#総失の月
1.
ーーーーーい、いやっ!!? こんなの…こんなのっっ……こんなのぉぉぉーーーーッッッッ!!!
時間が経過しても一向に慣れない生臭い臭気が鼻腔を冒し続け、生暖かい粘液が四肢に密着したグローブの中で、ブーツの中でジュクジュクと指に絡みつき肌に不快な感覚を強要してくる。
体幹を覆うボディスーツからも胸元から、ノースリーブの肩口の隙間から同様に悪臭気が噴き出しスーツの内側で粘液が身体中にまとわりついてくる。
かろうじて外郭シルエットを保っている腰下のパレオも、その縁からは糸を引きながら粘液が滴り落ち足元で悪臭を放つ小湖水を造成する。
『ギヒヒヒ! 民たちの熱い敬慕の念が染み込んだお召し物の着心地はいかがですかな白き月のプリンセス? 否、汚らしいオスの子種汁にまみれた無力な月野うさぎよ?』
「…ジルコニア!!」
突然頭上から悪意に満ちた妖婆の嘲笑が降り注ぎ、うさぎの鼓膜を突き刺す。
うさぎとちびうさ、二人の銀水晶所有者を罠にかけ拉致したデッドムーンの指導者であり、二人を捕えるだけに飽き足らず下劣極まる手法での陵辱を繰り出してくる魔界の妖婆ジルコニアの声に屈辱を伴いながらも強い反発心が沸き起こり、うさぎはキッと頭上を睨みつける。
「いくらこんな真似したって!あんたの思い通りになんかならないっ!! 銀水晶の力だっていつまでも封印しておくことなんかできないわよっっ!!!」
精液でヌメる純白のグローブに包まれた右手が無意識に胸のコズミックハートコンパクトを握りしめる。
ジルコニアが操る闇の力によってその神秘の力を封じられガラス玉同然と化した銀水晶は、同様にその力を喪失しスタイリッシュだが単なる強化繊維製レオタード同然のボディスーツ胸リボン中央のコンパクトに収められたままだ。
何故ジルコニアが力を封じているとはいえ、こうして(文字通り)自分の手の届く場所に置いたままなのか不気味さを禁じ得ないが、この魔力封印を破る事が叶えば魔界と化したこのサーカステントから脱出する事も反撃に転じる事も不可能では無いと懸命に自分に言い聞かせながら、うさぎはもう一つの懸念材料である人物ーーーーちびうさに視線を走らせる。
つい先刻、ジルコニアの術によって操られ、奪われたセーラースーツに野獣の如く嬌声を上げながら群がり己の欲望を吐きかけ続けた一般市民の男性たち。
その男たちが特に執拗にザーメンを注ぎ浴びせ、流し込み続けた自身のブーツ…
白銀の縁取りと鮮やかな真紅のコントラストを持つ左右のロングブーツは中も外も白濁液に穢し尽くされ、ゾブゾブと溢れかえる精液が生臭い異臭を振り撒く汚物桶も同然と化して再びうさぎの双脚を覆っている。
ーーーーーちびうさっ あんなコトさせられて…! ゴメン…ゴメンッ!!
血が滲むほどに唇を噛みながら、心の中で詫び続けるうさぎ。
ちびうさ… 今はセーラーちびムーンの小柄な肢体はうさぎの立つ場所から数メートル離れた場所でぐったりと倒れ伏している、おそらくは失神しているのだろう。
その原因はこの為す術もなく穢されてしまったブーツだ。
自分と操られた人々を人質とされ、単なる精液由来の悪臭のみならずデッドムーンの妖魔兵の体液を含むブレンドされた様々な淫毒の類が濃厚に籠もったブーツの汚臭気を自ら嗅ぎ吸い込み続ける事を強要されていたのだ。
10分近くを耐えていたちびうさだったが、遂に力尽きたのかサーカステントの中央に作られたステージの床に崩れ落ち、その無残な恥辱ショーをステージ上のガラス檻で監禁されたうさぎは為す術もなく見せつけられた後にガラス檻から引きずり出され、そしてちびムーンに劣らぬ恥辱ショーを強要されたのだ。
それはブーツのみならず、男たちの精液で汚され尽くし本来ならば幻の銀水晶からのエナジー供給が途絶えれば消滅するはずが、ジルコニアの魔力によって強引にその姿を現世に留めているスーパーモードのセーラースーツを操られ半ば野獣と化したどこの誰ともしれない男たちの前で身に纏う事だった。
ーーーーーうくっ…⁉︎ ンンンンーーーーッッッ!!?! きっ…気持ち悪いっっ 身体中にベトベトの精液っっ 流れ…落ちて…るっっ!!?
下着すら奪われ一糸纏わぬ全裸姿を客席から注がれる無数の獣欲視線に晒しながら、ようやく性臭気にまみれたセーラースーツの残骸を身に着け終えたうさぎの精神疲労は限界に近かった。
全てを身に着け終えたうさぎに向け、下卑た歓声嬌声が観客から一斉に挙がりテント内の空気を震わせる。
『おお白き月のプリンセスよ、やはりそのお召し物は似合いますノォ〜? 民たちも尊きそのお姿に大喜びではございませぬか? ギヒヒヒッ!!!』
「く…うっ⁉︎ 云うこと聞いたんだからっ…! は、早くこの人達とちびムーンをっ…解放っ…しなさいっっ⁉︎」
心身のダメージに今にも遠くなりそうな意識を懸命に引き戻し、未だ姿を見せようとはしない卑劣な妖婆に向けて掠れかけた声でうさぎは叫ぶ。
だがその直後、鼓舞した心を凍らせるような甲高い声がうさぎの鼓膜を貫いた。
「なに考えてるのよ!うさぎ‼︎ そんな臭くて汚いもの着ようだなんて、頭おかしいんじゃないのッッ!!!」
「ち、ちびムーンッ!!?」
いつの間にか、汚染ブーツの悪臭責めで意識を喪い倒れ伏していたはずのちびムーンが上体を起こし嫌悪と怒り、侮蔑の入り混じった表情でうさぎを睨みつけていた。
「最ッ低ーーーーッッ!! そんなことしたらこいつらが喜ぶだけなのに!! そんなこともわからないの馬鹿うさぎーーー!!!! 知らないっ!!!」
常のうさぎならば気付いただろう、ちびムーンの瞳に客席の男たちと同様の狂気めいた、だがどこも見てはいないような虚ろな濁りが存在していることに。
だが、今のうさぎは余りに疲労し精神的に磨耗し尽くしており、その違和感に気付くことは出来なかった。
「セーラー戦士の誇りもない只の馬鹿ッッ!!!恥ずかしくないのっ? やっぱりあんた変態趣味の最ッッッ低な大バカよーーーーッッッ!!! アンタなんかっ……あぎっっ⁉︎』
熱に浮かされたように罵詈雑言を吐き散らすちびムーンの身体を天頂から飛来した青白い電光が貫き、ちびムーンは硬直し目を見開いたままグラリと倒れこむ。
受け身を取る様子も無く、そのまま再び床へと倒れ伏した。
「ち…ちびムーンッ!!?!」
『神聖なる謁見の場にて畏れ多くもプリンセスに対して不敬の言動の数々は許し難し、暫くそのまま静かにしておれ… なぁに死んだりしてはおらぬでご安心召されよプリンセス、……【今は】ですじゃがのぉ? ギヒヒヒッ!!』
「こ…このっっ!!?」
ジルコニアの持って回った言い回しの裏はいつでもちびムーンに致命傷を与える事が可能という確認であり、うさぎを縛る枷の厚みが増したという事実だ。
『ギヒヒヒッ! 話を戻しまするが… 何か勘違いなされておるご様子じゃのぉ? 誰もこの者達を監禁などしておりませんぞプリンセス? いつでも出て行って貰っても構わぬのじゃが…誰も席を離れようとはせぬところを見るに、未だプリンセスからのお慈悲が足らぬのではありませぬか? ギヒヒヒヒ〜〜〜ッッッ!!』
「お…お慈悲…って…⁉︎ 何のことよっっ!!?」
『ギヒヒ! ヌシがその連中が浴びせかけた子種汁漬けの衣装を身に付けた程度では満足できぬのじゃろぉて… まあワシらとしては別にいつまででも居て貰っても構わんのじゃがなぁ?』
「くっ……!!?」
先刻まで自分が閉じ込められていたガラス檻の中には無味無臭の催淫性の瘴気が充満していた。
そしてこのステージ周辺、おそらくは観客席の全てに至る空間に性臭とは異なる臭気が僅かに感じ取れる。
あの檻よりも遥かに濃度が高い催淫瘴気が充満しているに違いない…
そう、常人ならば完全に廃人化するのが時間の問題であるほどの。
その事に思い至ったうさぎは唇を噛む、操られているとはいえセーラースーツを汚した張本人たちを救う為にジルコニアは更なる恥辱を要求してくるつもりなのだ。
ーーーそれはのぉ〜〜 ギヒヒッ!
「えっ…!!?」
突然右の耳元でジルコニアのしわがれた嘲笑が響き、うさぎの背筋に新たな冷たいものが走った。
ハッと自分の右肩を見やれば、いつの間にかアブのようなサイズと外見の毒々しい羽蟲が停まっており、その頭部はあの醜悪な妖婆の顔だった。
無論使い魔の一種でありジルコニア本体では無いだろうが、思わず叩き潰してやりたい衝動にうさぎは駆られる。
ーーーギヒヒッ! そうじゃそうじゃ、短気を起こしたりせず人の話はよく聞かねばいけませんのぉプリンセス? ギヒヒヒッ!!!
そんなうさぎの心を見透かすように、妖蟲の向こうからのジルコニアの嘲笑は続き、そして本題に入った………
2.
「なっ…!!?! そ、そんな…ことを私にっ…ここでしろって…!!?」
ーーーヒヒ! 無理強いはせぬぞぉ〜〜? 代役はおるからのぉ〜〜 ヌシはそこで大人しく眺めておれば良いわぃ ギヒヒヒッ!!!
「こ、この卑怯ものッッ…!」
その余りにも破廉恥かつ陰湿な要求にうさぎの全身は硬直し、ただでさえ限界間近な鼓動が更に激しくなる。
ーーーギヒヒッ!あまり民達を待たせるわけにいかぬしのぉ〜〜 仕方がない、では少々役不足やもしれぬが代役に頑張ってもらうとしようかのぉ〜〜?
残酷な選択を強いてくる妖婆の毒声が耳朶を突き刺す。
『代役』とは誰のことを指すのかは自明だ、自分の…セーラームーンのブーツに注ぎ込まれた悪意そのものである汚染臭気を大量に吸わされ力尽き、更に電撃を浴びせられ再度倒れ伏しているちびムーン以外に無い。
「わっ…わかった…わよっ!!! わ、私がするか…らっ……!!」
数秒の葛藤の後、血を吐くような思いでうさぎは言葉を紡いだ。
ーーー重畳重畳… ギヒヒ! では精々気を入れて演じることじゃなあ〜 心の中で役立たずのエンディミオンの名でも呼びながらのぉ? ギヒヒヒヒッ!!
嘲笑しながら妖羽蟲がうさぎの肩から離れたその直後、またも場違いとも思えるほど陽気なドラムロールとファンファーレが場内に響き渡り、ジルコニアの邪声がそれに被る。
『ご来場の皆々様ぁぁ〜〜〜!!! これより皆様方が献上されたプリンセスへの迸る敬愛の念に痛く感じられたプリンセスが特別に、皆様方からの親愛、敬愛の印たるスペルマをたっぷりと吸い込んだ装束にて悦楽を覚え乱るるその有様を、皆様方が拝観せし事を許すとの畏れ多き仰せにてございまするぅぅぅぅぅーーーーーーーー!!!!』
「ーーーーーーーーー!!!!! ーーーーーーーーー!!!!!ーーーーーーーーー!!!!!!!!」
一段と獣性を増した歓声、嬌声が客席のそこかしこから上がりギラつく無数の視線がステージ上の一点に集中する。
『さささ… 遠慮なさることは御座いませぬぞプリンセス? おお、お若きプリンセスには斯様な折の作法をば、まずはご指南せねばなりませぬなぁ? ギヒヒ!まずはその可憐な花弁が如きスカートを右手で大きく捲りあげなされ…できまするな? ギヒヒッ!』
「くっ…⁉︎ んんっ…うううぅぅ…!」
『ほれほれ、もっと高くですじゃ? 右手は鳩尾の辺りまでググイっとなされませ…ギヒヒヒッ!!!』
ちびムーンは無論、傀儡と化し人質でもある人々に危害を加える事をチラつかせる妖婆の声が、うさぎに恥辱の行為の第一歩を促す。
その脅迫に従うしかない白濁液のマダラ模様が汚す純白の右グローブ五指が、同様に純白と淡いグラデーションを半ば凝固し糸を引くザーメンまみれのミニスカートの縁を掴む。
(こんな…! こんな事ってっっ…!!? は…恥ずかしいっっ!!?!)
数多の異性の前でスカートを捲りあげアンダーに覆われているとはいえ、股間部を自ら晒すという強烈な羞恥に加え、新たに立ち昇る濃い臭気とニチャニチャとした嫌でもそれが何かを悟らざるを得ない粘液の感触が毒刃と化しうさぎの心を深々と抉ってくる。
『そうそう、右手はそこから決して下げてはなりませぬぞ〜? さて次ですじゃぁ… 左手でお股を覆っておるスーツを絞り上げ、喰いこませなされませ… ギヒヒ! どこに喰い込ませるかはババめが申さずとも無論おわかりでしょうプリンセス? ギヒヒヒヒッッッ!!』
「そ…んなっっ…!?! ううっ⁉︎ くうううぅぅぅ!!!」
ジルコニアの追い討ちの言葉にうさぎの体の奥底で新たな羞恥心と屈辱、そして畏れと背徳の混合物のマグマが生じその心を灼く。
その意味するところ、それは過去から未来へ唯一人の愛する男性にのみ捧げることを誓った最も神聖なクレヴァス内部に自らセーラースーツで獣欲に狂った男たちの精液をなすり付けながら自慰をしろ、さもなくば… そう言っているのだ。
比較的初心の部類ではあるものの、うさぎとて思春期の少女でありオナニーは人並み程度の知識も経験もあるが、身につけているだけで既に生暖かくヌメついた精液が秘唇の表層に絡みつきはじめおぞましい感覚を与えてくる。
だが今のうさぎにジルコニアの言葉に抗う術はなく、どれほど悔しくとも「それ」を行うしかなかった。
「あっ!!? んやぁっ……あ…あんっ……! ぐっ……あぐっ……かはっあっんんっ!!?!」
『ほれほれ、まだまだ浅いですぞプリンセス? もっと景気よう上に大きく引っ張るのじゃあ〜 無論おマメの処もよ〜く擦りつけてのぉ〜? ギヒヒヒヒッ!!!』
「い…いやっ… な、中に… 中にっ…流れ込んで…くっ…くるうぅぅぅぅ!!?!」
檻の中に充満していた淫毒瘴気で全身の性感帯は普段の何倍にも鋭敏化させられている、その中でも股間デルタの一帯は特に火照り秘裂の内部は活火山の様に灼熱の疼きが籠もる。
ーーーキュルッッ! シュルルル…! シュシュ!! チュクチュ……!!
薄皮に覆われ辛うじて噴火をとどまっている火口部から、時折湿った変調子を加えながら艶やかな衣擦れの音が奏でられる。
汚らしい黄濁色のマダラ模様がそこかしこに浮かぶ元は純白だったセーラースーツが、その主自身の手によって絞り上げられ望まぬ性の絶頂回廊を登りゆく囁きだ。
「ファアアアぁぁぁぁぁーーーーッッッッ!!?! はぁはぁっ……あはうっ……んやぁぁぁぁ!!? あひぃぃぃんっ!?」
スリットの内側、既に愛蜜が滲む肉襞の一枚一枚にヌメつくザーメンが、深々と喰いこむ強靭さと滑らかさの双方を持つスーツによって上下のグラインドで擦りつけられ撹拌され膣の中へ徐々に流れ込んでくる。
不特定多数の異性の欲望液を自らの子宮へ流し込むに等しい行為に、これまでとは比較にならない嫌悪感と背徳感が鋭利な刃物と化して少女の自我に深々とした傷を刻みつけてゆく。
「ヒぁあぁぁっ……!!? いや、イヤあはああーーーーーーーっっっっダメ、そこダメェェェェーーーーっっっっ!!?」
『ギヒヒヒッ! クリトリスを擦ってしまいましたかなプリンセス? 誰も何もしておりませんぞえ? プリンセスがご自分で淫蕩な有様を民たちに晒して居るだけでございますよギヒヒヒ!』
一段と激しい甘さを伴った苦鳴と勝ち誇る妖婆の嘲笑が、異様な熱気と不気味な沈黙が支配する空間に木霊した。
屈辱と恥辱、背徳の混合嵐が渦巻いているにもかかわらず、狂わされたうさぎの性感帯は先刻よりも更に敏感さを増しており触れてしまった肉芽からの性衝撃は辛うじて保っている理性を消し飛ばさん程の暴力性を持ち、思わず床へ崩れ落ちそうになる。
『おお…⁉︎ いけませぬいけませぬ… 最後まで凛と両の脚で立たれて民たちに愛される悦びの絶頂姿を下賜されてこそ、更なる敬慕を受けられましょうぞプリンセス? 万に一つ無様を晒そうものなら何が起こるのやら… ギヒヒヒヒヒヒ〜〜〜ッッッ!!』
「ダメッ! ダメッ! ダメェェェーーーーーーーッッッ!!!! わ、わたし…わたしぃぃぃーーーっっ!! あぁぁぁ、あぁ、あんあんっ、あんっ、はぁーーーーーっ!!?!」
ジルコニアの慇懃無礼な嘲笑が聞こえているのか否か、辛うじてうさぎの身体はギリギリでバランスを取り戻し、そのスレンダーな肢体を屹立させ続けていたがもはや限界だった。
「あっ、あっ、いく、いくぅぅぅ!ああああぁぁぁ………! いやぁあっ!あっうっんっんんんっ!あ、や、やめ、あはあぁぁぁぁーーーーーっっっっっ!!?!」
うさぎの全身がビクリと震え、硬直するのと同時に悲痛な…だが喜悦の成分を充分に含んでいるのが窺われる苦鳴がステージ上に響いた。
『ギヒョヒョヒョ!! お見事ですぞプリンセス? さてもそこまで聖液を大量に噴き出されるとは思いもしませなんだ…ギヒヒッ! エンディミオン王子の逸物は余程の早漏…ということですかな〜〜? ギヒヒヒヒ〜〜〜〜〜ッッッ!!!』
「だ…誰が…誰…がっ…! そんな…コ‥トッッッ!?! ぜ…絶対にっ…そんなこと無い…んだからっ! こんな事させたってっ…わ、私は負けないわっ!ジルコニア!!!」
愛する男性すらも下劣な侮辱の対象とする妖婆の嘲笑に、霧散しかけていたうさぎの理性が僅かに回復し、心の中で吹き消えかけていた闘志が再び輝きを放ち始める。
だが、それも魔界の妖婆にとって織り込み済みの反応だった。
3.
『おお…その気丈さと気高さあってこその白き月のプリンセスと申せましょうぞ、ギヒヒヒヒッ! しかし… 姫の気高さと比べてあの賎民どもの醜悪さは見るに耐えませぬなぁ〜? プリンセスの艶姿を拝観させて頂いたというに、かしこまる事もなく下卑た歓声を揚げることしか出来ぬとは不敬にも程が有るというモノ… はてさてどうしてくれましょうかのぉ〜? ギヒヒヒ!』
「なっ…⁉︎ 何を…! やっ…やめてっ! あの人たちに手を出さないでっっ!!?」
うさぎの痴態を目の当たりにした客席の男たちは絶頂の瞬間から卑猥な歓声嬌声をあげ続けており、操られているとわかってはいても怒りの感情は禁じえないが、だからといって殺戮を看過するような真似は出来るはずもない。
『ほほう…ではプリンセス御自ら叱って頂くとしましょうかのぉ〜〜? そうじゃ、普段のようにセーラームーンとしての名乗りを上げた後、あの神々しき仕草の舞にてこの愚か者どもに聖罰を降す事を宣じなされ? さすればたちまちのうちに悔い改め、尽くプリンセスの御前にひれ伏しましょうぞ? ギヒヒヒヒッ!!!』
「くっ… こ…のっっっ!!? どこまで私を…卑怯者……!!」
ジルコニアの狙いに気づき、唇を噛むうさぎ。
月の王国の血を引くセーラー戦士として覚醒し初めて変身した折に自然と出た名乗りと流れるようなポーズ… おそらくは古代月の王国の祭祀慣習にでも端を発しているのだろう。
当初はうさぎ自身も多少の気恥ずかしさに戸惑ったものの、以来深く考えもせずに使い続けていたが確かに今ではセーラームーンの代名詞ともなっている。
だからこそ、こうしたアイデンティティを貶める事が狙いの羞恥行為に有効なのだ。
「いっ… いいわよっ!! そんなに見たければ見せてあげるわよっ!!! よく見てなさいっっっ!!!!」
ここで怯んだり躊躇した素振りを見せれば一層ジルコニアの卑劣な思惑にはまってしまうことは明白だった。
屈辱極まりない状況ではあるが、唯一利点があるとすれば時間を稼げることだ、一分一秒でも稼げば必ず仲間たちが来てくれる。
それはうさぎの中で絶対の確信だった。
であるならば、いかに道化めいた真似でもしてみせよう。
ーーーーーー狂瀾を既倒に廻らす(きょうらんをきとうにめぐらす)
以前、亜美が何かの折に教えてくれた古い諺が頭をよぎった。
そう、これはピンチをチャンスに変え、勝利の糸口を掴む為のステップだ。
(ここで折れたりなんか…できないっ!! だよね!亜美ちゃん!)
僅かに残された気力体力を振り絞りうさぎは顔を上げ、操られ淫獣に化したも同然の男たちがひしめく観客席を正視した。
ーーーギヒヒッ! そうじゃ聞き分けの良い子じゃのぉ月野うさぎよ?
「!!?! くっ…今度は何よっ!」
そんなうさぎを嬲るようにまたも先刻の使い魔羽蟲がうさぎの肩に停まり、耳元に囁いてくる。
ーーーギヒヒッ! 大きな声を出すでないわ ただ変哲の無い名乗りと仕草では興醒めでつまらんからのぉ〜? ひとつこうしてもらおうかのォ……
「えっ…!? この…! よくもっ…!!?」
ーーーでは精々楽しませてもらうぞぃ? ギヒヒヒ〜〜〜ッ!!
その内容に絶句するうさぎの返答を待たず、またも羽蟲は何処かへと姿を消した。
「くっ…くうううぅぅぅ!!?」
変わらず全身は火照っているものの、先刻の強制オナニーで気を放ったせいか妙に思考が冴えてきている自覚があり、それ故に蓄積された心理ダメージがより重くのしかかってくる。
そして全身を切り刻んでくるような卑猥な期待に満ちた無数の視線を受けるうさぎに向け、二条のスポットライトが浴びせられかけた。
それと同時、またもジルコニアの慇懃無礼な宣告が響き渡る。
『残念ながら、皆様方の中にプリンセスへの敬意敬愛ではなく淫靡極まりない邪念を持つ輩がおるとプリンセスは大層なご立腹でございまするぅ〜!! それ故、これより左様な疚しき心を持つ者たちに向け聖罰をおん手ずから下そうとの仰せにございまするぅぅぅ〜〜〜〜!!! 刮目して聖なる裁断をご覧なされよぉぉぉ〜〜〜 ささ!プリンセス、存分に愚か者どもへ仕置きを降されませぃ! ギヒヒヒヒッ!!!』
新たな羞恥と屈辱感に打ちのめされながらもスポットライトの中に立つうさぎは歯を食いしばりながら、改めて正面を見据えた。
だがその両腕は、先刻と同様に左手は未だスペルマが滴り続けるパレオの縁を掴むと大きく捲り上げ、右手は同じく性液のこびりついたボディスーツの股間ハイレグ部分を絞り上げるようにして引き上げ、再び秘裂に深々と喰い込ませる。
肉襞に、肉芽に再び沸き起こる意思とは無関係な情欲マグマの熱に晒され桃色に混濁化する意識を懸命に繋ぎ止め言葉を紡ぐ。
「くううっ!!? ンンンっ! んんん…っ⁉︎ ……‥お、女の子のっ…エ、エッチなオナニー姿を眺めて喜ぶ変態さんたちっっ…!! そっ‥そんな人間のクズたちは、この…む、ムレてベトベトに汚れたっ…お、おま…! おまっ…おま…! おまん…こ‥とっ! ザーメンまみれでくっ…臭く匂う聖なるブ、ブーツが許さないっっっ!!!」
ジルコニアに強要された屈辱的な台詞群を羞恥で顔を朱に染めながら、血を吐く思いで吐くうさぎ。
その背徳的で淫靡な言葉と可憐な少女とのギャップに客席の獣的な興奮ボルテージは更に上昇し、血走り理性を喪った視線の温度もまた同様だった。
「 あ、愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーン!! つ、月に代わってっっ! お仕置きよっっっっ!!!!」
無数の淫欲に満ちた視線が飽和するステージ上で孤立無援のうさぎは、それでも秘部と性感帯へ自らが与えざるをえなかった苛烈な誘惑に耐え抜きザーメン壺と堕したブーツで床を踏みしめ、粘糸を引き異臭を振りまくグローブを交差させ名乗りのポーズを取った。
「ーーーーーーーーーー!!!!!!!! ーーーーーー!!!!!!!ーーーーーーーーーー!!!!!!!ーーーーーーー!!!!!!!!!」
沸騰点を超え、下卑た歓声が地鳴りのように沸き起こり人いきれと媚毒が充満する空気を震わせた。
「うっ…うううっ…ううう…! ひ、ひど‥い……」
守護すべき人間たちの本質の一面とも表現すべき獣性の表れは、想像以上にうさぎの心にダメージを与えてきた。
『おおおっ…⁉︎ なんということじゃぁ〜〜!!? かの伝説の白き月の王国のプリンセスが、かくも下品であさましき名乗りを上げて痴女が如き姿を民草に晒そうなどとは夢にも思いませなんだ〜〜⁉︎ 先刻のちびムーンといい、とんだ淫蕩のお血筋と見受けられまするなぁプリンセス〜〜? ギヒヒヒヒ〜〜〜〜ッッッ!!!』
精も根も尽き果て、ステージ上に崩れ落ち片膝立ちで肩で荒く息をするうさぎに向けて、更に悪意の強まった嘲笑が容赦なく降り注ぎ僅かに残された気力を削り取ってゆく。
(だ…ダメッ… も、もう…… み、みんなっ… マーズ、マーキュリー、ジュピター、ヴィーナス…! は、早くっ… 早くきてぇぇーーーーッッッ!!!!)
反撃の術もなく嬲りに嬲られ続け力尽きようとしている今、唯一の希望である大切な仲間たちの顔を脳裏に浮かべつつ心の中で絶叫するうさぎ。
そして彼女の願いは叶えられた、ただし最悪以下の形で。
「!!?」
何か複数の気配が生じたことを感じ、顔を上げたうさぎの視界に入ったのはスポットの逆光の中に屹立する4つの人影。
「み…みんなっ!!!! 来てくれたのねっ…!!!! しっ、信じてたっっっ!!!!」
そこに立っていたのはマーズ、マーキュリー、ジュピター、ヴィーナス…… 掛け替えのない大切な仲間たち。
押し寄せる安堵の想いに気絶しそうになりながら、ヨロヨロと立ち上がり4人に近寄ろうとした。
「臭いから近寄らないでくれるセーラームーン… いえ、月野うさぎ」
「えっ?」
氷のように冷たい響きで言い放ったのはヴィーナスだった。
とっさに何を言われたのか理解できず、うさぎの全身が硬直する。
「私たちが苦労して来てみれば、色ボケした顔で精液まみれのストリップショー? 一体何を考えているの?」
無機質な声音と深い侮蔑の視線で続けたのはマーキュリー。
「まったく…呆れて物も言えないね、あんたがこんなマネして悦ぶ変態だなんて思わなかったよ」
続いてジュピターが心底呆れ、かつ強烈な嫌悪の感を隠さずに言い放った。
「ちょ…ちょっと…待ってよみんな!!?! こっ、これには‥これには訳がっっ!!! ちびうさがっ…!」
やむにやまれない事情だったにせよ、あの痴態を見られていたという事実と次々に浴びせられる信じられないような辛辣な非難と罵倒にうさぎは狼狽し、混乱しつつも弁明を試みる。
スッと前に進み腰に手を充て、全身を動揺でわななかせるうさぎを見下ろしてきたのは、それまで無言だったマーズだった。
「マッ…マーズッッ き、聞いてッッっ!!?!」
「言い訳はいらないわうさぎ…いえ、月野さん? これまで貴女がプリンセスの転生だと思っていたからこその忠誠だったけれど… いかなる事情であれ、あんな破廉恥行為を嬉々として行う貴女には、もうその資格が有るとは思えない。ましてやそんな惨めな仮装姿でポーズを取るだなんて…一体何を考えているの?」
いつものように涼やかな…だが暖かみなど微塵も存在しない絶対零度の口調でマーズは吐き棄てる。
「もう貴女は必要ないわ、幸いちびムーンは助ける事が出来た。彼女と銀水晶が無事ならば今後に支障はないもの。これからは彼女と私たちだけでやってゆく。貴女は好きなだけそうしていればいいわ」
「そ、そんな…っ⁉︎ ど、どうしちゃったのよみんなっっっ!!?!」
「どうもしていないわ… 言葉通り、貴女は私たちに必要無いと言っているだけ。ああ‥‥それだけは渡してもらうわ」
絶望的な声を発し、身体を大きく揺らしながら膝から崩折れたうさぎにヒールの音も高く近寄ったマーズの右手がうさぎの胸に伸び、他と同様に精液まみれにされ異臭を放つ胸リボンの中央からコズミックハートコンパクトーーー幻の銀水晶をワシ掴むと何の躊躇も無く一気に毟り取る。
「まったく… 銀水晶までこんなに汚して……! これだけでも許せないわね」
精液まみれのコンパクトを凝視し、改めて嫌悪と侮蔑を隠さない冷徹な口調と視線で呆然とへたりこんでいるうさぎを一瞥すると、くるりと背を向けたマーズは他の3人の元へと去って行く。
「あっ…ああああっ……あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!!?!」
無意識に震える手がマーズの背に伸びるが既に他の3人もうさぎを見てはおらず、更に失神しているちびムーンもジュピターの腕に抱かれている。
「じゃあ行くわよみんな、急いで体制を立て直さなきゃいけないから」
事務的なヴィーナスの言葉に全員が頷き、そのままステージを立ち去ってゆく。
「あっあああっ……ま、待ってっ…みん…なっ…!?! お、おいてっ…置いていかないでぇぇぇーーーーーーーーっっっっ!!!?! ひとりにっ…しないでぇぇぇーーーーーーーーーっっっ!!?!」
目の前に出現した現実を受け止められないうさぎの絶叫… 実際はかすれ声に過ぎないそれを一顧だにすることなく、仲間達の姿をした悪夢はそのままステージ袖の闇に溶け込み消えた。
「あっ…ああっ…あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ…………………………あぁぁぁ…………!」
『ギヒヒヒヒヒヒーーーーーーーーッッッ!!?! なんとも愉快な闖入劇を演じてくださり恐縮の至りですぞプリンセス? 仲間達にもその汚らしい装束同様にゴミとして捨てられてしまいましたのぉ〜〜〜? さてさて皆様方、とんだ付録つきでしたが本日のデッドムーンサーカス団特別公演の催しはこれにて閉幕ですじゃああぁぁ ギヒヒヒッ!』
「あああああぁぁぁぁ……!あっ……あああああぁぁぁぁぁぁ……………」
悪意に満ちたジルコニアの哄笑が一段と大きなボリュームで響き渡り、完全に瞳から光が喪われたうさぎの心に突き刺さり体内で反響を繰り返す。
そしてその言葉が合図であったかのように嬌声を上げていた観客席の男達がピタリと沈黙し、次々に席を立つとゾロゾロと出口へと列を為して立ち去ってゆく。
数分を経ずして数百人は収納可能だろう客席は無人となり、沈黙が支配するステージには点けられたままのスポットライトを浴びながら抜け殻と化したうさぎ一人が残された。
『ギヒヒヒ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!! しかしまあ…まことにもって愉快な見世物であったぞ用無しプリンセスの月野うさぎよ? よもやよもやじゃぁ〜 ギヒヒッ!! 木戸銭代わりにその汚らしいゴミ装束はヌシにくれてやる故のぉ、精々後生大事にするがよいわ? ギヒヒヒヒヒヒーーーーーーーーッッッ!!!!』
ジルコニアの妖術によってなおも形態を留めているものの、もはや何の力も無くなったスーパーモードのセーラースーツを纏ったままのうさぎの双眸は何も見てはいなかった。
これまで信じていたもの全てが崩れ去り、己の周囲から消え失せた。
ただ空虚の黒いシミだけが心の中に分厚く層をなしながら拡がってゆく。
敵も味方も、ジルコニアの嘲笑すらも消え失せた静寂のステージで、うさぎはただ一人スポットライトを浴びながら無表情な彫像と化していた。
ーーーFIN
#加工前原画バージョン
今回Skebの方でご依頼頂いたテキストなのですが、ご厚意を頂きこちらにも転載です。
こちらの作品 の続き的な位置付けですね。
責めを受けているのはあくまでも「月野うさぎ」であり着ザーコスを身に付ける事を強いられるセーラームーンではないというのが良いです^ - ^
テキストだけでは寂しい気がしたので以前描いたモノクロをベースに挿絵もつけてみました。
以下はご依頼内容からSADがインスピレーションを受けたご依頼とは別の蛇足的なテキストです。
ーーー総失の月 PS
それは漆黒の空間に泳ぐ粘りつく蜘蛛の糸のようだった。
それが自我意識という彼女自身の根幹を為すものに絡みつき、猛々しく侵食を図ってくるのが白濁化した意識の中で理解できた。
ーーーーダメだ、これに絡め取られちゃダメ!!!
本能的な危険を覚え、四散し浮遊しようとする意識体を懸命に繋ぎ止め『糸』の侵食と拘束とに抗う。
彼女を彼女たらしめる二つの精神柱のうち、一本は完全に麻痺した仮死状態であるがもう一本の存在により、彼女は糸の侵食と己の自我に貼りついている正体不明だが明らかに邪悪な薄膜とを共に打ち払うべく意識を集中させる。
ーーーーー臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!!! 邪気退散!!!!
身体の奥底から邪を滅する浄炎が噴き上がるのがわかる、普段よりも小さく弱く不安定でコントロールもしづらい…だが、長年炎を友とし鍛錬を重ねてきた彼女は見事それを御してみせ『糸』と心の外郭を戒める薄膜を消し去った。
「うっ…っっ⁉︎」
その瞬間、視界が明瞭化しフワフワとしていた五感がはっきりしたものとなる。
そこは固い床のさして広くはない空間だった。
まるで数日身体を動かしていなかったかのように全身が重い。
「くっ…うううぅぅ!!? こ、ここは…一体!!?」
軋む全身を強引に引き起こし、頭を振りながら周囲を見回す。
「!!? マーキュリー! ヴィーナス! ジュピター!」
彼女… 火星を守護に持つセーラー戦士たるセーラーマーズの視界に飛び込んできたのは、それまでの自分と同様に床の上で倒れ伏している仲間のセーラー戦士たちだった。
「しっかり! 目を覚ましてみんな!!」
懸命に呼びかけ、一番近くにいたマーキュリーを揺さぶる。
体は温かく死んではいないようだが全く反応がない。
「どうして… 一体何が……!!? ぐっ…ぐふっっ!!? かっ…かはっっっ!!」
猛烈な嘔吐感が沸き起こり何か熱く圧迫感のある塊が込み上げてくる。
「これは…蟲っ⁉︎ 滅!!!」
吐き出されたのは蛇を連想させる30センチほどの長さの魔蟲と思しき物体だった。
反射的に印を切り、のたうち回る醜悪な魔蟲を炎で焼き尽くす。
そして彼女は鮮明に思い出した、街に溢れかえるミラーパレドリィとの戦いの最中で突然出現した魔法陣から湧き出た白煙に呑み込まれたことを。
あの時に拉致されたに違いない、他の三人も同様だろう。
おそらく今の魔蟲も自分たちを傀儡とする為の一環として体内へ寄生させたられたものだろう。
「!!!? セッ‥セーラームーン!!!? うさぎっっっ!!?!」
そして更に思い出した、いつの間にか連れ込まれていたデッドムーンサーカスのテント内、そのステージで演じられていた狂宴とその対象を。
ジルコニアの悪辣な奸計によって無残な晒し者とされつつも、懸命に抗い続けていた少女を。
「私…私…わ、わた…しっ………!!?」
そんな掛け替えのない…セーラーマーズとしての自分には前世からの絶対の忠誠の対象であり、火野レイとしての自分にとっては掛け替えのない親友。
複雑な家庭環境と自分でもよくわからなかった奇妙な能力から、周囲との間に出来てしまった見えない壁に囲まれ仄暗い水底のような疎外感。
そんな壁を軽々と打ち破り、自分に手を差し伸べあの仄暗い場所から解放してくれたその少女…月野うさぎに対して自分が行った言動を。
あの時、それが当然のように振舞っている自分の姿をぼんやりとした視界で離れた場所から傍観していたような記憶がある。
今思い返せば自分たちは強力なヒュプノにかけられて、敵に良いように操られていたに違いない。
「銀水晶…⁉︎ ちびムーン!!?」
もう一人の銀水晶の持ち主の存在を思い出し、慌てて周囲を見回すがその姿はない。
恐らく自分たちとは別の場所に連れ去られたのだろう。
「くっ…!」
ちびムーンと彼女の持つ銀水晶のことも気がかりだが、今の彼女にとって最も大事なことはうさぎの現状だ。
直感だが、ここはあの狂宴が繰り広げられたステージからさほど離れてはいない気がする。
どう表現すれば的確かわからないが『空気』や『雰囲気』『匂い』といった物がレイの中でそうだと囁きかけてくる。
兎にも角にもまずは周囲の状況の確認、そして何より優先されるのはうさぎの救出だ。
未だ覚醒の兆しの無い他の3人はあてにできない。
だが、レイは自分一人でも行くことに迷わなかった。
ーーーーごめん… ごめんねうさぎっ!待っていて、必ず…必ず助けるからっっっ!!!!
操られていたとはいえ、自身の手がうさぎの胸からコズミックハートコンパクトを毟り取った折の絶望の表情と涙とがレイの心を切り刻むような痛みとなって押し寄せてくる。
尽きぬ悔恨を抱えながらもレイ…セーラーマーズは直感の指し示すまま薄暗い通路を歩み始めた。
「ん? なんじゃぁ…… 内部にセーラー戦士の反応…じゃと? 外部太陽系の連中か?」
水晶玉の端に映し出された警戒色の点滅にジルコニアは不審げに詳細を投射させる。
捕えた4人以外にもセーラー戦士が存在することは承知している、その連中がおっとり刀で現れたのかと推測した妖婆の唇が醜く釣り上がる。
「ほう? セーラーマーズか… なるほど、確かこやつだけはセーラー戦士としての能力の他に、この地の神と通じる独自の能力を持っておったのぉ〜〜? その力を用いてワシの術から逃れた…というわけか… ギヒヒヒヒッ!!」
マーズの反応を見つめながら薄笑うジルコニア。
「はてさてどうしてくれようかのぉ〜 もう一度捕えるのは簡単じゃが、その忠義の念にも報いてやらねばならんかのぉ〜〜?」
マーズの進行方向が的確に『元』プリンセスの場所へと向かっていることに気づき、魔界の妖婆は邪笑を強める。
「ギヒヒヒヒッ! もう一幕楽しめそうですなぁプリンセス? 今そちらにご忠臣筆頭が参じておりますぞ? 精々お褒めの言葉をかけてやってくだされ… ギヒヒヒヒ〜〜〜ッッッッ!!!」
マーズがプリンセスが放置されているステージまで辿り着くまでにはまだ時がある。
そう、二人の美少女戦士を淫獄の底に叩き込む準備を整える程度には。
ーーーFIN
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良くも悪くもうさぎ絡みで一番しっくりくるのはレイちゃんでしょう!ということで少し書いてみました。
さっど【SAD】
2022-04-21 16:45:48 +0000 UTCさっど【SAD】
2022-04-20 16:18:21 +0000 UTC