かつてはオニランドに棲んでいた鬼たちは鬼王朱裸の敗北、滅亡により四散し特異点の収束とともに消え去った。 はずであった。少なくとも記録ではそうなっていた。 しかし、微小特異点オニランド消滅していなかった。 新たなる特異点の主を得て、存続していたのである。 特異点の主は狡猾であった。偽りの消滅反応を作り出し特異点の存在自体を存在と非存在の境界でゆらがせ。観測出来なくしていたのだ。 オニランドと縁が強かった護法少女酒天童子はオニランドの存続に気づき、引導を渡すためにオニランドへ単身レイシフトを行った。 「ま、運悪く残ってしもただけやろし、放っといても消えるとは思うんやけど食べ残しを見とるみたいでスッキリせんのよなぁ。」 彼女は魔術の専門家ではなかったので存在のゆらぎを消えかけの前兆程度にしか考えておらず、誰への報告や相談も行うことはなかった。 個人主義なところのある彼女らしい点であり、いつものことでもあった。 そのいつものことが彼女最大の不幸を呼び込むことになるのだった。 オニランドへと再び舞い降りた護法少女は直後大量の子鬼に飛びかかられた。 彼女の視界を覆い尽くさんばかりに飛びかかる子鬼たちは、しかし彼女の巨大な桃色の金棒の一閃で吹き飛ばされた。 「なんやえらい結構な歓迎してくれるやないの」 圧倒的なその護法の力で吹き飛ばされた子鬼たちは、その身体を 軽々と起こした。 「・・・・・・!?」 常に飄々とした彼女のしたたかな瞳が驚愕に見開かれた。 とっさの一撃ではあったもののその手応えは確かであり、その威力の程にも自信を持っていた。 しかしその不可解な現実は彼女の目の前に確かにあった。 先んじて起き上がった子鬼の一匹が、困惑する彼女を隙と見出し突貫を仕掛ける。 しかしてそこは歴戦のサーヴァントであり平安の都を震撼させた大鬼であり今は護法の鬼。 充分すぎる速度で反応し、その愛器たる桃色の金棒を全力で振り抜いた。 彼女が想像したのは肉がひしゃげ、首が爆散する光景と音と手応え。 バチィッ しかし現実は今度も彼女を裏切った。 軽く皮を叩いたような炸裂音と振り切ったはずの腕が途中で止まっている光景であった。 護法少女渾身の一振りは、自らの体躯の半分もないような子鬼の片手によって受け止められていた。 「なん・・・やて・・・!?」 今度こそ目を見開き驚きを隠さない、いや隠すことのできない護法少女。 とっさに掴まれた金棒を引き戻そうとするが、子鬼の片手に掴まれた金棒は彼女の怪力を持ってしてピクリともしなかった。 「くっ・・・!この・・・!!」 両手を使い自らの愛器を取り戻そうとするがそれでも子鬼の片手に掴まれただけの金棒は微動だにしなかった。 完全に取り乱した彼女に、あとから起き上がったほかの子鬼たちが飛びかかり。 彼女の視界を真っ黒に塗りつぶした―――――。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 薄暗く、奥に深い洞窟。そこに彼らは棲んでいた。 「離・・・しぃや・・・!!」 何匹かの子鬼に掲げ上げられ、運ばれる一つの影。 オニランドを救った英雄。鬼キュアをなのる護法少女酒呑童子である。 しかしその身体は傷だらけで、息は荒い。 力を込め、子鬼らの拘束を振りほどこうとするがまるで子供と大人の力比べのように動かない。 暴れる彼女を鬱陶しく感じた子鬼が彼女の頭を持ち上げ、頬を潰し、 また別の鬼はその髪を掴み引っ張った 「ぅぁっ・・・!」 日常、どことなく浮世離れした雰囲気と何を考えているか分からないその妖しき姿の酒吞童子からは想像つかない声があがる。 力なく棲家の奥へと運ばれる子鬼の戦利品と化した護法の鬼。 物陰には囚われた彼女を満足げにみる影があった。
エクス
2020-09-25 13:56:20 +0000 UTC