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ジン(浜沼盡)
ジン(浜沼盡)

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コンタミ(1)

1:


     改良/培養/抽出


品種改良というものは、さまざまな交配を幾度となく行い、果てしないトライ&エラーの末に望んだ特徴を持った品種を作り出すものだ。

そうして作り出された新たな品種。『好ましい』属性を持った、都合の良い存在。

私は、一人の人間の人格に対しそれを行った――徹底的な破壊と再生。幾度とないスクラップ・ビルドの果てに、私は一人の素晴らしい『個体』を手に入れた。

「ただいま帰りました!」

打ちっぱなしのコンクリートの、空気の冷えた我が家に、大きな声が響く。

数日前に引っ越してきたばかりの、殺風景にも思える内装の家だった。まだ家具も揃っていない状態で、部屋の中はがらんとしている。だが、このモノトーンの部屋に、『彼』が彩りを与えてくれるだろう。

「おかえり、待っていたよ」

「遅くなって、申し訳ございません!」

大きな声が、コンクリートに反響する。『彼』、西河憲剛(にしかわ・けんご)は部屋に入ってくると、肩にかけていたドラムバッグをどさりと外し、その場に兵隊のように直立した。彼は真剣な表情で、少し斜め上を見上げるように真っ直ぐ立っている。逞しい両の腕を体の脇にピシリとつけ、丸太のように太い二本の足を隙間の見えないほどきっちりとくっつけている。

彼は、スポーツマンらしい飾らない、機能的な衣服を身につけていた。

ネイビーの、スポーツウェアメーカーの薄手のフード付きシャツ、そして、同じメーカーのショートパンツ。

どちらも、彼の逞しい肉体を映えさせ、より魅力的に見せていた。

そんな彼に声をかける。

「お疲れ様。今日は、練習のあとシャワーは浴びてきたのかい?」

「いいえ!ご主人様のご命令通り、シャワーは浴びてきておりません!」

彼が言った。

私は彼の足元のドラムバッグを見た。そこには、今日の試合で使用したユニフォームが収まっているはずだ。

彼は社会人チームに所属し、プロのラグビープレイヤーとして活動している。

無論、彼は最初から『こういう存在』だったわけではない――最初に述べた通り、私が彼を作り替えたのだ。

「いいね、じゃあ、これから私が本当にシャワーを浴びていないか確認しよう」

私は椅子から立ち上がり、直立する彼の元へ近づいた。彼は、何も言わず少し斜め上を見続けている。

私は彼に、抱きつけそうなくらいまで近づくと、その首筋に鼻を埋めすうっと呼吸をし臭気を吸い込んだ。

健康的な、日頃から運動している男だけが発することのできる、濁りのない汗の薫りが、私の肺を満たした。

私は首筋を嗅ぎながら思い出す。彼は最初、デオドラントをつけることを習慣としていた。彼からは爽やかな柑橘系の香りがつねにしていた。

私は、それが気に入らなかった。

だから、私は彼を作り替えた。

「腕をあげて」

左脇の前に顔を出し、そう命令する。

「…はいッ」

若干の逡巡の末、彼は従った(――これは、後程さらに彼を調整する必要があるだろう。主人の命令には寸分の躊躇もなく従わなければならないのだから)。

彼はその逞しい腕を上に上げ、前腕を頭の後ろに回した。主人の要望をよくわかっている。合格だ。

半袖から、彼の脇がのぞいている。毛の濃く茂ったそこから、濃厚な臭気が立ち上った。

錆びた金属のような苦いにおい。彼の腋は強く匂った。

「……、…!」

私がそこをしつこく嗅いでいると、彼の体が小さく震えた。おそらく、羞恥を感じているのだろう。

しかしその羞恥――つまり不快はすぐに彼の中で変換され、快楽へと姿を変えているはずだ。

その証拠に、彼の薄手のショートパンツにテントが出来上がっていた。

「このふくらみは、どうしたのかな」

俺はそういい、すっと彼の膨らみを下からなぞった。

彼は、「ひゥっ♡」と甘い声を漏らしたあと、一呼吸置いて宣誓した。

「俺、…は……! ご主人様ッに…、俺、のォ…練習後の、臭いぃ腋を嗅がれて興奮しています……!」

私は彼の腋に鼻先を埋めたまま彼に言う。

「へえ、こんな濃厚な雄のにおいのする腋を嗅がれて、きみは興奮しているんだ」

「は、ひッ…!俺ッはァ……臭い脇を嗅がれて興奮する変態奴隷ですッ!!」

ぴくっ♡ぴくっ♡とショートパンツの膨らみが震える。

私が彼の中に生み出した新たな欲望――その細胞は、順調に彼の中で育っている様だ。

ショートパンツの膨らみに手を添えると、パンツごしにギチギチに硬くなったペニスの感触が伝わった。

「はぁ♡あぁ♡んぁッ♡」

ペニスを触られて、たまらず声を漏らす憲剛。目に涙を浮かべて誘うような、欲情のこもった目で私を見つめる。

「私が欲しいか?」

「ぁあ♡ほしい♡ほしいっすぅー♡ご主人様のぉ…ちんぽっ♡」

憲剛は顔を横に向け自分の腋に鼻を寄せた。そしてそこから薫り立ち上る濃厚な雄の臭気に半ば白目を剥きながら、

「はぁっ俺くっせぇ♡練習後のラガーマンの腋くっせ♡サイコーにエロいにおいぃ♡興奮して…ちんぽ欲しくなるぅッ!♡」

自分の臭い腋のにおいを嗅いでちんぽを欲しがる逞しい男――その姿は、どこからどう見ても変態そのものだ。

彼の中は私の作り出した欲望の細胞に満たされ、彼自身をもう完全に変質させているのだろう。

「いいだろう、ケツを出せ」

命令すると、

「ハイッ!!!」

監督の指示に従うときのスポーツマンのように機敏な動きで西河は従った。キビキビと服を抵抗なく脱ぎ捨て、壁に左手をついて右手で尻たぶを広げる。

毛の茂った肛門が、むわぁとさらに濃厚な臭気を放ちながらひく♡ひく♡と震えた。

「あぁ、…ちんぽぉ……ちんぽぉー…♡」

うわ言のように呟きながら尻を振る。あさましい淫乱奴隷の姿だ。

これが一ヶ月ほど前まで、女の胸と尻を追い回していたなどと、誰が信じるだろう?

常備してあるローションを取り出し、慣らしもそこそこに私はそこにぶち込んだ。

彼はもう十分すぎるほど『育って』いるので、私のペニスを柔らかく、温かく受け入れる。

「アァー!ご主人様の生ちんぽォー!!♡♡すっげ♡すっげ♡」

よだれを口角から垂らしながら、その絶望的なほどの快楽にガクガクと体を震わせる西河。

顔をぐいと手で引き寄せ、口の中に指を差し込んでやると、肉厚な舌が私の指をいやらしくしゃぶった。

「指ちんぽ♡んまぁ♡」

知性を感じさせないそんな言葉でうめきながら、べろべろと私の指を唾液まみれにする。

「んー♡んむぅー♡」

母親の乳首に吸い付く赤子のようでもあり、大好物のペニスをしゃぶる娼婦のようでもある――幼稚さと妖艶さの入り乱れたこの表情は、私が作り出し、作り上げたものなのだ。

私はこの男を完全に変質させた。

それを考えると、心の奥底から言いようもない圧倒的な感情が湧き上がり、頭がくらくらした。

「ご主人様ァ♡」

そんな私の気持ちを見透かしたように、こちらを振り返り見つめる西河。

「俺ェ……奴隷になれてェ……幸せれすぅ……♡」

くいっ♡くいっ♡と腰を淫らに振り、ケツ穴で私のペニスをきゅんと締めつける。

私は自然と持ち上がる口角で彼に話しかけた。

「いいね、最高だ…。お前は私が直接手塩にかけて育て上げた、最初の――そして最高の奴隷だ」

「もったいなき…お言葉ですぅ……♡」

その言葉だけで恍惚とした西河は、大きく節張った手の指で自分の乳首をゴリゴリと乱暴に刺激していた。その乱暴な動きと刺激に合わせて、ケツ穴がきゅんきゅんと締まる。勝手に欲望に耽るのは認め難いが、これは主人へのアピールでもあるのだろう。まあいい、今日は特別に許してやろう。

十分すぎるほど昂った私は、彼の中にご褒美を注ぎ込んでやることにする。

こいつの大好きな、ご主人様のザーメンだ。

私は腰の動きを早めた。

「よし、いいぞ、出すぞ、お前の大好きなザーメンを中に出してやる!」

「あぁ♡うれ、うれし♡ザーメン♡ザーメンほしいひ♡」

私は抱えきれないほど大きな憲剛の腰を掴んで、腰を奥まで打ち付けて奥深くにザーメンを放った。

「あぁー♡ご主人様のザーメンンン♡ナカッ♡中にキテるっっ♡」

どく、どく、とザーメンを注ぎこむ。いや、刻みこむという方が正しいかもしれない。

私は尋ねた。

「私のザーメンを中に出される気分はどうだ?」

「あッはぁ…!サイッコーォ…ですぅ……ッ!♡」

私は憲剛の広い背中を撫で、その浮かび上がった筋肉の形を確かめながら話す。

「こうしてお前はどんどん私に忠実な奴隷になっていく。お前の中で私への忠誠心が育っていく。お前は逃げられなくなっていく、逃げたいとも思わない、だってお前はこれが大好きだからだ…お前は望んで俺の奴隷になる。そうだな?」

「はいッ……俺は…ご主人様のザーメンを種付けされるたびにィィ…!どんどんご主人様への奴隷になっていきますゥッ…♡ご主人様のことが大好きなァ……変態奴隷になっていきますッッ♡」

西河のアナルからちんこを抜くと、ごぽっと私の注いだ精液が溢れ出し、筋肉の筋に沿って流れた。

背中越しに振り返った男らしいはずの顔は、どこまでも蕩けきった間の抜けた顔だ。

この男の精悍なラガーマンとしての一面しか知らない人間にこの顔を見せても、おそらく同じ人間だとは思わないほどに。

「起き上がれ」

「ハイっ…♡」

憲剛は私の目の前で直立の姿勢になり、その逞しい肉体を惜しげもなく私に晒す。

とにかく体積のある肉体だ。左右も、前後も大きい。

ラガーマンらしく豊満な胸の筋肉の先端に浮かんだ乳首は、刺激しすぎたせいか随分とぷっくり大きくなっている。こいつがどれだけ変態になったか、これを見るだけで手に取るようにわかる。どう見ても、変態の乳首だ。

私はその乳首に顔を寄せ、口に含んで甘噛みする。

「あはァッ♡乳首ィ♡淫乱乳首がァッ……♡感じるぅ♡」

射精したばかりの西河のちんぽが、再び体積と硬度を増し始めた。


          *


こうやって、俺は西河の中で俺への忠誠心や、奴隷精神、そして変態としての心得を育てていった。

この男をここまでの変態奴隷に仕上げるのに、私はかなりの労力を要した。時間も金もかかったが、なによりも必要だったのは精神力だ。無論、西河の魂をこの形に仕上げていくのは、無常の悦び――快楽と悦楽があった。だが、同時に、一人の人間の精神を都合よく改変する作業は――やはりそれなりに苦労も伴った。加えて、私の『力』にも限度がある。

では、私はこのエロチックな奴隷を一体得ただけで満足できるのか?

――答えは、否。

何かを食べることでかえって空腹が意識されるときのように、私は私の中の欲望に気づいた。

尽きず湧き出す源泉のように、私の支配欲は強まっていくばかりだ。

だから、私はこの優秀な奴隷に育った西河を利用することにした。

私は壊れる寸前まで西河を育て上げた。そのせいで西川は溢れんばかりの欲望を抱えることになり、練習中も試合中も常に勃起し先走りを垂れ流す変態になった。もしその表面張力が破れてしまえば、彼は試合中に絶頂に達しラガーマン生命を終えてしまうかもしれない。本来であれば、そこまでの淫乱に彼を育てる必要はない――彼はすでに十分すぎるほどの忠誠心と変態性を併せ持つ奴隷になっていたのだから。

だが、私がこの男を『熟成』させていったのには、ある目論見があった。

それは、試験管の中で新種の細菌を『培養』するのに近い。

ぐじゅぐじゅに熟れた、いやらしく、ぷんぷんと雄の臭いを放つ細菌が、たっぷりと彼の中を満たした頃――私は、彼の中からその細胞を取り出すことにしたのだ。


「んふぅ……♡」

今日、西河は珍しく練習がオフだった。

彼は裸にハーネスと首輪を着用し、私の奴隷としてその体液を心ゆくまで私に提供していた。汗も、先走りも、唾液も、すべて私のものであることを確認させていた。

「ご主人様ァ……♡俺ェ……これ以上は……俺……おかしくなってしまいますゥ……♡」

ギンギンに勃起した立派なペニスから、とろりと先走りの糸が床まで伸びている。彼はそのペニスをメトロノームのように上下にぴくぴく振りながら、乳首を刺激する。

「はぁん♡ダメェ♡俺の淫乱乳首ィ♡感じるう♡もお♡おかしくなるぅ♡」

「お前は期待以上だよ」

「はぇ?♡あぇえ♡」

私の呟いた言葉も、もうろくに聞こえていないようだ。

私は、引き出しの中から注射器を取り出した。

「なっ♡それ、なぁッ♡」

潤んだ目で注射器を見つめる憲剛。

「これはな、お前の中の欲望の細胞を取り出すためのものだ」

「欲望のぉ…細胞……?」

「そうだ。お前が俺の奴隷に堕ちて、私がお前の中でたくさんたくさん培養した、私の奴隷としての細胞だ」

「あ、あ、……」

乳首を両手で刺激し、腰をゆるゆると前後に振りながら、憲剛はうわ言のように言った。

「ある……ありますぅ…♡俺の中にィ……奴隷としての細胞がありますぅ…♡」

「そうだ、それを今からこの注射器で取り出す」

「ダメェ♡とらないで♡俺ェ♡ご主人様の奴隷だからッ♡取らないでェ♡」

ぶんぶんと首を振って拒否する憲剛に私は言う。私はそんな憲剛の黒く短い髪を撫でてやる。

「大丈夫だ憲剛。お前の中には溢れんばかりの奴隷細胞がある。それを少し私に提供するだけだ。全部は取らない。お前は私の奴隷のままだ」

「あぁ…♡」

「そしてお前から取り出したその淫乱な細胞が、お前以外の人間に植え付けられて――そして、どうなるか、わかるだろう?」

「あ……あはぁ♡」

にへら、と憲剛は笑った。何が起きるのか想像がついたらしい。

「殖える……殖やすぅ……俺のこの淫乱な細胞がァ……ご主人様の奴隷を増やすんですね……ッ♡」

「そうだ、嬉しいだろう?」

「あぁ♡嬉し、嬉しぃ♡奴隷増えるのぉ♡嬉しい♡」

びくっびくっと憲剛のペニスが震えた。

「よし、じゃあ、取ってやる」

私はそう言い、注射器の針をその逞しく日焼けした前腕にプスっと刺した。そのまま、ポンプを引き上げて彼の中の奴隷の細胞を抽出する。

「あ、あ、あ……!ハァ――ッ♡」

がくがくと憲剛は震え、そのペニスからどくどくと生ぬるく雄臭い精液を放った。ぼたぼたと濃厚な精液が私の腿にかかる。普段の彼であれば絶対にしない粗相だったし、仮にしたらすぐに彼はそれを舐めとろうと必死になるはずだ。しかし、彼はそうしなかった。ガクガク舌を垂らした顔を震わせて、『自分を吸われる』感覚に溺れている。

どろどろした粘液が、注射器の中に溜まっていく。

「あぁ――♡」

注射器の針を抜くと、どさりと彼はその場に倒れ込んだ。私は注射器を見つめる。

紫色の粘性の高い液体が、中にたっぷりと溜まっていた。蠱惑的な色だ。見ているだけで吸い込まれそうな、淫靡な色。これが、私と彼の二人で作り上げた特別な細胞。

「あぁー……あぁー……」

地面に突っ伏したまま阿呆のように声を漏らす憲剛の頭を軽く蹴る。

「あ、あぇ」

意識を取り戻した憲剛は、

「あぁッ大変失礼いたしましたご主人様ッッ」

と、今までよりも幾分『しっかり』した口調で話した。彼の中の奴隷細胞が少し減少し、若干正気に近づいたのだろう。だが、もちろんまだ私の奴隷のままだ。

「あぁ――それが、俺の中で育った細胞なのですね」

うっとりと憲剛は注射器を見つめる。

俺がこれを誰に植え付けるのか。

それはもう決めてあった。

コンタミ(1)

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