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ドラマ『しんがり』『トッカイ』『鉄の骨(NHK版)』

山一證券破綻(『しんがり』)、住専問題(『トッカイ』)、そしてゼネコン談合(『鉄の骨』)の話。めっちゃ面白かった。 全体的に、民間のみの責任とするのは無理があるわけで、実際そのように描かれる。作中でも匂わされてるけど、国による市場介入がもたらした歪み、その帰結に見える。 官民挙げての取り組みは一時的な繁栄と安定をもたらしたものの(高度経済成長)、競争を抑制しイノベーションと効率性を妨げたため、必然的破綻(バブル崩壊)とその後の長期低迷を招いた。 「当初うまくいきそうに見えたことが、悲惨な結果を招くことは珍しくない。一見取るに足らない事柄が、後に国家の盛衰を根本的に左右することがある」(エドマンド・バーク) 人の感情をコントロールすることができない以上、経済もまたコントロールすることはできない。 同時期に潰れたソ連の計画経済は、その背骨が折られたことで継続不能となった。でも日本の国家主導型経済の挫折は、これを終わらせるには半端だったようだ。 「介入」によって、国はより大きな力を手に入れる(そのぶん国民は弱くなる)。だからやめられない。 『しんがり』 ● 山一破綻に見る日本の「和を尊ぶ」国柄 (会長に貫禄がありすぎる笑)ドラマ版と違い、原作では山一破綻の根本原因は「下の暴走を制御できない上層部」にあるという印象が強い。この構図は日本史において度々見られる(古くは応仁の乱、近代に限っても倒幕運動、西南戦争(薩軍)、二二六事件など)。権力集中を避け、強権的なリーダー(足利義教、井伊直弼、大久保利通など)を敬遠する「和を尊ぶ」国柄の、負の側面なのかもしれない。 しかし裏を返せば分権化が進んでいるということでもある。 日本や欧州の封建時代に見られた分権化の流れは、近代的議会制の基盤を提供したと考えられる。 ●法と力 歴史を通じ、軍の制御が困難であることはくり返し示されてきた。議会が軍をコントロールするのは理想ではあるけど、現実的には難しい(カエサル、クロムウェル、ナポレオンなど。参議時代の西郷隆盛は新政府の屋台骨、これを造作もなく潰せるだけの力を持っていた。にも関わらず、彼は進退窮まっても力に訴えることはなく、むしろ隠遁した。そのまま一猟師として終わるはずだった。が、若い衆の暴走に巻き込まれ、これを見捨てることができず挙兵〔西南戦争〕。ついには力尽きて割腹、その生涯を閉じた。世界史的に見ても稀な人物と言える)。 古来、戦士たちが従うのは、王かこれに匹敵する権威、または優れた軍事的指導者だった。 文民統制は幻想かもしれない。 まして「あなた方を戦士と見なすことはないし、命を落としても弔う気はない。だが有事の際は我々を守るために戦え」などと言われ、死地に赴く者があるだろうか。 法や制度というものは、それを支える実力がなければ機能しない。武力や人々の激情の前に、法の存在などひとたまりもない。このことを歴史はくり返し教えてきた。 戦士たちに守ってほしければ、(物心両面に渡り)それなりの対価を支払う必要があるだろう。 「命はカネで買える」などと考える国に未来はない。 ●日英の漸進的気質 日本や、(欧州の中でも特に)英国の社会が改善の道を進む速度は遅いけど、悪くなる速度も遅い。これはその逆よりはるかにマシと思う。 良くも悪くも、歩みが遅いということは立ち止まって再考する機会を持てるということ。変化の速度が緩やかであることで、社会は問題や矛盾に気付き、修正するチャンスを得る。 反対に、よろしくない方向に突っ走るなら、あっという間に国は破壊される(フランス革命、ロシア革命、第三帝国の権力掌握など) 「EU離脱(ブレグジット)」、あれは英国の安全弁が働いたんだと思う。 当初はEUに参加した英国、しかしそのリスクの大きさに気づき、軌道修正を行った(そもそも欧州大陸に直接利権を持たず、沖合から勢力均衡を図ることで乱世を生き抜いてきたのが英国。その悪夢は独露結託。だから時にドイツと結び、時にロシアと結んできた)。 一方、日本には欧米のトレンドが周回遅れで入ってくると言われる。 トヨタはEV市場参入に乗り遅れたと見られたけど、実際には慎重だった(答えを出すにはまだ早いかもだけど)。 内燃機関の製造はビジネスの問題に留まるものではない。国家の地力が問われ、安全保障にも関わる重要な分野。 トヨタは自身の価値をよく知っていた。 日英の共通点は「皇室(王室)の存在」「海洋国家であること」「議会制を採用してること」だけではない。「権威と権力が切り離されている」ことも共通している。 この粘り強い分権化への意志が、両国に漸進的傾向を与えていると思われる。 ●権威と独裁者 一方、共和国においては「権威」は弱体か、ほとんど存在しない。このことが、独裁者による国家乗っ取りを比較的容易にしている。 逆に言えば、王室や宗教的権威の存在は独裁者の台頭を抑制する。近代西洋ではこれが失われるか衰退したため、次々に独裁者が現れた。 しかし権威というものは一朝一夕で形成されるものではない。往々にして、独裁者たちが「王(またはこれに類する称号)」を名乗ったり自己神格化を図るのは、まさに彼らの政権が力のみでは不安定であることを示している。 グラつく足場は不安と恐怖を呼び、政権を凶暴にする。結果彼らはますます力に頼り、人々を抑圧するようになる。これが独裁に対する新たな挑戦者を呼び、果てしなく続く内乱は国土人心を荒廃させる。 だいぶ話が逸れたけど、分権化の長所短所について『しんがり』が再考するきっかけを与えてくれたことに感謝したい。 ●「しんがり」の心意気 ── 日本経済の荒野を生き抜く 「帰還不能点という言葉がある。(中略)青柳は法人支配に抗うことのできる代表取締役であった。次期社長候補にして、その最後の抵抗者を失ったところで、山一は帰還不能点を超えた(後戻りできなくなった)のだ」 青柳副社長と故・中川昭一議員の姿が重なって見える。 「(本作の主人公チームは)それまでは驚くようなことをしたわけではなく、何事もなければ他人に知られることはなかった人々であろう。たまたま企業敗戦という時に、しんがりを努めたために隠れた能力と心の中の固い芯が表れた」 「荒野」という言葉を、『聖書』では折りに触れ目にする。これは試練であると同時に新たな始まりの地を意味するという。つまり「荒野」とは逆境や困難の象徴と言える。 『聖書』は単にキリスト教の神の言葉を記した書物ではなく、戦いの記録でもある。信仰を貫くための戦い、その過程で人々が直面した喜びや悲しみ、得た学びが詰まっている。 順調な時には変化や成長は中々生まれない。逆境においてこそ、人の本当の価値が試されるんだと思う。

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