りよう、と思った僕は歩き始めた。怪我をした足では歩みも遅く、既に辺りは暗くなり始めている。友人たちは戻ってくる気配がない。僕は愚図りながら、チェーンの外れた自転車を押して山道を下っていた。その時、ふと墓地が目に入った。上っていた時は必死で気が付かなかったが、10個ほどのお墓が並ぶ小さな墓地が道中にあったらしい。こんなタイミングで墓地か……妙な物が見えては嫌だとなるべく目を逸らしながら歩いていると。


『大丈夫?』と声を掛けられた。


振り向く。白いワンピースを着て、水色のブレスレットを付けた女性。優しげな声色で声を掛けられた僕は、一瞬びくりとしたが、すぐに頷いた。女性は僕の傷を見ると大変、と口元に手を当てて、布を当ててくれた。ブレスレットと同じ色、水色のハンカチだったことを覚えている。そして、「一緒に山を下りましょう?お家まで連れて行ってあげる」と笑いかける。僕は頷いて、彼女と歩き出した。他愛もない話をした記憶がある、好きな本の事、食べ物の事、それから暫くして、僕の意識は途切れた。


―――――――――――――――――――――――――


「おい、おい!」


次に気が付いた時、目の前には強面のおじさんの顔があった。40代くらいだろうか、黄色いヘルメットをかぶっている。辺りを見渡すと、日は既に落ちかけていた。ここは何処だ?あの女の人は?と辺りを見渡す、見覚えのある場所、ここは山の麓、入った時に集合住宅を建てるとか何とかで工事をしていた場所だ。


「あの、僕は……」


「俺が休憩に戻ったら岩の上で寝てたんだよ、危ないガキだな。お前何処から来たんだ?」


僕が来た所を覚束ないながらに話すと、おじさんは頷いて、ポケットから千円札を取り出して僕に握らせた。


「そこのバスで〇〇って所迄行きな、多分見覚えのある所につくからよ。じゃあなボウズ、俺は仕事戻るから。」


不愛想に手を振って仕事場へ戻るおじさんに礼をすると、丁度バスが来て僕は家に帰る事が出来た。あのお姉さんは、僕を頼れる大人がいる場所まで連れて来てくれたのだろうか。


そうそう、なくなった自転車だが、後日自転車を探しに山を登ると、何事もなかったかのようにチェーンが治った自転車が『S藤家』という墓地の前に置かれていた。


それから僕はお姉さんにもう一度会って、お礼を言いたくてその墓地に暫く通ったのだけれど、二度と彼女に会うことは出来なかった。これで僕と幽霊のお姉さんの話はおしまい……え?どうしてあのお姉さんが幽霊だと思うかって?


僕はあのお姉さんの声を覚えている、ブレスレットの色も、服装も

でも、顔だけがどうしても思い出せないんだよね。

きっと人じゃないんだなって、だから思った。


でも、だからと言って彼女が僕の恩人であることには変わりない。

その出来事があった翌日、僕は初めて幽霊や不思議な事象にまつわる本を読み始めた。


僕が幽霊と出会った話

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