「浜中さあ、なんか、急にがっしりしてきた?」 クラスメイトにそう言われた。入学して知り合った、新しいクラスメイト。 「やっぱ野球部って、厳しいん? 朝練とかいつもやってるし、なんか寮生活なんだろ? 大変だよな」 「うーん、まあ、練習は大変だけど。でも先輩みんな優しいし」 「ふーん」 そいつは聞いてきたくせに、あんまり興味もなさそうだった。 でも、がっしりしてきたと言われれば、嬉しい。中学でもずっと野球は続けていたけど、あんまり体が育たなかったのは悩みだった。それが最近、自分でも鏡を見るのが楽しみになるくらい、目に見えて体が成長している。 ――やっぱり、強豪校のメニューはすごいんだな。 俺はそんな呑気なことを考えていた。 授業が終わって部活に向かう途中、見慣れた後ろ姿を見つけた。 「今野!」 呼びかけると、坊主頭がくるりと振り返った。 「渉か」 今野大輝は、ここいらでは有名なプレイヤーだった。中学時代から恵まれた体型を活かし、ずば抜けた球速のピッチング。どころか、コントロールも超得意ときている。入学式で、今野と同じチームになれると知った時は、本当に心強かった。勿論強豪校だから、こいつだってすぐにレギュラー入りとはいかないだろうけど、来年・再来年は今野がチームを引っ張っていくのは間違いないだろう。 俺も、今野に負けないように頑張らなきゃ。 そんなことは、なんだか恥ずかしくて口には出さないけど。 だらだらだべりながら部室に向かい、扉を開ける。 むわぁっ……と、男のにおいが鼻を突く。 入学当初は気にならなかったけど、最近、なんだか部室のにおいが濃くなった気がする。気のせいだろうか。何よりも不思議なのは、絶対に臭くなってるはずなのに、それをあんまり嫌だと思わないことだ。 「渉?」 隣に立つ今野が、不思議そうに俺を見る。俺はちんこが、ちょっとむずむずする。 「いや、なんでもないよ」 「そうか」 今野はスタスタと部室に入った。 エナメルバッグを下ろして、練習用のユニフォームを取り出す。学生服のズボンを下ろす。 「…ッ」 俺は小さく声を漏らした。 ズボンを下ろすと、そこから【部室と同じにおい】がむわっと広がった気がしたのだ。 ――俺、臭いかも。 そう思って思わずパンツの中を覗き込む。そこが、いつもより毛深くなっている気がする。いや、間違いない。ちん毛、濃くなってる。じっとそれを睨みつけていると、 「どうした?大丈夫か?」 また今野が横から訊く。 「ああ、うん、なんでもないなんでもない」 俺は慌てて、服を脱いでユニフォームに着替えた。 夜、妙な夢を見た。今野が俺のちんぽをしゃぶっている夢だ。 リアルだった。 今野は、その大人びた顔を赤らめて、うまそうに俺のちんぽをしゃぶっていた。 俺はすぐにそれが夢だと気がついた。だって今野が俺のちんぽをしゃぶるわけない。しかも、こんな、うまそうに。 「俺のちんぽ、うまい?」 夢の中の俺が今野に尋ねた。 「うん♡うまい♡すげえうまい♡」 今野が嬉しそうに答える。 ――おかしい。今野がこんなこと言うわけない。あいつはスタープレイヤーで、同じ野球部で、でも俺の憧れで――それが俺のちんぽなんてしゃぶるわけ――。 「早くくれよ、お前のザーメンッ♡」 じゅるるるるっと俺のちんぽをしゃぶりあげる。それがあまりに気持ちよくて、俺はイッてしまう。 どくっどくっと今野のあったかい口の中に射精する。 「んぁっ♡うめぇっ♡……渉のザーメン、うめぇっ♡」 そう言った今野が口を開けると、そこには真っ黒い液体がついている。 「わあっ」 ――俺は驚いて目を覚ました。 目覚めると、俺は思わずパンツの中を確認した。そこには真っ白いザーメンがついていた。 「だ、だよなぁ」 俺は夢精したという事実がどうでも良くなるくらい安心する。そして枕元のティッシュを手に取ってパンツの中を拭った。時計を見ると、真夜中だ。この時間に洗濯に出すわけにもいかないので(みんなにバレる)、とりあえず着替えた。 どうしようかと手に持ったパンツに、少しザーメンが残っている。 『んぁっ♡うめぇっ♡……渉のザーメン、うめぇっ♡』 今野の声が頭の中に響いた。 ――うまい?こんなものが? 俺は思わず指でそれを脱ぐって、味見するみたいに舐めた。 量が少なすぎるのか、よくわからない。 だけど、なんだかコーフンして、俺のちんこはまた勃起した。 なんで俺、こんなんで勃起してんだ。 違う違う。これはきっと、ちょっと変態っぽいことをしたからだ。 ぴくっぴくっと俺のちんぽが物欲しげに震える。毛が濃くなった俺のちんぽから、【あのにおい】が立ち篭める。 「ああ、もう!」 俺は首を振ると、パンツと短パンを履いて部屋を出た。外を散歩でもしよう。深夜二時。さすがにこの時間なら、管理人も寝ているだろう。 真っ暗い廊下に出る。スマホのライトでも点けようかと思ったけど、忘れてしまった。いいや、そのまま出かけよう。どうせちょっと、だけだ、し―― すると、廊下の奥から声がした。どきりとする。幽霊だとかそういう話じゃなくて――どう聞いても、エロいことをしている声だったからだ。見ると、トイレの電気がついている。 心臓が縮み上がった気がしたが、俺は何かに突き動かされるようにそちらへ向かう。声はどんどん大きくなっていく。トイレの前で、俺は立ち止まった。 聞こえてくる。 「っ、おらっ気持ちいいかよ、俺のちんぽはッ」 「ひふっ♡さ、最高、れすっ♡」 「エース候補の癖に、万年補欠の俺に掘られて興奮してんのかよっ」 「ああっ♡そうっすぅ♡俺ェ♡ちんぽ大好きぃ♡」 「風呂場で俺のちんぽじろじろ見やがって、お前ホモだったんだなぁ?」 「あぃぁ、ちがぁ♡俺ぇ♡ホモじゃないぃ♡」 ――ぱしん! 「ホモじゃねえやつがこんなにケツ掘られて感じるかよッ、このど淫乱ッ」 「ああ、ケツ叩かれて俺感じるッッ♡もっと♡もっと叩いてぇっ♡」 俺は床を睨みつけながら、声に夢中になっていた。ちんこが痛いくらいに勃起していた。 声が誰かなんてすぐにわかった。 篠原先輩と――今野だ。 二人が、 二人は――。 俺は声を殺して、声に耳を澄ましてオナニーしていた。 その時。 パチン、と急に廊下の電気がついた。俺は正気を取り戻して、慌てて部屋へと向かった。 * 一睡も出来ずに翌朝。朝練前。俺はギンギンに冴えてしまった頭で、猿みたいにオナニーしたのだった。 「渉どうしたんだよ、めっちゃ顔色悪いぞ」 そう言ってきたのは、当の今野だった。俺は眠気でぼんやりした頭で今野を見る。落ち着いた今野と、昨日の変態じみた声がうまく結びつかない。 「ごめん、ちょっと調子悪くて」 なんとかそう答えると、 「熱でもあるのか?」 今野はそう言いおでこを寄せてきて―― 思わず、俺はのけぞって逃げてしまった。今野が驚いた顔で俺を見る。 「あ――わりぃ……ごめん。やっぱ今日はちょっと、朝練は休むわ。監督に伝えといて」 今野が俺を見ている、俺は気まずくてすっと視線を下ろす。そうしたら、今野の股間が目に入ってしまった。それは勃起しているように見えて、そんなわけはないとぶるぶる首を振る。 邪念を追い払い、その場を立ち去った。 まだ今からでも寮に戻って少し寝れば、授業には出れるかもしれない。部活をやっているとどうにも忘れがちだが、学生の本分は勉強なのだ。 寮の扉を開けた。 「ああ、浜中くん、どうしたの?」 管理人が声をかけてきた。 「ちょっと、体調悪くて……」 「おや。じゃあ、とりあえず始業まで仮眠したらいい。それでも調子が悪かったら、学校も無理せず休むんだよ」 「…はい」 俺はのろのろと部屋へ向かう。 ベッドに倒れ込むと、今度はすぐに眠ってしまった。 「――たる、わたる」 声がする。 あ、やばい。寝過ぎた。授業……。 ぼんやり覚醒した俺の目の前に、今野の顔がある。 「え?」 「起きたね」 今野は、俺の顔を覗き込んでいる。すごく近い。 「え、今野、なに、ちょ」 「大丈夫」 そう言いながら、俺の股間をそっと撫でる。 「なに、――して――」 言いかけてようやく、変なことになっていると気づく。今野が、まるで全身タイツみたいな、ぴっちりした何かを着ている。首元までそれが覆われている。 「おま、それ、何」 「これはね、ダークスウツだよ。これが俺たちを――完全な存在にしてくれる」 そう言うと、今野は俺に顔を近づけて、唇を重ねた。 あ、やわらかい。舌が、絡んで、 ――俺は抵抗できずに受け入れる。 口を離すと今野が言う。 「あとちょっとで渉も完成だよ」 そう言い、俺に覆いかぶさる。ベッドに寝転ぶ俺に重なって、床オナでもするみたいに勃起したちんこを俺に擦り付けている。 「あ、あ、あ」 声を漏らす俺。今野からは部室で嗅ぐあのにおいがする。俺はそのにおいを鼻いっぱいに吸い込む。そんな俺に、耳元で今野が囁く。 「渉はオスに興奮する変態」 「俺ぇ……オス……コーフン……」 俺は言われるでもなく、言葉を繰り返す。 「そう、変態。野球部同士で盛り合う変態」 「へん、たい……野球部、どう、し……」 「気持ちいいだろう?」 ごり、と俺の勃起した股間と今野の股間が擦れあって、 気持ちいい 「はは、すごい顔。間抜け」 今野が俺の顔を覗き込む。 「あぇ……♡えぁ……♡」 ざりざりと俺の坊主頭を今野の真っ黒な腕が撫でる。 その手が胸のあたりに降りてくると、どろっ…と、液体がどこかから流れて俺の体を濡らした。 真っ黒で粘性の高いその液体が、俺の体を流れて、包み込んでいく。 変えられている。 俺は、改造されている。 俺は、戦闘員になってしまう。 俺は自然とそれを理解する。 ――怖い。 そう思うと、 「さあ、俺に身を任せて。怖くないよ」 今野が囁く。 「こわ、ない」 「うん。そう。大丈夫」 だいじょうぶ。こんのがいうんだから……。 頭が働かず惚ける俺に、再び今野がキスをしてくる。 きもちよくて、いろいろがどうでもよくなる。 「ほら、あとちょっと」 今野が俺を立たせた。俺の体は自由に動かなくて、のろのろと動いて、勝手に歩いて鏡の前に向かう。 「俺とお揃いだよ」 俺の後ろで今野が言う。 鏡に映る俺は、真っ黒い膜に覆われたみたいに、スウツを着ていた。その後ろで、同じ格好をした今野が満足そうに頷いている。目は真っ黒に濁って、光を反射していない。今野が口を開く。 「さあ、何を言えばいいか、わかるよね?」 その時の俺には選択肢なんてもうなかった。 俺はこくんと頷いて、頭の中に響くあの言葉を、敬礼とともに宣誓した。 「――【定着】!」 言うと、スウツがぎゅっとより強く締まって俺の体にフィットする。そこから心臓が脈打つみたいにびくびく快楽の波が押し寄せる。 「ひあ♡へあ♡へ♡」 快楽にぶるぶる視界が揺れて、体が震える。それでも俺の体は忠誠を誓うポーズを崩すことはない。 「ふふ、渉、かわいい」 今野が後ろから俺を抱きしめる。つんと乳首をつつく。 「いあ♡あ♡ちくびぃ♡」 俺の目から勝手に涙が溢れ出た。その涙を、今野が真っ黒い手で拭ってくれる。 「大丈夫、怖くない」 怖くない、怖くない。 「きもちいいだけだよ」 きもちいい、きもちいい。 「俺たちはもう何も考えなくていいんだよ。組織の戦闘員として――快楽に身を委ねればいい」 かい、らく。 びゅるっびゅるっと、断続的に出る精液が、徐々に黒ずんでいく。 俺はそれを見て――ああ、俺も戦闘員なんだ――と思う。 そう思うと、俺の心の中をシアワセがいっぱいに満たしていく。 「俺ッ……はぁ!組織の戦闘員FV-013号としてぇ!ダーク様に永遠の忠誠を誓いますゥ!!」 びゅうっと勢いよく溢れ出た精液が、自分の顔を汚した。垂れてきたそれを舌で舐めると―― それは、確かにとてもオイシかった。