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《前編》生真面目頑固女・調月リオの罪悪感綺麗に濯ぎ流して乳揉みと手マンで本来の甘えたがり癖引き出し、マゾメスメイド妻にしてあげる話 with.飛鳥馬トキ《15,000文字》

「ん、ちゅぅ……れぅ……ん、ぢゅぅぅ~~っ……」  粘液がぐちゅぐちゅと混じり合う。この部屋には壁掛け時計まで含めて一切の余計な調度品が置かれていない。そのせいで些末な物音すらよく響き、もつれ合う舌の動きすらもはっきり分かってしまう。呼吸すら惜しみながら接吻に没頭し、きつい抱擁を交わすふたり。熱烈に求め合う姿からは、自分達が他人から一体どう見えているかなど、これっぽちも意識していない。すぐそばで控えている私の存在なんて忘れてしまったかのようにお構いなし。  一体どれだけの時間が経ったのかしら。長い長い口吸を終え、てらてら光る銀色のアーチがちぎれたところでゆっくり瞼が開く。その表情を目にして、思わず息を呑む。私だけの専属エージェントだったメイドが、目尻を垂らして瞳を潤ませていた。無機質を思わせる白い肌は、光源がベッドランプしかない薄暗の寝室でも分かるぐらい赤みがかっていて、その胸の高揚がありありと伝わってくる。心を捧げた相手への愛おしさが溢れ出している女の顔。長く付き添ってきた私さえ、そんなトキの顔、一度だって見たことがない。いえ、人肌恋しそうにキスを貪る姿もきっと紛れもなくトキの一部なのでしょう。ただ、私が知らなかっただけ。私という主人が、今の今まで彼女本来の感受性を摘み取ってしまっていただけ。今更ながらの罪悪感に、また胸が軋む。  やっぱり場違いに思えてならない。愛するふたりの間に挟まる隙間も資格も、私なんかにはないでしょうに。 『リオ。貴女がすべきトキへの贖いは、彼女が幸せになる手伝いをすることではありませんか』  それでも頭の片隅で、ヒマリの言葉が思い起こされる。彼女にしては珍しい明確な怒気を孕んだ声色だった。ええ、それだけのことをしてしまったこと、理解しているつもり。私の独善を貫くために彼女に強いてしまった犠牲の代償は、できることならなんだってして償わなくてはならない。けれど本当に、これが……先生とトキの営みを手伝うことが、償いになることなのかしら。  わからない。合理性は微塵も感じられないけれど、他でもないトキが望んだから、私はこうしてプライベート・ベッドルームに招かれている。  「リオ、こっちへおいで」 「っ、はい……」  先生から突然声をかけられて、肩が跳ねた。部屋の端からベッドの傍らへおずおず歩み寄っていくと、ベッドランプのオレンジの明かりが足元から徐々に私の姿を暗がりに照らし出す。 「「おー……」」  ふたりの感嘆の声。先に先生が口を開く。 「格好が変わるだけで随分と雰囲気が違うね。かわいいよ、リオ」 「っ……や、やめて。見苦しい自覚はあるもの……」  お世辞だとしても恥ずかしい。スカートの裾をぎゅっと握ったけれど、丈が短すぎるせいでかえって心許なさが増す。着用しているだけで居たたまれなさを感じるのは、自分が女であることを否応なく意識させられてしまうせい。  トキまで口元を綻ばせている。 「いえ、そんなことはありません。大変良くお似合いですよ、そのメイド服」 「……あまり見ないで、ちょうだい」  私の身を包んでいるのは普段の黒スーツとは対称的な、白を基調とするメイド服。その原義は高貴な方に側仕えし身の回りの世話を焼く女侍のための衣装であり、ミレニアムではC&Cのメンバーの活動制服として馴染み深いものではあるのだけれど……私が着ているものは、それとはてんで訳がちがう。給仕用の衣装にしては、明らかに生地が足りてなさすぎるもの。胴丈はほとんど最低限であり、首から肩、背中や足に至るまで素肌がほとんど丸出し。胸元なんかは特にそうで、まるで谷間に伸びた縦長の深い陰影の一本線を周囲に見せびらかす意図があるかのような心許ないバストカップ。着用するときは引っ張り上げながら無理矢理下乳を詰め込むしかなくって、上半球は丸見え。せめて局部がはみ出ていないか、鏡の前で何度も確認した。  上半身がそんな有様なんだもの、当然下の際どさにも気を配らなければならない。スカートは濃紺を基調として白のリボンやエプロンの装飾がふんだんにあしらわれた高級感漂う逸品だった。それこそどこかの王家や宮廷に仕える由緒正しい出自の女が着用することを想定されているようなもの。ただ一点、目算で膝上丈が20センチを有に超えていることを除けばだけれど。軽くお辞儀をするだけで、お尻を覆い隠すことを放棄する超ミニのエプロンスカート。一緒に用意されていた下着は、いわゆる紐パンツと呼ばれる、これまた私が絶対に選ばない可愛らしい真っ白なふりふりレース。傍の言伝にはご丁寧に紐の結び方にまで指定があってそれに倣ったところ、スカートの両脇から紐のリボンが外に垂れる形となった。つまりは下着がちらちら見えてしまうことまで含めて、このメイド服の意匠らしい。そうやって本体衣装はメインの型紙を切り詰めに切り詰めて作られている一方、その他のヘッドドレスやチョーカー、サテングローブ、白ニーハイ、ガーターベルト、パンプスといった装飾は余念なく充実している。最後に胸元へ、『コールサイン:072 リオちゃん』と書かれた名札をつけて完成。ナンバリングはC&Cの末席も末席という意味なのでしょう。  カツカツとヒールを鳴らすたび、たっぷんたぷん弾む胸元、スカートからはみ出てひらひら踊るパンツの紐。歩くだけで体のあちこちに生地が食いこむ。女中服の機能性を対価に、“女の体を魅せるために飾る”ことだけを追求した衣装。だからこそ、ふたりの褒め言葉は皮肉に聞こえてしまうのよ。メイド服の本質が“可愛い”にある以上、メイド服と調月リオが全く親和しないことは、他ではない自分がいちばんよく理解している。私なんかが、“可愛い”わけない。随所に見られる破廉恥な工夫の数々は、きっと私を恥じらわせるための罰。 「いいえ、お世辞ではございませんよ。やはり女の子は可愛い格好が似合います。特に愛嬌が乏しいうちは格好でアピールしませんと。……それと僭越ながら、マム」  後退りしようとする私を、トキは逃してくれない。あっという間に背中に回り込まれて、肩を掴まれてぐいっと前へ押し出される。そこは今しがたまでトキが収まっていた場所、先生の真正面。 「先輩メイドの立場からひとつご諫言を。先生……いえ、ご主人様にお褒めの言葉を賜りましたら、謙遜なくお礼の言葉を口にしてください。まずは素直に肯定するところから始めていきましょう」  可愛くはない、似合ってもいない。それなのに破廉恥ばかりの見苦しい醜態を先生の前に晒さなければならないなんて、いっそ今ここで消えてしまいたいとさえ思う。しかしこれは罪の償いであり、今の私は先生とトキに床仕えする女侍。営みを盛り立てるためにここにいるのに、せっかくのムードを壊すわけにはいかない。  生唾を呑み、意を決して顔を上げる。その瞬間、心臓を物理的に握られたのかと本気で思い込むほどの衝撃が去来した。  だって私を見つめる瞳が、敵対した時でさえ私やトキをひとりの生徒を慮っていたあの眼差しが、劣情に濡れていたんだもの。時に瞳は言葉よりも雄弁に本心を語る。獰猛さを秘めた鋭い眼光は獲物を前にした捕食者そのもの。正確には私ではなく恋人のトキに向けていた視線の名残なのだろうけれど、その凛々しさに私は一目で心の真ん中を射貫かれてしまった。 「っ、ぁ、ありがとう、ございます、先生……とても、嬉しいです……」  動揺で声がふるえる。反射的に言葉遣いをかしこまらせてしまった。セミナーを率いるものとしての泰然自若な自負の表れである常語から、自分が相手より下の存在であると認めて謙る敬語へと。そうさせたのは、私にもかろうじて備わっている女の本能が図々しい勘違いを起こしたせい。トキを生徒としてではなく、自分のつがいと見做して繁殖欲を滾らせた男性を前に、“今から自分が食われるのだ”と思い込んでしまった。 「っ、ぁ、ちがっ…! ……っひゃあっ!?」  咄嗟に言い繕おうとした私の腰を、先生の無骨で大きな手のひらががっしりと掴んだ。 「任せてくれればいいからね」  普段よりもずっと低く落ち着き払った声が、潤んだようにふるえて聞こえる。まるで何かを無理やり押さえつけながら話しかけているような…………そんな、まさか。 「え、ぁ。ま、待ってっ、待ってちょうだいっ……!」  最悪の可能性に思い至り、私は慌てて先生を拒絶した。先の愚かな勘違いは勘違いなどではなかったとしたら。この身が“セックスを引き立てる添え物”としてではなく、“食べるために誂えられた女”と見做されているのだとしたら――そんなの、絶対に許されない。この機会がトキの気を少しでも晴らす罪滅ぼしになるならと思って、どんな恥辱も甘んじて受け入れる覚悟でここにきた。今の私はあくまでふたりの仲を取り持つ舞台装置のひとつ、名前のない脇役として存在している。ところが登場人物のひとり、調月リオとして彼らの営みに割って入ってしまうなら、それはトキがやっと手にいれたかけがえのない居場所を奪うことを意味する。 「だめっ、私はっ……!」  腕の中で身をよじる。しかし私を大人しくさせるよう背後から抱きすくめてきたのは、他でもないトキの腕。 「私ならば平気ですよ、マム。私は毎晩ご主人様に可愛がってもらっているので十分に満たされています。今度は貴女の番です」 「だめっ。お願いトキっ、いやっ……!」  「強情なまでに自罰的ですね。私の望みをなんでも聞いてくださるのではなかったのですか?」 「そ、れはっ……!」  絶対に反論できない泣き所を突かれて、喉の奥で息が詰まった。すかさずトキが畳み掛けてくる。 「私からの願いはただひとつ。貴女が私同様、ご主人様のメイド妻として娶られていただくことです」 「はっ、ぇ、な、にをっ……!?」 「本当は大好きなんですよね、ご主人様のこと」 「っ、ぁ」  ひた隠しにしていたつもりの横恋慕をあっさりと見抜かれ、ぶわっと全身に冷や汗が吹き出した。動揺のあまり、咄嗟の言い逃れを取り繕えない。 「っ、そんなの、許される、わけ……」 「許されるかどうかを聞いているのではありません。リオ様の気持ちを聞いているのです」 「やめ、て……っ」 「ふむ、肯定はともかくとして、否定できない、とのことです。ご主人様」 「嬉しい、私もリオのこと大好きだよ」  抱擁する腕に力が込もる。真っ直ぐに相対してくる瞳。嬉々としていて、けれどどこか真剣味を帯びた声。そのどれもが私に嘘をつかせてくれない。  それで直感的に――こんな表現でしか説明がつかないのが、本当に歯痒いのだけれど――分かってしまった。先生は、心の底から私を手に入れたがっているって。こんな都合のよい形で許されてはいけないのに前後から包み込んでくる人肌が心地よくって、拒絶の意志がほどける。自分と他人とを隔てる膜のようなものがまざりあう感覚。こうやって誰かに抱きしめられたことなんてないんだもの。情けないくらいに狼狽して、どんどん目頭が熱くなってゆく。 「っ、や、やめてっ」 「トキもリオと仲良くしたいよね?」 「はい、もちろんです。ご主人様も仲良くしたいですか?」 「もちろん。なのにリオは“だめ”だし、“いや”なんだって」 「寂しいですね」 「うん、寂しいよね」  甘くて熱い囁きの二重奏が耳を通じて、心の底まで深く重く、液状の鉛のように流れこんでくる。 「寂しいです、リオさま」 「さみしいよ、リオ」 「寂しいです」 「さみしいよ」 「リオさま」 「リオ」 「っ、あ、あ、あぁ……っ、ささやくの、や、めっ……」  地面から足の裏が離れるみたいな、ふわふわした浮遊感。一方で、しっかりと抱かれて繋ぎ止められていることに安堵する気持ちもある。相反する感覚に頭の中を掻き回されて、処理が全然追いつかない。理性的な機能が、大脳を走る思考回路が、溶ける。溶けてゆく。 「うわ、お目々涙ぐんじゃってる……かわいいね、リオ」 「やっ、めてっ……」 「お声もとろっとろでかわいいです」 「かわ、いく、ないっ……」 「可愛いよリオ。大好き」 「可愛いです。好き。好きですよ」 「うっ、ぁっ……」  否定しても、その倍の肯定を与えられる。そんなやり取りは私がとうとう出まかせの否定を吐けなくなるまで続いた。やがて押し退けようとしていた手がだらんと脱力して抱擁に甘んじるしかなくなった私を、耳障りの良い甘言が誑かす。 「貴女はとても責任感の強いお人。ですが、きっとそうでなくなる時間も必要だと思うのです。役割から解き放たれ、ただの女として振る舞う時間が。私はその大切さを身をもって学びました。次は貴女の番です」 「っ、ぁ、わ、私……はっ……」 「ご主人様の器量は広く深く、私たちが溺れてしまいそうになるほどの愛情を注いでくださいます。リオ様を新たに娶られたからといって、私のぶんがなくなってしまうなどというご心配は不要です。ですから、ともに大好きな男性様にお仕えしましょう。そうすれば私たち仲良くできます」  淡々とした口調でありながら、そこには先生への深い愛情と従僕が滲んでいる。性の悦びを知った甘く危うい女の香りにくらくらする。つい先日まで唯一の私専属メイドであった彼女が愛と欲を教えられ、かつての主人である私をも、先生の妻に迎えさせようとしている。 「っ……!」  常識ではたどり着けない結論に混乱する傍ら、私の胸をズキリと刺すものがあった。私が唯一気を許せた相手を盗られてしまった、なんて子どもじみた喪失感。それは裏を返せば彼女を娶ってここまで心酔させた、大人の男性への敗北感と読み替えてもいい。しかしそうして湧いた猛烈なもの淋しさも、トキへの罪悪感も、押し殺したはずの先生への恋心も、一夫多妻制が許容されれば全てが解決してしまう。そんな安易な解が、あっていいはずがない。はずが、ない、のに。 「……いいですか、貴女は今からミレニアムを率いる調月リオ会長ではなく、先生が囲っているメイド妻の一匹、“リオちゃん”。可愛らしく破廉恥なお洋服で自らを着飾るのは当然です。すべてはご主人様に喜んでもらいたいから、振り向いてほしいから」 「それ、は、女性、差別よっ……」 「……? はい、それが何か? 優れた男性の旦那様にお仕えするのは、女……いいえ、“おまんこちゃん”として生を受けた私たち、女の義務であり、幸福の形です」 「ぅ、ぁ」  こんな歪な関係修復だなんて絶対に間違っている。けれど私を培っていた論理的正しさが揺らいだ今、その誘いは水を打ったように私の中へ波紋した。かつて捨て去ったはずの個である女としての部分が、トキの語る“男尊女卑の一夫多妻”を切望している。今感じている息苦しさの正体こそ、まぎれもなく一足先に先生の“メイド妻”となった彼女への羨望。 「切り捨てるべきはどちらか、もうお分かりですよね? セミナーの調月リオ会長とはさようなら。重荷を全部下ろしてただのメイド妻の“リオちゃん”になると宣誓してください。 さぁ、『ーーーーーーーーー』と、ご主人様のお顔色伺いを」  男性への媚び方の作法を吹き込まれ、胸の奥から熱いものが込み上げてくる。恥じらい、躊躇い、不安や恐れ。それらを大きな興奮が渦の中へ飲むようにして取り込み、渾然一体の大きな情動となって、私の背筋をぞくぞくと震わせた。  筋肉質な腕。広く分厚い胸板。私をやすやすと見下ろす高い上背。その全てがメスを従える説得力に満ちている。意識した途端、今更ながらに鼓動が加速してゆく。これまでの私なら咄嗟に視線を逸らす悪癖が出ていたところでしょう。けれど、今は……私の底に溜まった汚らしい澱まで、見透かしてほしいと思ってしまう。  先生のシャツを手繰り寄せておずおず見上げると、もうダメだった。捨てられないで溜め込んでいた気持ちの奔流がついに決壊する。 「っ、ぁ、あ、あの……」 「どうしたの、リオ」 「この、格好っ……恥ずかしい、けど……先生の、ために、がんばって、着たの……。わ、私、も、トキみたいにっ…………可愛がって、ほしくって……。それで………………ど、どうかしら……ちゃんと、破廉恥かしら……?」 「ありがとう。ちゃんとスケベだよ。かわいい」 「ぁ、ぁっ、ぁ……」  胸の中につかえていた大きなわだかまりが、ぶわりと氷塊するような感覚。思いを寄せる男性の目にひとりの女として映る――その充足感は私のちっぽけな器を瞬く間に満たし、許容量を超えて嗚咽となって溢れ出た。 (わたし、先生の欲情を煽ることができてっ、嬉しいと思ってるっ……。悦んで、しまってるっ……。なんてっ……なんて不埒なのっ……。でもっ……先生っ、そんな私でも、かわいいってっ……すけべなリオ、かわいいってっ……♡)  全てを曝け出せる相手がいなかったがゆえの人肌恋しさが、抑圧を解かれたことによりこれまでの鬱積を埋めようとして、求められることを求めてしまう。先生のモノになりたい、だなんて……私なんかにはすごく烏滸がましい望みなのに。そこまで考えて、はたと思い直す。そもそも私たち生徒たちにとって男性様は先生ただひとりだけれど、先生からしてみれば言い寄ってくる女なんてキヴォトス中にそれこそ掃いて捨てるほどいる。ならばひょっとして、“メイド妻”とは女が手前勝手に望んで成ることができるようなものではなく、男性様のお眼鏡に叶った一握りだけが選ばれる、メスの幸福の最たる誉れなのではないか。  そんなお声がけをいただいておきながら、自分に選択権があるなんて認識は根本的に履き違えているのでは――っ、ぁ……♡   (私ったら、なんて、なんて不躾な思い上がりをしていたのっ……躾けの行き届いていない、無知で、哀れなっ、馬鹿メス……♡ 男女交際においては男性様が上で、メス風情は格下……♡ そのほうが、明らかに合理的だわっ……♡ 私たちは、せんせ……あっ、ご、ご主人様に、選んでいただけたなら、ご奉仕で、報いるべきなのでは、ないかしらっ……♡)  自分の根幹を成す中枢が書き換わっていくのがわかる。脳がびりびり痺れて、瞼の裏がチカチカ白ばむ。呆けてしまった半開きの口から、はっはっと浅い息が漏れるのを抑えられない。 「おー……皆まで言う必要はないみたいですね。それでは婚姻を誓うキス……のおねだりをどうぞ」  もはやトキの言葉に抵抗感は感じない。驚くほど従順に、体は感情に従う。目を閉じてゆっくり顎を傾ける。そうして唇を差し出し、これをOの字型にすぼめてちゅぱちゅぱとリップ音を鳴らしてみせた。もちろんキスなんて一度もしたことがないから、先程たっぷり見せつけられたふたりのディープキスを瞼の裏に思い描きながらの見よう見まね。これで適切なのかは不明だけれど、男性に欲情してもらうべく心を砕くことこそがご奉仕の本質でしょうから、『私の唇はこんなキスができます』と心をこめてアピールする。 (……っ、上手にすけべなおねだりができたら、また……ほ、褒めて、もらえる、かしら……) 「んっ、ちゅむ、ちゅ〜ん、むぅ♡ ちゅ、ちゅ〜〜っ♡ ちゅ♡ ちゅ、むぅ〜、ん、むっ♡」 「うっわ…キスおねだり顔えっろ……リオってそんなふうにキスするんだ~……ふぅーん……へぇー……?」  てっきりトキのみたくすぐ唇を奪ってもらえると思っていたのに、お褒めの言葉もそこそこに期待は明後日の方向へ裏切られた。先生は私のキス顔をまじまじと観察している。唇をむちゅむちゅと鳴らせば「おー……」と唸られ、ぺちゃぺちゃと舌を使うふりをしてみれば「うわぁ……」と感嘆が聞こえてくる。 「リオ~、がんばれがんばれ~」  さらには、私の拙いキス媚びおねだりエア接吻に応援なんかし始めた。声のトーンは半音上がっていて、おちょくられているのがわかる。気に入られたい相手に不細工なキス顔を観察され、羞恥心でおかしくなってしまいそう。 (っ、ぁ、どうしてっ……何が気に入ってもらえないのっ……? わからない……私そういうのわからないのっ……。もしかして、理由のないいじわるをしているの……? だとしたら、ひどいわ、あんまりよ。いつもの優しい先生はどこへ行ったのっ……それとも私にだけ特別意地悪なの? 私がイヤな女だったから? 先生はもしかして私のことが嫌いなの? やっぱり娶る気はないってそう言ってるつもりなの?) 「あーぁ、眉間に皺寄ってきちゃった~……不機嫌キス顔~。あーあーリオちゃん泣かないで~」  からかわれて、もどかしさがピークに達する。目尻に涙が溜まり始めたところで、やっと先生は私の口づけを……召し上がってくださった。 「んっ!? ぢゅぅ、れぅぅ……♡」 (先生のいじわるっ、いじわるっ……♡ 恥ずかしかったっ……恥ずかしかったわっ、もうっ、もうっ……♡)  キスの正しい手順を知らない不安は、唇同士が触れ合った途端、跡形もなく霧散した。本能の赴くままに先生の唇へと夢中でむしゃぶりつく。舌先をねめつけてはむはむとついばんでいると、応じるように唇がひらいた。それだけでも嬉しかったのに、生娘に接吻の何たるかを教えてくださる心遣いなのでしょう、先生の舌がこちらの口腔内へと押し入ってきた。 (う、ぁ……やさしいっ……♡ やさしいっ……♡ いじわるのあとのそれ、沁みるっ……♡) 「んっ、ぷ、ぁ……♡ は、ふっ、は、ふぅ……♡ ぢゅぅ、れぇぇ……♡」 「ふむ……やはりお手伝いは不要でしたね。生き物が教えられずとも生殖の方法を知っているように、ヒトは愛情を示す方法を本能で知っているのです。つまり生殖行為に愛情を示す過程が必要不可欠ということ。ご安心ください、リオ様。貴女もちゃんと男性様に抱かれるために生を受けたのですよ。はい、キス気持ちいいですね〜。おまんこに生まれて嬉しい嬉し〜い」  前から後からメスであることを自覚させられ、抱かれるための下拵えが着々と進行する。頭の中にモヤがかかったかのように、考えがまとまらない。ただでさえおぼつかない舌遣いがどんどん不器用になっているのがわかる。  息継ぎのタイミングが下手なせいで顎までとろとろ伝い落ちた唾液を、トキが指ですくい取ってちゅぱちゅぱと口に含む。勝手の分からない私のために、ふたりが心を砕いてくれている。情けなくて、恥ずかしくって、たまらなく……嬉しい。私なんかがこんな良い思いをしてはいけないのに、という自罰的な意識が快楽によってふやかされてしまう。 「ん、ぢゅぅぅ……♡ っぷ、ぁ…♡ はぁ、はぁ、はぁっ……♡」  キスを終えて肩を上下させる軟弱な私とはちがい、先生の呼吸はほとんど乱れていなかった。先生と私のあいだにある圧倒的な性経験の隔たり、そして男女間の性差。それをまざまざと見せつけられて、下腹部がじゅわっと熱くなる。男性様への憧憬によって、知性が焼かれ、ただのメスへと成り下がってゆく。怖くもあるけれど、それ以上に期待してしまう。 (先生にっ、ご主人様にお仕えするに相応しい姿に、変えられていくっ……♡ あ、ぁ、ミレニアム生の矜持、をっ……合理的思考を、取り上げられてっ……馬鹿になるっ……♡ 先生の、ものにっ……かわいがって、もらえるためだけの、愚昧な女に、成り下がって、しまうっ……♡) 「リオ? おーい、リオ?」 「“リオちゃん”どうかなさいましたか?」 「えっ……あっ!? ご、ごめんなさいっ」 「んーん、いいんだよ。きもちよかったんだよね」 「っ、ぁ、あっ、手っ、手、ぁ、ぁぁ……♡」  この場においていちばん格下であり、気を回すべき末のメイドの分際で呆けてしまっていた私を、しかし先生は叱責しなかった。それどころかヘッドドレスごと頭を撫で回してくれた。頭部が覆われるほどの大きな手のひらで、少しがさつにわしゃわしゃと。知性の集権たる脳が詰まった頭蓋、また女の命とも称される髪。二重の意味で気安い接触が許されない場所にズケズケ踏み込まれることを、身も心も拒絶しない。  “初めてのキスなのによくがんばったな、えらいぞリオ”、“大丈夫、馬鹿メスになっても先生が守ってやるからな”、“だから安心して、私だけのメイド妻になればいいんだぞ”なんて。そんな都合のいい幻聴が撫でてくれる手のひらから次々と聞こえてきて、セミナーを率いてから絶えず苛まれていた孤独がたちどころにほぐれてゆく。  メスが何匹依りかかっても揺らがない、圧倒的な上位の存在。その頼もしさに惹かれてしまう。 (この方が、私のっ……私の、ご主人様……っ♡) 「っ、ぅ、ぅ、ぁ……♡」 「ご主人様、“リオちゃん”のお顔はいかがですか?」 「うん、アクメしてるんじゃないかってぐらいとろっとろ」 「やはりマゾメスでしたか」 「マゾメスだね。トキと一緒」 「……まぁ、先生の“なでなで”は女の本性を炙り出してしまいますから」 (ま、マゾ、メスっ……♡ マゾメスっ……♡ マゾメスっ……♡♡)  噛み砕いた言葉の意味が子宮に流れ込んできて、思わず達してしまうかと思った。メスだけでも侮蔑的なのに、接頭語にマゾをつけられた、女性の尊厳を踏みにじるようなレッテル。なのにその卑しい品種の名は、“女”よりもしっくりと私に染み込んでくる。 「では“頭なでなでで甘イキ癖”でもつけてみますか?」 「お、いいね。リオはどう? 頭撫でられただけでまんこきゅんきゅんしてイけるようになりたい?」  耳を疑うような提案に肩が跳ねる。 (ぇ、今、何って…っ…♡ “イキ癖をつける”? そんな、まるで動物に躾けを施すみたいなっ……♡)  ちがう。“みたい”ではなくって、躾けそのもの。だって人が成熟するための第一歩は、生理現象を制御することから始まる。食欲や排泄、性欲の制御は理性を勝ち取って動物の本能を支配することを意味する。言い換えれば、生理現象を他人に制御されるとはすなわち、自分の身体の支配権を他人に奪われることにほかならない。その中でもとりわけ、性欲は最も理性からかけ離れた場所にある。  犬に“食べるのを待て”を聞かせられても“発情を待て”が仕込めないように、性にまつわる反応を制御できるかどうかが人と動物の分水嶺と言ってもいい。 (それを……性欲の制御権をっ、他人に、明け渡すっ……? 頭を撫でられるだけで絶頂する“イキ癖”だなんて、ミレニアムの生徒会長どころかっ……に、人間の、女をやめてしまうっ……♡ なのにっ、妄想が、ふくらんでっ……♡ 私っ、あたま撫で撫でされて、絶頂するように、されて、しまうのっ……? 犬の嬉ションみたいにっ……いいえ、それよりもっと従順でっ、みっともないっ……♡ 悦んで尻尾を振ってっ、痴態を晒すマゾメスにっ……♡ もし、そうなったらっ……先生お気に入りの、メイドにしてもらえるかしらっ……♡) 「リオ?」 「っ……、、ぅ、……ぃ」 「“リオちゃん”。もっと大きな声で。ご主人様に聞こえませんよ」 「……し、て、くださ……いっ……」 「何をしてほしいのですか?」 「あたまを、なでられてっ……絶頂できる、ようにっ……♡」 「ちがいます。“頭撫で撫でで甘イキ癖”」 「っ……♡ あ、たま、なでなででっ……甘イキ、ぐせっ、つけて、くださいっ……♡」 「甘イキでいいの? もっと深いのもできるよ?」  頭が真っ白になる。そんなふうに唆されたら……堕ちるところまで、堕ちたくなる。 「……ふ、かいのっ……♡ ふかいのが、いいっ……♡」 「ちゃんとおねだりできたね。えらいよリオ」 「う、ぁ…ごめ、んなさっ……♡」 「かわいいよ、リオ」 「かわいいですよ、“リオちゃん”」 「うっ、ぁ、ぅぅっ……♡」 「……では手始めに頭を撫でられることとアクメの回路を繋げましょうか。まずはゆるゆる愛撫モードからいきます」  恭しい口ぶりに似つかわしくない台詞を平然と口にしながら、トキは手のひらを私の下腹部へと添えた。じゅくじゅくと熱を感じる、ちょうどおへその下あたり。そしてもう片方の手はメイド服がかろうじて局部を覆い隠している胸元へ伸び、バストカップですら食い込んでしまう乳肉をおもいっきり鷲掴みにする。 「うわ、おもっ……。素晴らしいですよ、リオちゃん。この重ったるいデカ乳は、男性様を悦ばせることに向いています。トキちゃんも嫉妬。 おー……ご主人様、ご主人様。すごいです。“おっぱいでっっっか”です」 「っ、あっ、トキ、やめっ……♡」  女の小さな手のひらでは収まりきらない、私の乳房。肩幅や胴丈、腹部周りに比して、豊満すぎる肉付きは煩わしいことばかり。汗で蒸れるし、重くって肩が凝るし、階段は降りるのも上るのも下りるのもつらい。スーツに合わせられる見栄えのいいシャツはないから、インナーに白のタートルネックを合わせているのだって、このみっともないほど大きな胸のせい。コンプレックス、あるいはハンデと言い換えてもいいかもしれない。可愛らしさとは程遠い、女に色づく兆し。それをこれみよがしに先生の前で揉みしだかれて、今しがた腹を括ったのとは違う類の羞恥心が、汗となって滲み出てくる。 「こっちむいて。かわいい顔見せて」 「せ、んせ……っ」 「おおきくて恥ずかしい?」 「っ……♡♡ えぇっ、はず、かしいっ……♡ はずかしい、のっ……♡ こんな、かわいくないからっ、見ないでっ、見ないで、ちょうだいっ……♡」 「大丈夫。リオはかわいいよ。おおきなおっぱい恥ずかしがってかわいいね」 「〜〜〜っっ♡♡」  悶える私を、先生は何度も“かわいい”と褒めそやす。胸に指を沈められているあいだも、おへそのあたりをさすられているあいだも、言い聞かせるみたいに愛でてくる。その間、私は先生と見つめ合ったまま。ほんの少しつま先を浮かせれば、唇が触れ合ってしまうほどの近さでお預け。いっそ唇を奪ってほしかった。そうすればこんなぐちゃぐちゃな顔を見られることもないし、見られて恥じらうこともないのに。それが許されないのはきっと先生とトキの企みが、私の中に“恥じらい”と“もどかしさ”を育てて飢えさせることが目的だから。  その試みは効果覿面。次第に身体が反応を殺しきれなくなってくる。まるで肌の内側を羽毛でこしょこしょとくすぐられているみたいな感覚を生んだ。前に後ろに勝手にクイクイ動く腰。手は先生の袖口をぎゅっとつかみっぱなしでもう離せない。“キスしたい”だった気持ちは、“強引に唇を奪ってもらいたい”に。ただの“かわいい”では物足りず、“どんなふうにかわいいか”を聞かせてほしい。欲求がどんどん、浅ましく媚びてきているのがわかる。 「先生、ご報告です。リオちゃん、乳首膨らんじゃいました」 「ぇ、うそっ、トキぃ…っ…♡」 「嘘ではありません。先っぽは摘んでいないのに、左はぷくーって膨らんでいます」 「“リオちゃん”、乳首立っちゃったの?」 「っ、ぁ、そ、れは……♡」  先生からの不意打ちの“ちゃん”付け呼びに激しく狼狽してしまう。よりにもよって、初めての呼び方が乳頭の勃起を問い詰めるタイミングだなんて。粗相を問い詰められているようなバツの悪さがある。いいえ、それよりもっとひどい。だって毬玉のような乳房をたぷたぷとこねまわされただけで、性感帯が期待で膨らんでしまうなんて……っ、変態っ、そのもの、だもの。“変態のリオちゃん”だなんて、イヤ、よ……イヤっ……♡ 「ちがうの、ちがうのよ先生っ。私っ、私は、変態じゃっ……♡」 「そっか、リオちゃんは生徒会長だもんね。ミレニアムでいちばんすごいんだもんね」 「やっ、いやっ……♡ 今っ、その話やめてっ……♡」 「でもね、みんなの前ではいつもがんばってるリオちゃんが変態だととってもかわいいなって思うよ」 「な、ん…ッ…♡ ずっ、ずるいっ…♡ ずるいわっ……ずるいっ……♡」 「ね、トキ。かわいいよね」 「なるほど、はい。そうですね。ようやく、“女の子は恥じらっているときがいちばんかわいい”の意味が理解できました。……心配いりませんよ、リオちゃん。貴女はかわいいですし、それに女の子はみんな、大好きな男性にいじわるされたい“マゾメスまんこちゃん”になれるんです。私たちはおちんぽ様がきもちよくハメハメ遊びするための、いじめがいのある穴っぽこなんですから。マゾ乳びんびんにそそり立つぐらい普通です、普通」 「〜〜〜〜っっっ……!!」  男性様。マゾメスまんこちゃん。おちんぽ様。ハメハメ遊び。いじめがいのある穴っぽこ。マゾ乳。真っ白な壁紙にペンキをぶちまけるように、淫猥な言葉たちがトキの手のひらから染み込んでくる。頭の中に、ではない。乳房を揉んで揺らしているのとは反対の手。ずっとさすられ続けているそこは、おへその下の……つまりは、女の子にとってもっとも大切な場所。子を授かり育てるための子宮に、教え諭すみたいに。  返答に窮する私とは対称的に、子宮がトキの言葉を真に受けてどんどん熱を帯びてゆく。 「ほら、リオちゃんのお腹は正直ですよ。手をあててみてください」  “お腹は正直”。その言葉の意味を理解する勇気のない私の手を取り、先生はそっと下腹部へと導く。三人の手が私の子宮の位置に触れる形となったとき、確かに指先に疼きを感じた。感じてしまった。気の所為と誤魔化すことはできない、明確な子宮の疼き。私の身体が変態であり、マゾメスおまんこちゃんであり、いじめがいのある穴っぽこである証拠の“おまんこきゅんきゅん”。 「リオちゃん、乳首立っちゃった?」 じゅくっ♡ きゅうぅ〜〜っ♡♡ 「っっ!」  羞恥極まって喋れない私のかわって、子宮の痺れが悦びを指に伝えてしまう。 「リオちゃんはマゾメスまんこちゃんって呼ばれて嬉しい?」 「そ、んなこと……っ」 きゅんきゅんきゅんきゅぅ〜〜ん♡♡ 「「あ〜あ…♡」」 「やめっ♡ ちがっ、ちが…っ♡」 きゅぅ〜〜っ♡ きゅん、きゅんっ♡  さながら嘘発見器。どれだけ取り繕おうとしても、もう自らを偽るのは嫌だと、この心地いい人肌を手放したくないと、物欲しそうに駄々をこねる。 「大丈夫。変態でマゾメスなリオちゃんもかわいいよ。だから、ね。ちゃんと教えてほしいな? もどかしくて、おっぱいの先っぽ、硬くしちゃったの?」 「…………っ、ぁ、ぁ……♡ っ、し……し、ちゃった、わっ……♡」  蚊の鳴くような声だったのに、たかが生理的な反応を肯定しただけなのに。脳髄の奥の奥で弾けた火花が生体電流となり、脊髄を伝って、体の中を子宮まで一直線に駆け抜けた。その落雷に灼かれて、お腹の奥でぐじゅっっ♡と音が鳴る。熟れすぎた果実が潰れたみたいに、子宮がダメになってしまったのかと思った。 「弱くてかわいいね。上手に告白できてえらいね、リオちゃんは」  正直に打ち明けた弱さと晒した恥を、大好きな男性様に“かわいい”と受け入れられる多幸感。まさにそれを味わうために女に生まれたと言っても過言ではない、天にも昇る心地の法悦。それが合理性を突き詰めてきたこれまでの私の在り方を根本から揺るがしてゆく。一度でもその味を知ってしまった女はもう、ただの女ではいられなくなってしまう……そう、そういうこと、だったのねっ……♡ 「っ、あの……せ、んせっ……」  何を言おうとしてるの、やめなさい、私。そんな薄っぺらな理性の制止はもはやブレーキの役割を果たさない。  私の奥深くに眠っていた女の子の……いいえ、甘えたがりなマゾメスの本性は、男性様に弱みを曝け出す快感を、その味をしめてしまったのだから。 「たぶん……み、右のっ、乳首もっ、たってるわ……♡」 「え?」「なんと」 「……っ、ぁ♡」 「……乳首の勃起を確認。驚きました。こちらはひと揉みだってしていませんのに」 「ぷくぷく?」「はい、メイド服に膨らみが乳首ぽっちが浮きあがるほどの本気勃起です」 「っ……♡ ふ、ぅっ……♡ う、ぅぅ……♡」 「うわぁ……そうなんだ、リオ?」  品定めするような目でじっと見つめられ、羞恥に苛まれて呼吸が荒くなってゆく。ちがう、思っていた反応と。“変態だったの、隠してたんだ?”とでも問い詰められそうな雰囲気。どうして、先生。話がちがうわ、私、精一杯背伸びをしてっ……告白、した、つもりなのだから……その……っ♡ 「せんせ、私……えらい? いい子……かしらっ……♡ っ……あ、あの、褒めて、くれないとっ……い、イヤ、なのだけれどっ……♡」  期待だけで乳首を膨らませたことを褒められたい。文面に起こせば自分の正気を疑いたくなる感情なのに、その甘美な手招きに抗えない。 「っッ……♡ ん、ぷっ、ちゅぅ、りゅぅ……れぅれぅ……♡」  返答は口づけで。ご奉仕を捧げるべき立場である私の舌を先生が絡め取ってくれる、それが何よりの褒章。これまでに数えきれないぐらい“会長には人の感情の機微がわからない”なんて揶揄されたけれど、今ここに至ってようやく私は収まるべき場所に収まることができた気がする。 「っふ、ぅ……じゃあ、触るね?」  許可なんていらないのに、先生はわざわざ一言断ってから、私の毬玉のような乳房を下から支えるように持ち上げた。 「でっっか……おっっも……」  私にとっては胸の重みが消失したように感じる一方、それは先生の手のひらに乳の重みを委ねていることを意味する。ヒールを鳴らせばぶるんぶるんと弾け、周囲からの好奇の目にさらされることも少なくなかったこの煩わしい重みは身に沁みて理解している。メスの自覚に乏しく自ら進んで男性のつがいを見つけられなさそうな私に代わって、せめて身体で選んでもらえるようにと性的な魅力を蓄えてきたのでしょう。 「うわぁ……リオの乳、おもっ、た……」 「申し訳ないと、おもって、いるわ……っ……♡」 「なんで?」 「だ、だってっ……♡」  男性様に気持ちよく揉みしだいてもらえるようここまで大きく実っておきながら、いざ揉まれるとそのお手を疲れさせてしまうなんて……生意気がすぎていてよ。でも、でもね、先生、この子。悪い子ではないの。ほら、指の先までぐにゅぅっと馴染んで、上下左右に引っ張れば逆らわず、その通りに伸びようとするでしょう? ご主人様が望む全てを叶えようと言いなりに歪む健気な乳の様相に……私の、全幅の服従を感じてもらえないかしら……♡  できることならそうやってフォローを入れたかったのだけれど、想いを寄せる殿方に女の部分を弄られている興奮と感動で頭がまわらない。せめてもの表敬にと頭の後ろで腕を組み、虜囚のような格好で乳を差し出した。貴方のものです、どうぞお召し上がりください、と気持ちをこめて。 「うわうわ、そんな格好どこで覚えてきたの」 「どこ、で……? いえ…あの……これで、少しでも、伝わればと、思ってっ……♡」  どうにも意思疎通が上手くいっていないみたい。見兼ねたトキが仲介してくれる。 「リオちゃん、その姿勢は“腋見せ”といって、腋を大胆に曝け出しながら女体を見せびらかすポーズです。多くの場合、それは……男性様の欲情を煽るための挑発の意味合いで使われます」 「っ、そんな、つもり、はっ……♡」 「ええ、承知しています。……ご主人様。リオちゃんは存分にその、重ったるいくせに……どこまでも指を受け入れる乳肉のやわらかさを感じてもらうことで、従順っぷりを表明したかったみたいです。媚び方ひとつ知らないリオちゃんが、男性様の足元にすり寄る方法を自分なりに考えたのだと思われます。どうか、わかってやってくださいませんか?」  こく、こくっ……♡  先輩メイドに斟酌してもらった旨を、懸命に首肯する。先生が目一杯広げた掌中の指のあいだからでもでっぷりとはみ出ておさまりきらない、まるでホルスタインのような乳房。さっき打ち明けた通り、こんなに大きなおっぱい、ずぅっと恥ずかしかったわ……♡ でも、その恥ずかしいのも、ぜんぶこうやって好きな男性に喜んでもらうためだったって考えたら……それは、すごく幸せなことだと思うから……♡ 


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