自慢ではないが、僕はスーパーボールすくいが得意だ、それも少しできるというレベルではない。
僕の最高記録、5,6年前に人間界に来た時に取った412個という記録は、直近の夏祭りでまだ破られていない。そもそも直近で夏祭りがやっていないというのも一因かもしれないのだけれど。にしても救い過ぎである、スーパーボール界の救世主なのかもしれない。
しかし、やっている事は所詮スーパーボールすくい、ギャラリーの反応もまた取った!凄い!と言う感じではなく、あの人まだやってる……3時間前から座ってるよね……みたいな感じの事が多い。
今日は、そんな僕が次にいつ来るかわからない夏祭りに備えて、スーパーボールすくいで一人でも多くの彷徨える御霊を救助したい君に向けたアドバイスを送ろうと思う。
これはある意味常識である。スーパーボールすくいの基本のキ。基本的にポイ(救助道具)の強度は非常に弱い、その中でも真ん中は圧倒的に弱い。
人は『真ん中』に快感を感じる。弓術、ダーツ、色々な媒体で、真ん中は大当たりとして扱われている。そんな無条件的な刷り込みが、きっとポイの真ん中を使わせるのだろう。
しかし、覚えておくといい、最初にポイの真ん中が破れる事は業界では恥である。背中の傷は剣士の恥だしポイの真ん中が敗れる事は救世主の恥なのだ。
真面目な話、真ん中が先に破れると、端を使おうとしても真ん中から裂け目が広がってしまい非常に脆くなってしまう為、絶対に使わない事。
じゃあどうやって取るのかという話、ポイのフレームは立体である、表と裏がある。
通常の心理なら表面を使って取ろうとするのだろうが、僕等救世主が使うのは圧倒的に裏面――つまり、表面に紙が貼り付けてない側、紙とフレームの間に溝がある側である。
引っ掛けて取る、の具体的な手順としては、
スーパーボールに紙を優しく添える、(この時水に浸かる時間は短ければ短い程に良い)そして紙とフレームの間の溝にスーパーボールを載せる。
溝に載せたスーパーボールを落ちないように紙で支えながら素早く桶へ運ぶ、これで紙には枠に乗ったボールを支える以上の負担がかからない。
載せたスーパーボールを柔らかく桶の方へ弾くような動作が出来れば更に紙へのダメージは軽減されるが、多少の慣れが必要である為に、慣れぬものにはお勧めしない。
スーパーボールを救う動作に大事なのは
1,丁寧さ
2,迷いの無さ
3,動作の速さ
この3つである、覚えておこう。
暫くスーパーボールを救っていると、周囲の視線が徐々に集まってくる。これは否応ない事だ。優れた行いに耳目は集まる物である。
しかし、周囲からの期待はプレッシャーとなって襲い掛かってくる。失敗したらどうしよう、笑われたらどうしよう。
然し、スーパーボールすくいに置いて大事なのは、明鏡止水に至る事である。心に波を立てず、ポイと向き合う、己と向き合う。こうする事で、神経を集中させてポイの負担を最小限に抑え込む事が出来る。
これは自分との闘いだ、頼れるのは己の腕と経験のみ、他からの介入で気持ちを乱すような事が在ってはいけない、無視しよう。
以上を守って、君も楽しい救世主ライフを、それでは。