ロリ小悪魔ご主人様六話後日談「夢が終わるまで……」
Added 2019-12-08 13:00:02 +0000 UTC「さ、て……♡」
「最後の仕上げ♡」
「してあげましょうね♡」
夢の世界でたっぷり搾られたところへ、更に二人のご主人様が耳元で囁いた。
「し、仕上げですか……?」
もう精は尽き果て、一滴も出せないというのに、何をされてしまうのか……。
「ええ。仕上げよ」
「貴方がもっと私の虜になるための、ね♡」
既に身も心もご主人様に捧げた犬であるのに、と思っていると、「伏せ」の命令を受けて俺は背中をご主人様達に向けてうつ伏せになる。
「ふふふ……傷だらけね」
「隠しているつもりだったのだろうけれど、お見通しよ」
「えっ、傷……?」
確かに、夜の眷属を狩る使命を背負っている身としては、戦いの中で傷を負うこともある。しかし、それらは全て塞がっているはずだ。聖水を混ぜた軟膏を塗り込めば、痛みはあるが傷が残ることはほとんどない。
「あのねえ……ここは夢の世界なのよ?」
「貴方の心を曝け出した世界……ということは、この傷は貴方の心の傷」
「心の……」
冷たいご主人様の指が、俺の背中の傷をなぞった。その感触で、俺は自分の背中が傷ついていることに気づいたのだ。
「たくさん傷ついたのね」
「私のために、私を守るために」
「生きるために生きて、戦うために戦うだけ」
「名誉の勲章とは呼べない、誰にも見せられない、気付いてもらえない心の傷」
ああ、そうだった、と思い出す。
ご主人様に出会うまでの俺は、家族を吸血鬼に殺された怒りでハンターになり、顔も知らない仇へ復讐するために生きていた。
高校二年の秋、修学旅行から帰った俺を待っていたのは、一滴残らず血を吸い尽くされて死んでいた家族の遺体だった。
被害者の遺族として平穏な生き方を選ぶこともできた。それをしなかったのはただ仇討ちをしたいだけでなく、自分一人生き残ってしまった罪悪感に依るところが強かった。
仇かどうかもわからない、人を噛んだ容疑のある吸血鬼を何人も殺した。数え切れないほど殺した。伝説のワーウルフの血を注射することで、月夜ならば部分的に人狼に変貌する肉体も手に入れた。
何を得るわけでもない。家族を失い、安寧を失い、人としての生活も失い、心が乾いていくのに気づかないふりをしながら砂の味がする日々を送る迷い犬。
それが、俺と言う生き物だった。
「でも、あの夜」
「雲が月を隠し、冷たい雨が降る梅雨寒のあの晩」
「私は貴方を拾った」
「貴方は私に拾われた」
そうだ、あの夜、俺は迷い犬ではなくなった。魅了されたからではない、服従のキスマークを刻まれたからではない。
安堵したのだ、心から。“誰かの為に”生きることが出来る、と。
「それでも、こうして傷は残っている」
「癒されることなく、隠されている」
その通りだ、と思う。ご主人様の為に力を振るい、孤独から抜け出した今でも、傷は痛む。
「傷はまだ痛むでしょう? 何の為に戦ったのか、傷ついたのか」
「わからないからこそ痛むのでしょう?」
「はい……」
こくり、と頷く。背中がひどく寒い。それなのに傷が熱を持ってズキズキと痛む。
「……愛してあげる、貴方の傷も」
「傷も、痛みも、私に捧げさせてあげる」
ちゅっ、と二つの唇が背中の傷に触れた。
やわらかく、瑞々しいご主人様達の唇。それが触れると、途端に傷が癒えていくように感じられた。
「もう怖くないのよ」
ちゅっ。
「貴方の戦いは無駄ではなかったの」
ちゅう……。
「私が貴方の傷に意味を与えてあげる」
ちゅうっ。
「今日から貴方は傷ではなく、」
ちゅっ、ちゅっ。
「私の愛を背負うの」
ちゅっ、ちゅう……。
「刻まれた傷を全て私のキスと愛で上書きしてあげる♡」
ちゅっ、ちゅっ、ちゅうっ……。
背中一面に降り注がれる、ご主人様のキス。その一つ一つが俺の背を温め、傷を癒していく。
「こんなものかしらね?」
「まったく、無理をしすぎているとは思わないのかしら?」
「申し訳ないです……」
無理なんてもう何度したかもわからない身としては、苦笑することもできない。
「もう一度はっきり言っておくけれど、」
「貴方は私の飼い犬なのよ」
「主人の命令を無視して無理をすることのないように」
「勝手な真似をして死なれたりしたら、困るのは私なのだから」
「わかったかしら?」
「はい……」
もう一度頷いて、起き上がる。もう痛みはない。充足感が心を満たしていた。
「ところで、ここは夢の中なんですよね?」
「ええ、そうよ。だからこそ、このベッドを再現したり、二人になったり出来るのだもの」
「想像が具現する心の裡なのよ。所詮は再現や幻に過ぎないのだけれどね」
パチン、と黒ご主人様が指を鳴らすと、蜃気楼のように白ご主人様が消えてしまった。
「作るも消すもこの通り、自由自在」
「俺の夢の世界ってことは、俺にも同じことが?」
「ええ、出来るわよ? でも、貴方の記憶にないものは貴方には作れないし、傷つけることもできないわ。夢の世界で他者に影響を与えられるのは私のような夢魔の特権なの」
「そうなんですね……じゃあ仮にここで俺がご主人様を無理矢理襲っても……」
「触れることすら叶わないでしょうね。なぁに? 襲いたいの?」
「いえ、そうではなくてですね……」
口にするより見せたほうが早いか、と思い、頭の中に風景を思い浮かべる。
高校二年の夏、家族と最後に旅行した、夏の海の光景を。
「あら」
たちまち、天蓋付きのベッドも暗闇も消え失せ、足元は眩しい太陽に照らされた白い砂浜に、辺りは波飛沫をあげる真っ青な海に変わる。
「なぁに? 吸血種である私に日を浴びせてどうしようというの?」
「夢の中では傷つかないなら……と思って」
「ふぅん? 確かにそうだけれど、それに何の意味があるというの?」
「意味は、ないかもしれませんけど……。贈り物です。その、現実世界で叶わないなら、せめて夢の中では太陽の温かさを知ってもらえたら……って。ほら、ご主人様は日を浴びたことがないから、記憶から再現することはできないでしょう?」
しどろもどろ、言葉を継ぎ接ぎ、説明する。
「……ご迷惑だったでしょうか?」
イマイチどころかまったく喜ばれていない気がして、気まずくなってくる。
「いいえ。ただ、少し驚いてしまったの」
「驚き、ですか」
「ええ。すっかり忘れていたのだけれど、私も太陽に憧れたことがあったわ。天気のいい晴れた昼間に、犬を連れて海沿いを散歩するの。思いがけず、叶ってしまったわ」
にやり、と意地悪い笑みを浮かべるご主人様。
「付き合わせてあげる♡」
「はい……お伴します……」
「ふふ♡ ありがとう、大好きよ♡」
いつになくたっぷりと愛情を向けてくれるご主人様に嬉しくなりながら、俺は彼女の後ろをついて歩いた。
そうして、夢から覚めた。
「おはようございます。俺も、ご主人様のことが大好きです」
目覚めて開口一番、既に目を覚まして椅子に座って読書をされていたご主人様に挨拶をする。
「なぁに? 急になんのこと?」
しかし、ご主人様の返事はひどく素っ気ないものだった。
「だいたい、俺もってどういうこと? まるで私が貴方に好意を寄せているみたいじゃない」
「だって確かに、ご主人様も俺のことが好きって……ほら、海沿いを散歩する時にも、ベッドでも……」
「何を言っているのかしら? 夢でも見ていたのではなくて?」
「えっ?」
怪訝な顔で俺を見つめるご主人様の様子に、俺は戸惑いを隠せなかった。
「私が貴方に好意? 身の程をわきまえていないのかしら? 貴方は犬で、私は主人なのよ?」
「いやだって、夢の中で……」
「ええ、幸せそうに眠っていたものね。挙げ句の果てに夢精までして……。私、貴方がおねしょをしてしまうほど躾のなってない犬だとは、それこそ夢にも思わなかったわ」
「夢精……」
そっと下着の中へ手を入れる。ぬるりとした冷たい液体が、股間をべとべとに汚しているのがわかる。
「あ……」
「しかも私のベッドで、なのだけれど? 主人の寝床で勝手におねしょをした罰、どうしましょうか?」
「申し訳ありません……」
「わかったらシーツと毛布を洗ってきてもらえるかしら? もちろん、自分の体と下着も洗ってくるのよ」
「はい、わかりました……」
あれは本当に夢だったのか。ご主人様が俺の夢の中にやってきたのではなく、全て俺が見ていた夢でしかないのか。
そう考えながらシャワーを浴びるべく脱衣所で服を脱げば、
「あ……」
鏡に写った俺の首元に、確かに真新しいキスマークが二つ付いているのを認められるのだった。
Comments
そうなんですよね〜! 可愛くてたまらないからこそ意地悪してあげたい、可愛がりたいっていう優しさなんですよね! 主従関係と信頼関係の上でたっぷりいちゃマゾエッチやっていきたいです!
龍生
2019-12-10 03:22:47 +0000 UTCいっぱいいじわるしちゃうご主人様ですが、その根底にあるのはマゾ犬くんへの深い愛情なんですよね。 あまあまマゾエッチ大好きです……
プッチャン
2019-12-09 12:02:14 +0000 UTC読んでくださりありがとうございます〜! エッチなお話の邪魔になるかな〜と思ってたんですけど2人の関係を進めるためにちょっとだけお出ししました。 何があっても意地悪だけどマゾ犬くんの味方のご主人様良いですよね……。
龍生
2019-12-08 14:37:00 +0000 UTCマゾ犬くんも重い過去を背負ってたんですね。 そしてやっぱりいじわるなご主人様素敵ですわ。
プッチャン
2019-12-08 13:59:21 +0000 UTC