――春。 新しい生活の始まりの季節。 俺の目の前に立つ煉瓦色の建物――F高の野球部寮にも、新たな風が吹くことになるだろう。 「ッし、行くか」 俺は気合いを入れるように自分に言い、寮の門の脇のインターホンを押す。 「はい」 「すみません、お約束していた新しい管理会社の、島田です」 「……どうぞ」 少し間があって、門からカチャリと音がした。 俺は門そして扉を開け、寮の中に入る。広い玄関に、一人の男が立っていた。 「お待ちしていました」 そこに立っていたのは、近藤隆義――F高校野球部監督。甲子園常連校の出身で、学校の教師ではなく外部から招聘されて野球部の指導にあたっている。年齢は30半ば、男らしい肉体にはまだまだハリがあり衰えを感じさせない。 「こちらへ」 そう言い、無愛想に俺の前を歩くケツがぷりぷりとうまそうに揺れていて、俺はそこをじとっと見つめていた。 「では、こちらの部屋で」 招かれたのは、応接室のような部屋だった。おそらく、取材などの対応もここでしているのだろう、これまでのトロフィーや、チームの写真などが華々しく飾られている。わざわざ学生寮にこんな部屋を準備していることが、この寮がいかに恵まれた状態なのかを端的に表している。 「失礼します」 俺はソファに座った。スプリングのきいたソファは座り心地が良い。 「今日は、この4月から管理会社が変わることにつきまして、改めてご説明に参りました」 「随分急な話でしたね」 近藤は不信感を隠さずに言う。 「いやあ、今までの管理会社を吸収合併した関係でして。寝耳に水な話になってしまったのは、誠に申し訳ないと思っています」 「いえ、まあ、そのあたりは前からなんとなく聞いていましたから」 「ですが、こう……その、監督は、何かご不満を抱えているのではと伺いまして」 「誰からです?」 「いや、まあ、それはその……」 俺は茶を濁す。俺たちの【組織】は、F高への侵食を順調に進めているところだった。 「いやまあ、それは誰でもいいです」 自分でそう言って、ふう、と近藤はため息をついた。メンタルを切り替えたのだろう。そして口を開いた。 「私が一番、不満……ではないですね、懸念しているのは、スタッフも全員交代ということです」 「なるほど」 やはり、そこか。 「上級生の部員などは、スタッフの方々ともこれまで良好な信頼関係を築いておりますし、スタッフの方もここで長い方が多かったので、多感な時期の学生の扱い方に慣れている方ばかりでした。それが急に全員交代というのは、さすがに……」 「そうですね、確かに、おっしゃる通りです」 「でしょう? その、島田さんが新しい管理人になることに異論はありませんが、スタッフの方は継続して雇用していただけませんか?」 「申し訳ありません。私の一存では決められないんですよ、なんせ、【上】の決定なので」 「それは分かりますが、でしたら島田さんの方から――その、上に相談していただけませんか?」 近藤は真剣な表情だ。近藤自身、高校生の扱いに苦労している部分があるからこその心配なのだろう。 不慣れなスタッフが、部員と衝突でもして、何か問題が起きてしまったら――。 大方、そんな想像を膨らませているのに違いない。 俺は心の中で笑った。まったくそんな心配は無用だ。 それどころか、部員たちをお前の想像つかないほど強く強く、放ち難く結びつけてやろう。 そんな思惑をおくびにも出さず、俺は言う。 「そうですね、監督の心配も尤もだとは思います。私の方からも、改めて上に話してみます」 「お願いします」 がばっと近藤は頭を下げる。 「ただ、もう話は進んでしまっているので、一旦新しいスタッフでの運営をさせていただけませんか? とりあえず、以前のスタッフの方には前の会社にまだ所属していただいているので、いつでも戻ってこれるような体制をとっておきます。監督から見て、何か問題がありそうであれば、いつでも意見をいただければ」 もちろん、嘘だ。 「ああ、それなら、はい……わかりました」 一旦、会話が切れる。俺は室内をわざとらしく見回した。 「すごいですね、さすが甲子園常連校。トロフィーがたくさんある」 「あいつらが頑張ってくれてますから」 部員を褒められて、少し近藤の態度が軟化した。俺は畳み掛ける。 「そういえば、監督はもしかして**高校出身ですか?」 「ええ、はい、でもなんで」 「やっぱり。じゃあ我々、同い年ですね。私も同じ年の甲子園、出てまして。近藤さんの名前は当時メディアでよく見かけましたよ」 「ああ! そうなんですね」 最初は不信感を露わにしていた近藤の顔から、警戒の色が薄れる。 「島田さんも、野球をされてたんですね」 「ええ、大学卒業後は、社会人野球部にずっと所属していました」 「そうなんですか」 「新しいスタッフは皆野球経験者なんですよ。今までのスタッフの方とはまた違った方向からサポートができると思います」 「そうなんですね、……」 「新しいスタッフは全員私と面識のあるメンバーです。みんな、気合が入っているんですよ。至らない部分もあるかと思いますが、選手の皆さんの心も体もサポートする一心でいますので。よろしくお願いします」 私がそう言うと、近藤は自分から握手を求めてきた。 首尾は上々だ。俺は心の中でほくそ笑んで、近藤のゴツゴツした男らしい手を強く握りしめる。 一通り世間話をしたあと、私は近藤に言った。 「すみません、お手洗いをお借りしても良いですか?」 「もちろんです」 近藤が、俺にトイレの場所を教える。俺は応接室を出ると、こっそりと近場の一室の様子を伺おうとこっそりドアを開けようとし―― 鍵がかかっていた。 まあ、それはそうか。多感な時期の高校生の部屋が開け放しのわけがない。こうして【外部】の人間が入ってくることもあるのだから。残念だが、仕方ない。俺はトイレへ向かった。 トイレは広い。小便器二つ、個室が二つ。 小綺麗な寮に似つかわしく、トイレも綺麗に清掃されていた。 およそ整理整頓に無頓着だろうがさつな体育会の男子高生が集団生活をしているとは思えない。 個室の扉を閉め、俺はスウツの【擬態】を解く。俺の着ていた襟シャツやチノパンが、真っ黒いスウツへと変化する――これが俺の真の姿。【組織】の戦闘員としての正装だ。 「あー…♡」 俺は指先まで覆われたスウツで、体を撫で回す。頭の中には、ムスッとした近藤の顔が浮かんでいる。あの気難しそうな顔が、淫蕩な快楽に染まる様を想像する。 「ひひっ、すげえ、ああ、サイコーだッ」 スウツが俺の意志に従って形を変え、ケツの中で膨張する。俺のマンコに改造されたアナルを、ぐちゅぐちゅと卑猥にかき混ぜて俺の体に熱と刺激を送り込む。 俺は思い返していた。 社会人野球部を引退後、ジムでパーソナルトレーナーを務めていた俺が、客として紛れ込んだ【組織】の戦闘員に改造された日のことを。俺の中で何よりも大切だった野球への感情は卑猥に歪められて――俺は野球部員に興奮する変態へ改造された。 その後、ジムでの忠実な【働き】が認められ、この寮の【管理人】としての命を授かったこと。 俺の頭の中に、資料として渡された野球部のメンバーの顔が蘇る。 綺麗に刈り揃えられた坊主頭、強豪校らしい鍛えられた精神と肉体。 それらを、ぐじゅぐじゅに熟れさせ、改造する。 泥に塗れ汗に濡れた、青春の象徴のユニフォームを、卑猥なものとして穢させる――。 それが、俺に与えられた指令。 「んッ……ダーク、さまぁッ♡」 偉大なあのお方の名前が、思わず口からこぼれる。その名前を口にしただけで軽くイってしまうほど、俺は戦闘員として【完成】している。 「この野球部を――卑猥で淫乱な野球部に改造し――必ずやあなたさまに捧げますッ!それが私に与えられた使命です!ダーク様に絶対の忠誠をぉッッ♡」 第二の皮膚と化したスウツ。着用していることを忘れるどころか、より鋭敏に快感を伝えるそのスウツ越しに俺はちんぽをしごきあげる。射精を迎えた俺は、白い便器に真っ黒な精液をどぷどぷと注いだ。