――新学期が始まって、半月ほどが経った。 新学期と共に俺たちの寮のスタッフが総入れ替えになって、どうなることやらと不安もあったが、結局、何事もなく生活は続いている。スタッフの入れ替えに反対していた監督も、なんだかんだ新しい体制を受け入れつつあるようで、最初は「何かあれば俺に必ず言ってくれ、話はつけるから」なんて言っていたが、最近は特に何も言ってこない。 いつものように部活のハードな練習が終わり、俺は風呂場へ向かった。 「優平」 声がかかる。振り返ると遠藤がいた。 「お疲れ。今日は調子良さそうだったな」 そう言い、俺の肩を優しく掴んでくる。 「……ああ、だいぶ、調子もあがってきた」 確かにここ最近、妙に調子が良かった。なんだろう、集中できているというか、意識が澄み渡っているというか――とにかく、何か今までと違う調子なのだ。最初は違和感を覚えていたが、結局それは何も悪いところのない、上向きな違和感なので、「成長なのかもな」と俺はそれを受け入れた。 遠藤と並んで浴場へ向かう。 学校から寮まではすぐそばなのでそのまま着ていたユニフォームを脱ぎ捨て、浴場へ入る。 先客が何名かいた。 俺と遠藤は体を洗い、大きな浴槽に入る。ふう、とくつろいだ。練習で酷使した筋肉が温められてほぐれていくのがわかる。風呂に入るのは、気持ちがいい。 「なんか、不思議な色だよな」 ぱしゃ、と湯を掬って俺は言う。うっすら、そう、まるで墨汁を溶かしたように濁った灰色の湯。入浴剤にはあまり見かけない色だ。 「そうだな、それに、なんか独特なにおいがする」 遠藤も同じように手のひらに湯を掬って、そこに鼻を寄せた。確かにそれは、奇妙なにおいがした。最初は少し臭いと思ったが、最近では、あまりそう感じることもなくなった。なんせ、この湯に浸かるととてもキモチがイイのだ。だからか、俺は最近むしろこのにおいをイイニオイだと思うようになっていて――。 すうっと息を吸い込んで、浴場に充満するそのにおいを肺に吸い込もうとしたとき、 「なあ」 と遠藤が俺に呼びかけた。 「あいつ、勃起してねぇか?」 遠藤が指差した先にいたのは、二年の篠原だった。 篠原はいつもちんこを隠さないで歩くタイプの部員だったが、今日、そのちんぽが確かに前に一直線に突き出していた。 ぶるん♡ぶるん♡ 篠原の歩きに合わせて、そのちんぽが揺れている。俺の目は、自然とそこに吸い寄せられた――。 「篠原! お前、何勃起させてんだよ!」 遠藤が隣で大きな声を出す。 「あッ主将! さーせん、最近、なんかすげぇムラムラしちゃって……」 篠原はそう言いながら、あろうことかまるでアピールするように、その勃起したちんぽを ぴくんっ♡ ぴくん♡ と震わせた。 遠藤は苦笑いをし、 「わかった、わかった! せめてタオルで隠してくれよ。そんなもん見せるな」 そう言い、篠原にタオルを手渡した。 「はーい」 篠原は特に悪びれるでもなく、前をタオルで隠した。 「ッたく、しょうがねぇな、あいつは」 遠藤が言う。 「――優平?」 遠藤が、俺の顔を覗きこんだ。 「わりぃ、……さき、でるな」 俺はそれだけ言うと、慌てて大浴場をあとにした。 そのまま自室へ慌てて飛び込むと、俺は鍵をかけることもせず、ズボンとパンツをまとめて下ろした。 ぶるんッ♡ と、いきおいよく俺のちんぽが解放される。 俺はそのままドアを背に、先走りで先端を濡らしたちんぽを扱きはじめる。 背後では、部員たちがご飯へ向かう足音が、扉の向こうに聞こえる。 食事。夕飯。 それを考えると、口の中に唾液が溢れる。新しい調理スタッフの料理は、いつも美味かった。前のおばちゃんの料理も美味しかったが、あれはなんというか――【次元】が違うのだ。 だけど、今の俺にはそれよりも、この目の前のちんぽのことが大事だった。このびくびくと熱く脈打つちんぽをどうにかしなければいけない。 俺は、ゆっくりとちんぽに手を向かわせる。 「……ンっ♡」 野球のマメのある手がちんぽに触れると、たまらず声が漏れた。俺は下唇を噛み締めて、声を漏らさないようにし、ちんぽをシコシコ扱き上げる。 (――アァ♡ やべえ♡ ちんぽきもちい) 俺の目がとろんとうるんで宙を見つめる。視界がチカチカ白んで、何を見ているのかよくわからない。電気もつけなかったから、なおさらだ。 ダメだ、と思う。 俺は最近こんなことばかりしている。 俺は、そんなにオナニーの回数が多い方じゃなかった。 なのに最近、毎日どころか、一日に二回、三回とこなすこともある。 ダメだ。 こんなことではダメだ。 でも、――でも。 ぐちゅ、ぐちゅ、と俺のちんぽがいやらしい音を立てる。 こんなに、キモチいい。 「あぁっ♡」 声が漏れて、俺は慌てて顔に手をやる。その手は、先ほどまでちんぽをしごいていた右手。そこには、先走りがたっぷりまぶされている。すっぱいにおいが、俺の顔の前にある。 ――あぁ、くっせぇぇ……。 先走りの淫乱なにおい。すっぱい雄のにおいに、俺は恍惚とする。 「あぁくっせぇくせぇ、くっせぇぇ……」 俺は朦朧とした意識の中で、顔面にその先走りを塗りたくる。そうしながら左手でちんぽを扱くと、他人にしごかれているみたいで新鮮だった。 ああ、誰かがしごいてくれないかな。 俺のちんぽ。 俺の淫乱ちんぽを……。 そのまま俺は昂ぶって、間も無く絶頂に達しようかと言う時、 ノックの音が響いた。 ――!!! 俺は一気に正気を取り戻した。慌てて、ズボンとパンツを持ち上げた。 「大丈夫かい? 夕飯に来ていないから、どうしたのかと思って」 そう声が聞こえた。その声が誰だかすぐにわかった。新しいこの寮の管理人の島田だ。 「だっ、大丈夫です、……平気です、ちょっと、調子が悪くて」 「本当かい? もしよければ、様子を見たいから、扉を開けてくれないかな」 なぜか、――逆らえない――と感じた。島田の口調は穏やかなのに、俺はそれに抵抗することができなかった。扉を開けた。 島田は言う。 「電気もつけないで、大丈夫かい」 そう言い、パチンと電気をつけた。部屋の中が妙に眩しく感じた。 「座って」 言われるまま、ベッドに座る。島田はその手を俺の額に伸ばして、体温を見た。 「熱はないみたいだね」 島田に触られた額が、変な感じだった。熱はないはずなのに、なんだか熱が出てしまったみたいに、くらくらする。 「少し、話でもしないかい」 そう言い、島田は俺の隣に腰掛けた。 ――早く帰ってくれ。 そう思ったが、言えなかった。隣に座った島田の、スタッフ着用の紺色のポロシャツに、島田の鍛えられた肉体が浮き上がっていた。逞しい大胸筋、袖口から除く太い腕。発育した男の――雄の体。俺の視線は、自然と島田の股間に向かってしまった。 「さっきまでオナニーしてたんだろう?」 島田がさらっと言う。俺はびっくりしてしまった。 「なん、で」 動揺で声が詰まる。島田はすんすんと鼻を鳴らした。 「ニオイがしてね、雄のニオイだ」 「おす、の、におい……」 「うん」 また、島田はすんすんと鼻を動かす。 恥ずかしいはずだった。自分のそんなにおいを嗅がれるなんて。 なのに、なぜか自分は興奮している。 ――何にだろう? 自分の体から雄のにおいがするから? 雄のにおいを嗅がれてしまったから? 意識すればするほどに、俺の股間はビンビンに勃起してしまう。思わず身を捩ると、島田が言った。 「男同士なんだから、何も恥ずかしがることないじゃないか」 「そ――そう、なんです、か?」 島田が告げた。 「大丈夫だよ、俺も、ほら」 そう言い、チノパンのふくらみをぴくん♡と震わせた。 俺は何かに固定されてしまったみたいに、そこから目が逸らせない――。 「はは、そんな見つめて。大丈夫かい?」 そう言われて、俺は自分が何をしていたのか気がついた。 「一発出せば、きっとスッキリするよ」 そう言い、島田はより距離を詰めた。島田の体から、むわっ♡とした熱気――いや、熱気だけではなく、雄のにおいが、強く漂っていた。 「だいじょうぶだいじょうぶ」 そう言い、俺のちんぽに手を伸ばす。スウェットの上からちんぽを掴んだ。 「ひあっ♡」 「ん? ここきもちい?」 パッ、と手を離して、すうっと撫でるように指を這わせる。焦らすようなその些細な動きが、俺の体に信じられないほどの快楽をもたらした。 「ひっ♡ う♡ だめ、です……そん、な」 ズボンの中に潜ろうとする島田の手を、必死に抑え込む。 「大丈夫だよ」 島田が耳元で囁く。男らしい優しいキモチいい声。ずっと聴いていたい。 「安心して。 これも、スタッフの仕事の一つだから。 選手のサポートなんだよ、だから、大丈夫」 そう……なんだ……そんなもんなのか。 俺の手から力が抜け、島田の手を受け入れる。 ぼんやり宙を見つめる俺の耳を、島田がしゃぶって舌でねぶった。 「ぁぅ♡ ぁぃ♡ ……ぁ♡」 部屋の外から、バタバタと夕飯を終えた部員たちの足音が聞こえる。 俺はほとんど意識を手放しながらも、バレてはいけないという一心で声を殺すことだけは忘れなかった。 「ヒィ……っ」 息を吸い込んで、俺は島田…さんの手の中に射精した。 「はは、いっぱい出たね。キモチよかったかい?」 「あ、……はい……ありがとう、ござい、ます……」 「自分のものは、自分で処理しないとね」 そう言い、島田さんは俺の目の前にどろっと白濁液のついた手を差し出した。 それだけで、何を言っているのかわかった。俺は顔をそこに寄せ――苦いにおいの俺のザーメンを、なめとった。 「最近ムラムラして集中できないなら、いいアイテムがあるよ」 舐め終わって口元を拭った俺に、島田さんが言う。 取り出されたのは、真っ黒いスライディングパンツだった。 「これ、が?」 「そう。これを着れば収まるはず」 見たことのないロゴの入っているパンツ。 「それだけじゃない、これは君のことを、もっと【進化】させてくれるアイテムだよ」 「進、化」 「そう」 「じゃあ、君の分の夕飯はとっておくから、いつでも食堂においで。樋口が待ってるからね」 そう言い、島田さんは部屋を出て行った。 * ぱしん! 小気味良い音とともに、キャッチャーミットにボールが吸い込まれる。まるで、俺が投げているんじゃないみたいだ。 ボールを受け取った遠藤が、そそくさと歩み寄ってきて言う。 「絶好調じゃないか」 遠藤があまりにも嬉しそうに言うので、俺も嬉しくなってしまうほどだ。 「フォームも安定してるし、いい感じだな」 「ああ」 よかったと思う。俺はこっそりと遠藤の股間に目をやった。泥に塗れたユニフォームの中心の膨らみ。 「どうした?」 遠藤が問いかけた。 「いや、なんでもない。続き、やるぞ」 「おう!」 遠藤は離れていく。どっしりとした尻が揺れるのを、俺は見つめている。 島田さんにもらったスラパンを着用してからは、部員の体を見てムラムラすることも減ったし、野球に集中できている。邪念がなく部員の体を見られるのは、いいことだ。 島田さんにちゃんとお礼を言わないと。 それに、――遠藤にも、このスラパンを教えてやりたい。 俺はそう思い、管理人室へ向かった。 「どうぞ」 ノックすると、そう返事がある。 「やあ、いらっしゃい。どうしたの?」 「いえ、あの、……お礼を言いにきました」 俺がそう言うと、島田さんは俺を部屋に招き入れた。 「どうだった?新しいスラパンは」 「あ、はい!すごく、いい感じです。なんだか体が変わった感じです」 「体だけ、かな?」 ちら、と島田さんは俺の股間を見た。それは、今はおとなしくスボンの中で垂れている。 「いえ、その……ムラムラも、収まりました。すごく、助かりました」 「そう言えば、君は何にそんなにムラムラしてたんだい?」 島田さんが訊く。 俺は、答えたくなかった。同じ野球部員の肉体に欲情していたなどと、誰が言えるだろうか。でも、俺の口は素直に答えていた。 「はい、俺は、野球部の仲間たちの肉体を見て、ムラムラしてました」 なん、で。俺、こんな――。 島田さんは動揺することもなく質問を続ける。それは、完全に【理解している】顔だった。 「そうか。それは大変だ。君みたいな性欲旺盛な年頃の男子が、性対象とそんな間近に接していたら、ムラついて仕方ないだろうね」 「はい、俺は部活中ずっとムラついて……部員たちを……」 俺は何とか言い止まろうと顔を顰めて抵抗する。 「素直になればいいんだよ。何も恥ずかしいことなんてない。そうか。じゃあ君は、男の体をよく見ていたんだね」 素直になればいい、という言葉が、スッと俺の心に溶け込んだ。俺はすらすらと言った。 「はい、一時期は男の体を見てすごくムラムラしていました。でも、このスラパンを履くようになってからはそれも収まって――今はとても素直に男の体を見ています。ムラムラしてません」 「でも、男の体が好きなんだろう?」 島田さんは椅子に座って、片肘をついて俺を見た。 俺はいつの間にか、試合の前の挨拶のときみたいに姿勢を正して、島田さんに正対していた。 「そうですね、野球部員の鍛えられた体は、すごく美しいし、魅力的で、セクシーです。だから、ずっと見ていられます」 言葉にすると、当たり前のことみたいに思える。 そうだ。 野球部員の体は、鍛えられてセクシーで、魅力的。だから、ムラつくのも仕方ないんだ。 「うん、なかなかいい感じになってきたね。そろそろいいかな」 「いい感じ……?何がですか?」 「こっちの話だよ」 島田さんは立ち上がる。 ぱちん、と指を鳴らした。 びびびびびっと電撃みたいな衝撃が俺の股間を襲う。 何の予告もなく、精液がどぶどぶ溢れ出た。 「アぎッ♡ イギぁッ♡」 声が漏れる。 「なん、だぁッ……これぇッ……♡」 「溜め込んだ分を解放してあげたんだよ。たまらない快感だろう?」 「ひえ♡ ひあッ♡ あがァッ♡」 どく♡ どく♡ スラパンの中でちんぽが暴れる。経験したことのないほどの量が溢れているのがわかる。 「なん、れぇ♡」 なのに、スラパンの外に、それは一滴も滲み出てこない。 「吸収しているんだよ。貴重なエネルギーだからね」 「エネ、ルギ、ぃ?」 「そう、そのスラパンが完全なものになるためのね――入ってこい」 がちゃっと扉が開いて、誰かが入ってくる。 それは、樋口という寮の男性スタッフだった。 「これが、お前をもっと先に進めてくれる」 島田さんが樋口から何かを受け取って、ばさっ、と床に投げた。俺の脳が、遅れてそれをユニフォームだと理解する。練習用の白いユニフォームは、泥と汗に汚れて湿っている。心臓が高鳴った。これがなんなのか、説明されなくてもわかった。 「遠藤くんの、練習後のユニフォームだ。さっき洗濯に出されたばかり。まだ汗で湿っている、脱ぎ立てほやほやのユニフォームだよ。ほら――嗅ぎたいだろう?」 認めてはいけない。そんなことは、認めてはいけない。でも俺は、俺は、 ――【嗅ぎたいだろう?】 もう一度声が聞こえる。 「はいっ、俺は、俺は、遠藤のユニフォームを嗅ぎたいっス!雄くせえあいつの練習後のユニフォーム嗅いで、もっとエロい気分に、変態になりたいっス!」 「素直でいい子だ」 島田さんが俺を褒めてくれる。俺はそれで嬉しくなる。島田さんがユニフォームの中から一枚取り出す。くたびれたその布が、あいつのスラパンだとわかる。 「服を脱げ。あのスラパンは履いたまま、な」 「は、い」 俺は言われた通りにした。 島田さんがゆっくり俺に近づく。そして手に持ったそれを俺の顔面に近づける―― 俺はそこに、自ら首を出して顔を埋めた。 「ひ、ぁっ」 臭かった。それは、汗と股間としょんべんと――とにかくなにか、色々なものが混ざったにおい。苦い?甘い?すっぱい?――なんでもいい、とにかくとてもイイにおい。頭がくらくらする濃厚な臭気。 「ほら、ほら」 そう言いながら、ぐりぐりと島田さんは俺の顔面にスラパンを押し付けてくる。 「お前の顔面に、取れないくらい遠藤のくせぇにおいつけてやる」 ああ♡ ああ♡ それは、なんて素敵なのだろう。俺の顔からいつも遠藤のにおいがするなんて。 「思い切り喘いでいいぞ。ここは防音だからな」 島田さんが言ってはじめて、俺は大声ではしたなく喘いでいたことを自覚した。そうしながら、勃起しズキズキ痛むちんこを思い切りしごいていた。 「イケないひぃっ♡ イキたいのにぃッ♡」 「そうだ、お前はイケない、お前の体はもう【俺たち】のものだからな。そして、まだお前は――完成していない」 「かん、せい?」 「ほら、見てみろよ」 島田さんが、俺の顔からスラパンを外した――ぼんやり霞んだ俺の焦点が合うと、そこに何かが立っていた。人間ではないと思った。まるでマネキンのように、機械のようにピシリと立つその姿は、まるで人間には見えなかった。感情のこもっていない表情、濁った目。そして――全身を真っ黒く包んでいる何か。 そこまで認識してようやく、そのマネキンが、先ほど部屋に入ってきた樋口なのだと理解する。 「なん、あれ……」 俺はようやく、事態の異常性を理解した。だけど、俺は何も動けない。どころかその異常さに、自ら飛び込みたくなっている。おかしい。おかしい。頭のどこかがうめくけど、目の前の【マネキン】から目が離せない。 「あれはダークスウツ。君を【進化】させてくれる存在だ」 マネキンの股間を見ると、まるでコンドームみたいにそこだけが立体的に浮かび上がっていた。逞しいちんぽが、天を突いている。 「きみも【ああなれば】、もっと強くなれる」 「きみだけじゃない。きみたちみんなが、もっと、もっと」 「甲子園で活躍したいだろう?」 俺は、ぼんやりとそちらを見つめていた。同時に俺は、この今履いているあのスラパンが、きっと【あれ】と同じなのだろうと理解して――だからきっとそれはすばらしくて――何に抵抗すべきなのかわからなくなる。 「――、も」 「ん?」 小さな俺の声に、島田さんが言う。 「遠藤も、仲間になりますか」 俺が聞くと、島田さんは笑った。黒い笑みだ。 「はは、もちろん、なるとも!きみたちは揃って、我らが【ダークノア】の戦闘員になるんだ」 「せんとう、いん……」 「すばらしいだろう?」 そう言い、ゆっくりと島田さんが俺の尻を撫でた。 俺の頭に、誰かの【声】が響いている。 それが、偉大なる【あのお方】の声だと理解した。 その声は遥か高みから響いて、俺を包み込む。その声は気持ちよかった。ずっと聞いていたい、ずっと従いたい圧倒的存在の【声】――。 従わなければならない。 だから、俺は言った。真剣な表情で。 「はい、それはとても素晴らしい、です。――俺たちF高野球部は、【ダークノア】の軍門にくだり、戦闘員組織として再編されるべきです」 それは、偽らざる本心だった。 「よろしい。お前はお前の仲間たちを、私たちの一員とすべく働くんだ。わかるな?」 それは、俺の大切な仲間たちを陥れるということ。あいつらを、【組織】の淫乱ホモ戦闘員として改造するということ。 しかし、もう俺の中に抵抗はなかった。なぜならそれは素晴らしいことだからだ。それは何よりも素晴らしいこと。そう、甲子園にいくことよりも、よっぽど素晴らしいんだ。 頭の中に声が響く。 抵抗は必要ない。 快楽に身を任せよ。 戦闘員として働けば、快楽が与えられる、と。 「はい、――俺は組織の淫乱ホモ戦闘員として、仲間たちを戦闘員に改造すべく働きます!」 俺は腹から声を出して宣誓した。それはもはや、俺の生きる意味そのものになっていた。 「よろしい。では、仕上げだ。何を言えばいいかわかるな? その言葉がお前を【完成】させる」 島田さんが言った。俺は頭に流れ込んできた組織の敬礼のポーズをとって、大きな声で言った。 「――【定着】!」 履いたスラパンから、シュルシュルと黒い糸が俺の体を這い登る。そして俺は、あのマネキンと同じように全身を黒いスウツで包まれる。俺は喜びと快感のあまりに射精する。 「いいぞ、出せ、お前の古い人格だ」 「お前に必要なのは、改造された睾丸が作り出す黒精だけ――そんなものは、はやく体から追い出すんだ」 島田さん――いや、島田様が言う。 「ハイッ! 俺は、キンタマからっぽにします!キンタマからっぽにして、組織の戦闘員として生まれ変わります!」 びゅるるっびゅるるっと、俺のちんぽから精液が流れ出る。今度は床にぱたたたっと散るそれを、無感動に見つめる。そんなものにもう価値はない、今の俺に価値があるのは―― それが徐々に黒く濁り、真っ黒になる。 「よし、できあがったな」 島田様の声に、俺は改めて敬礼する。 「はいッ、戦闘員FV-001号! ここに完成いたしました! すべては偉大なるダークさまのため、そして組織のために!」 「よろしい。では、お前に次なる指令を与える」 俺は少しだけ視線を上向きに固定して、その命令を心に刻み込む。
ジン(浜沼盡)
2024-02-01 15:20:55 +0000 UTC思兼
2024-02-01 12:18:24 +0000 UTC