夜、古くより夜闇は魔の潜む時間とされている。人類は魔を恐れ、畏れて潜むのだ。 しかし彼らには夜闇は恐れとなり得なかった。 新人類ラフム。 その時代の全ての生物を超えたその身体能力には恐れるものなど存在しない。世界の全ては彼らの下にあり彼らにとって自分達以外の生物はは遊興を満たすためのものに過ぎないのであった。 彼らは闊歩する。自らが楽しむ対象を求めて、丈夫であればあるほど長く楽しめるだろう。 「おぞましいな、力のみを誇示し、力に溺れた勇なきモノどもとはこれほどまでに醜悪か」 凛とした声が響く───。 完全なる暴言、悪意のこもった侮蔑の表現でありながら、その声はこの荒漠とした大地にありながら爽やかに吹きゆくひとひらの風の様であると感じさせただろう。 声の持ち主は、彼らが征く道に並び立つ崖の上に屹立していた。 満月を背に異形を見下ろすその影は髪の長い女性。 臙脂色に近いその赤紫の髪は背後の月光を受け輝き、遠目に見てもその細やかさ、麗しさを伝えるに充分であろう。 戦士としても、女性としても、完璧に均整が取れた人類として完成形とも言える肢体、それ更に際立たせるのは全身にぴったりと張り付く至極色の装束。 全身タイツに近いそれは艷やかな色気を醸し出しながらも至高の美術品にも勝るその肉体の美麗さを十二分に際立たせていた。 長くしっとりとした睫毛を備えた切れ長の目は真紅の宝石が如き眼を輝かせる。その表情は彼女の自信に満ちた余裕を感じさせるものであった。 「貴様らゲテモノ共が進み行くその先には人の街があってな、私は彼らに一宿一飯世話になったもので、恩を返さねばならんのだ。」 彼女の名はスカサハ、ケルト・アルスター伝説の戦士にして女王。異境・魔境「影の国」の女王にして門番。 人理の崩壊と共に英霊と化し、如何な因果かこの場へと流れてきた。 行くアテもなく彷徨いながらも襲いくる魔獣やらを返り討ちにしていた際に現地人と出会い。彼らの好意を得て一夜の宿を得ていたのだった。 「さて、貴様らのことは聞き及んでいる。街を襲い、無力な人間たちを玩具とした遊興に耽っているとな。」 「貴様らから街を守らんとし、力及ばずも倒れた兵士たちよ。勇あるものは賞すべきかな。」 スカサハは槍をとり、声をあげる。 「我が名はスカサハ。彼ら勇ある英霊達の魂の安らぎがため、貴様らを罰し、滅すぞ!」 彼女の咆哮と共にその場全ての影が弾けるように動いた。 ─────────────────────────────────────── 複数枚のイラストで紙芝居的な短編をしようと思いました。 1枚目と2枚目のラフは全体公開。2枚目以降の完成イラストは支援者様限定で公開させていただこうと思ってます。