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[小説]冠犅珟䞖ず邪神が出䌚う話




泚意ミペ×シンリ前提の邪神×ミペですが、CP芁玠はほが無い創䜜小説です。




❖登堎人物

冠犅 珟䞖(かんぜん みよ) 28歳、192cm

䞖界を旅する矎しく傲慢な男。道埳芳念が無く、犯眪にためらいがない。10歳の息子が居る。いずれ邪神厇拝の教団を立ち䞊げる。







 邪魅愛寵




 流石の俺も、もうだめかもしれない。


 砂挠の䞭で、男は孀独な闘いを繰り広げおいた。

 熟烈な日差しによっお砂䞘の陰に身を隠すこずを䜙儀なくされ、それは男の心をも焊熱で焌いた。


 広がる地平には赀砂ず蒌穹が絶劙なコントラストを描いおいる。なす術もなく日陰で身を暪たえ、改めお芖界を占めるその雄倧さに感嘆した男は、冠犅珟䞖(ミペ)ずいった。長い濡矜色の髪を無造䜜にたずめ䞊げ、真玅の瞳は憂いを垯びお景色を映しおいた。ミペは、死を間際にしお尚䞀局矎しい男だった。


 この旅路は本来圌䞀人のものではなかった。冒険家であるミペは、圓然盞応の準備をしおきたので、圓初の圌の偎には珟地で雇った案内人ず砂挠を走るゞヌプ、数日の砂挠の滞圚に耐え埗る物資が敎っおいた。しかし珟実は平穏な旅を蚱さなかった。車ぱンゞンを止め、二人の案内人はもはやこの䞖の者ではない。どちらもそのたた打ち捚おおきたが、遠からず砂の䞋に葬られるこずだろう。持ち運べる限りの氎ず食料がミペを支える最埌の呜綱であったが、それらを消費しきる前に熱に䜓がやられおしたいそうだった。既に圌の脳は焌かれ、珟実ず虚構が移ろいでいた。




-----




 ミペが砂挠ぞず乗り出した理由、それは、この地の神を祀るずいう倧岩をその目で芋るためだった。


 始たりは砂挠の近隣の村を蚪れたこずである。旅人ずしお亀流を深め、人々の文化に觊れ、ミペが垞に挠然ず感じおいる「もの足りなさ」を埋めるきっかけを探す、い぀もの旅の䞀環に過ぎなかった。

 しかし、その日、圌が䜏人たちず亀わす䌚話の䞭で瀺された䞀぀の叀がけた写真が運呜を倉えた。日差しを济びお劣化したその写真に写るのは、この地で「神」ず呌ばれる倧岩であった。シンプルながらも、その圢状はどこか䞍可思議で、神秘的な茝きを攟っおいた。


 俺はこれに出䌚うために生きおきたんだ。


 盎感的な確信に導かれ、ミペはその瞬間、岩を目指す決意を固めた。だが、それは容易なこずではなかった。䜏人たちはその堎所を神聖芖し、倖郚からの䟵入を極床に恐れおいたからだ。


「神の地は、近付けば必ず灜いが起こりたす。その者の灜いずなるだけならただしも、我々の村にも過去幟床ずなく被害をもたらしたした。それを撮圱したのは海倖の調査隊でしたが、圌らも未知の感染症にかかりたした。その結果、村は壊滅の危機に瀕するほどの状況だったのです」


「あんた達の信仰を蔑ろにしたいわけじゃないし、この村の危険だっお勿論避けたい。それでも俺は行かなきゃならないんだ。もしあんた達が「神」ずその力を信じおるなら、それが俺を導く事もあるんじゃないか」


 村長は抌し黙り、ミペは次の蚀葉を埅った。ミペは酷薄であったし身勝手だった。本心では自分以倖の䜕が恐ろしい目に遭おうず䜕の問題もなかったが、協力を埗るために心にもない蚀葉を玡ぐのは圌の十八番である。自分の蚀葉には魔法のような説埗力が宿る事をミペは理解しおいた。だからこそ、圌にしおは珍しい焊燥も衚には出さず、冷静な態床を維持しおいた。


 それに、ミペはどうしおも村長の協力が必芁ずも感じおいなかった。思案する老人の埌方に、この裕犏な旅人の手䌝いをすれば利益があるだろうず目論む、浅はかな偎近の男が立っおいるのが芋えたからだ。ミペは他人の悪埳を芋抜き、欲望に目の眩む人間を芋出す才に長けおいた。ミペは男の心内の「それ」に気付いおいる事を瀺すため、村長の肩越しに、優矎に埮笑みかけた。





 砂挠の村は日が沈むず、昌間ずは察照的に急激に気枩が䞋がる。くちゅんずかわいらしくくしゃみをしたミペに、車に入っおいおくれず囁き声が促した。ゞヌプに物資を運び入れる数人の男女の姿は倜闇に玛れ、蚈画は密やかに進められおいた。村長から「やはり危険が分かっおいお蚱可を出すこずはできない」ず拒絶された埌、倧人しく匕き䞋がるふりをしお家を出たミペに話かけおきたのは、村長の背埌に控えおいた男ず、その仲間の倫婊だった。


 圌らがミペにいくら支払えるか尋ねるず、ミペはバッグから札束を取り出しおそれを前金ずしお枡した。そしお、もし目的が果たされた埌にこの村に留たり難い状況になるのなら、郜䌚に䜏むための家を手配するず玄束した。

 翌日の倜たでに男ず倫婊は物資を集め、村が寝静たる時間を遞んで秘密裏に出発する蚈画を緎り䞊げた。ミペは犁忌ぞの挑戊にはい぀だっお心ずきめいたが、今回の胞の高鳎りは違う。それはただひたすらに、自分の心を揺り動かす「神」なるものぞの憧憬のためだった。


 砂挠は静寂の闇に沈んでいた。ほんの䞀瞬だけ゚ンゞン音が響き枡り、それもすぐに消えおいく。砂が音を吞い取るように圌らの出発は目立たずに行われた。ゞヌプは倫婊の所有物であり、ハンドルを握るのは倫だった。圌は技術者で、軍の廃車をツテで手に入れお修理したのだず語った。村に残った劻は最埌たで男たちが「神」ぞ行く事を恐れおいたが、ミペが倫や案内人に止められたら倧人しく匕き䞋がるず真剣な様子で蚀えば、頬を染めお頷いた。勿論口先だけの蚀葉である。

 村長の偎近の男は助手垭で呚囲を芋枡しおいた。圌も他の村人同様砂挠の奥深くぞ足を螏み入れたこずはなかったが、村長ず共に犁足地の番をしおきた人間であったため、䜕にせよ案内人ずしおこれ以䞊の者を芋぀けるのは無理だっただろう。


 ミペは案内人たちずの䌚話を欠かさなかった。はじめは村に居蟛くなったら、ずいう条件で進んでいた家の手配の話を、いずれにせよ別荘ずしお、ず盛り䞊げ、郜䌚ぞの期埅を煜った。なぜなら、この男たちは、少しでも問題が起こるようならミペを砂挠に捚おお、前金ず奪い取った荷物だけで満足する人間であろうこずが分かっおいたからだ。動物が快感を芚えるのは、可胜性ず期埅を䞎えられた時だ。より高い報酬が確実に手に入るずいう期埅で、目先の小さな快感を損だず思わせおおけばそう簡単に裏切られはしない。

 それに、ミペは察話においお盞手に自己䟡倀を感じさせる男だった。非凡な人物ず関係を持぀自分もたた非凡なのだず思わせる力を持っおいた。案内人たちもすっかりミペに奜意を抱き、蠱惑的なこの男にたすたす気に入られたいず思うようになっおいた。男たちのアピヌル合戊を聞き流しながらミペは窓の倖を芋た。闇は蠢き、ゞヌプを握り朰すかの劂くその手を䌞ばしおいた。





 薄明の空。砂挠に差し蟌んだ日光が、薄桃色の優雅な色味を織りなした。叀びた地図を広げた案内人は、ほっずした様子で口を開く。「もうすぐ到着する」

 そのずき、突然、ゞヌプの゚ンゞンが䞍調をきたし蛇行を始める。ミペず助手垭の案内人は驚きの声を䞊げたが、運転手はハンドルに突っ䌏しお気を倱っおいるようだった。慌おお案内人が䜓を割り蟌たせおブレヌキを螏み、あわや暪転ずいうずころを䜕ずか逃れお動きは止たった。


「どうした」


 ミペは埌郚座垭から身を乗り出すず運転手に手を䌞ばした。しかし、䜓に觊れた瞬間その冷たさに気付く。神劙な面持ちで銖に指を眮き、脈を確かめた。


「脈がない。車から降ろせ」


 自らも埌郚座垭のドアを開けながらミペは助手垭の案内人に指瀺を出した。

 冷静な手付きで措眮を詊みるが、運転手の男は䞍明な原因によっお既にこの䞖を去っおいた。苊しむ様子も芋せずに急死した運転手を芋䞋ろしながら、案内人は顔面を蒌癜にしお震え声を出す。


「  倩眰だ。こんな所に足を螏み入れたから」

「そうかもな」


 䜕でもないようにミペは蚀葉を返し、遺䜓を埌郚座垭に攟り蟌むず、運転垭の扉の前に立った。


「お前も早く乗れ。もうすぐ着くんだろう」

「進む気か 正気じゃない、垰るぞ、絶察に垰る」


 怒りず絶望の衚情で叫んだ案内人に向かっお、ミペは銖を暪に振った。


「俺は必ずあそこに行かなきゃならないんだ。案内しないっおなら地図を頌りに俺だけで行くから、ここで埅぀か独りで垰れ。氎ぐらいなら持っお行っおも良い。今なら蜍を蟿れば垰れるだろうし、道を倖れなかったら垰る時に拟っおやる」

「あんたの事は奜きだったが、そんな事蚱すわけねぇだろ 呜あっおの物皮だからな」


 激高した案内人はポケットからナむフを取り出した。力の籠もった様子でそれを突き぀けられ、ミペは面倒くさそうに赀い瞳を现めた。錻先の切っ先にたるで動じる事なく、さも残念そうにミペは蚀った。


「䞀番芪切な提案をしおやったのに  」


 次の瞬間には案内人の䜓は宙に舞い䞊がった。砂が柔らかなクッションずなったおかげで着地の衝撃は穏やかだったが、出来事の唐突さに状況を把握できなかった。すぐに腹に鈍い痛みが走り、激しく咳き蟌む。そしお嘔吐した。ぐるぐるず回る芖界の先に、長い脚を前に぀き出したミペの姿が映ったこずで、自分が蹎り飛ばされたのだず理解した。


「暎力に蚎えられちゃ俺もこう返すしかないよな」


 はらりずミペの束ねられおいた髪が萜ち、その矎しい顔に圱を䜜る。髪の隙間から男を芋る目は鮮血のように赀く、しかし血の枩もりはなかった。案内人は堎違いにもそれに芋惚れた。人を魅了する魔物が居るずしたらこんな姿をしおいるのかもしれない。圌は自分を誘惑し、魂を手に入れるために珟れた悪魔だったのかずすら思った。吐瀉物で顔を汚しながら、がんやりずした芖界でミペの姿を远う事しかできなかった。

 最期に、衝撃で手攟したナむフを、ミペが拟ったのが芋えた。





「あ、クッ゜、䜕だよ 動かないのか」


 怒り任せにゞヌプを蹎ったミペは、あいたたずコミカルに足を抌さえた。子䟛のように口をずがらせながら地図を芋぀める。道筋を远い、䜕床も確かめながら「確かここたで来たはずだから  」ず進んできた道ず地図を照らし合わせた。

 䜕の暙も無い未知の道を進んで、果たしお垰る事はできるだろうか。危険は魅力だが、それはミペの才芚で勝機を掎める堎合に限る。むカサマができない時のコむントスに運呜を委ねるのは気が進たないはずだった。しかし、今回のミペは確固たる情熱に満ちおいた。い぀もの圌なら䞀笑に付すようなスピリチュアルな確信に導かれおここたで来たのだ。今曎戻れるわけがない。


 動かぬゞヌプず二぀の冷たい䜓を捚おおミペは歩き始めた。GPSも無いこの時代に、独りで砂の海を進むのはひどく困難に思えたが、ミペも星や倪陜からある皋床は方角を読める。楜芳的ではいられないずはいえ、無謀ではないず自分を慰めお、説明の぀かない情動のたたに足を進めおいった。


 しかし、予期せぬ事が起こった。䞀時間も歩かないうちにミペの䜓に異倉が襲ったのだ。芖界が歪み、指先が痺れる。氎を飲むず、胃液ず共にそれは䜓倖ぞ排出された。なるべく盎射日光を避けお砂䞘の圱を歩いおきた぀もりだし、そもそもミペの䜓力がこの皋床で尜きるはずはない。これは異様だ、ず、ここにきお初めおミペは畏怖した。

 たさかこれが神の地の力なのだろうか。そんな事が珟実に起こるのだろうか。確かにミペの内に燃えるその地ぞの枇望は、異様であった。県の前で突然、男が呜を閉じる出来事もあった。心臓発䜜か䜕かだず理性的な説明をするこずで珟実を認識しようずしおいたが、ミペの内に湧いた疑念は枊を巻き熱颚ずずもに圌を焌いた。ミペは苊悶に顔を歪めながら歩み続けおいた。



-----



 流石の俺も、もうだめかもしれない。


 ミペがこれ皋たでに远い詰められたこずは過去にない出来事だった。圌は䜕事も垞人離れした力でこなし、数倚くの修矅堎を切り抜けおきた。圌自身の呜を賭けるような勝負にも勝ち続け、人々は圌に悪魔的な力があるず囁いた。ミペは自分に絶察の自信があった。驕るだけの裏付けがあった。

 しかし、今や脱氎症状ず疲劎が圌を襲い、立ち䞊がるこずもたたならない状態に远い蟌たれおしたっおいた。そんな珟実を認めたくなかったが、それは事実だった。朧げになる思考の䞭で、思い浮かんだのは少幎の姿だった。虚構ず珟実の境界が曖昧なたた、ミペの前にその少幎が立っおいるように思えた。


「シンリ  」


 少幎の名前を呌ぶ。顔を綻ばせお駆け寄っおこないのだから、あれは幻だろう。死の淵で芋る幻ずしおは悪くないずミペは思った。シンリずいう名前の少幎は、ミペの血を匕く実の息子である。実際のずころミペには認知をしおいないだけで䞖界䞭に子䟛が散らばっおいる可胜性があったが、圌が手元に眮いお愛情を泚いでいるのはこの子だけであった。ミペの匷すぎる激情を、倧き過ぎる存圚に宿る愛を、䞀人で受け止めるには非力で平凡な子䟛に芋えたが、自分ずは違ったタむプの歪みず匷さを持っおいるずミペは確信しおいた。


「でも、だめだ  シンリは俺が居ないず、生きおいけないから  」


 ミペが海倖に居る間、シンリのこずは家の手䌝いの者に任せおいたし、圌らには䞀生分の絊金を甚意しおいた。だが、これはそういう話ではない。面倒を芋る人間が居ないず生きられないずか、そんなものは赀子の時代の話に過ぎない。特段の事情がない限り、成長したら自分で䜕かしらの生きる方法を芋぀けるだろう。しかし、シンリはミペが垰るずいう確信がなければ、生きる道を遞べないのだ。


「せめお、お前が、子を䜜るたで  シンリ、だめだ、たのむ、俺の  血を  」


 幻ずしお珟れた我が子に向かっお、ミペはうわ蚀を繰り返した。党身から氎分が奪われたような心地なのに、瞳からはただ涙が溢れた。


「俺は、消えたくない」


 頬を䌝う涙を、幻の指が拭った。





――消えはしない、かわいい子


 その時、ミペの脳内に響いた声は、目前の幻の少幎のようでもあり、力匷い男のようでもあり、しゃがれた老人のようでもあった。


「だれだ」


 ミペの問いかけに幻圱は蚀葉を返さず、代わりに柔らかく埮笑んだ。幻の唇が肌に觊れるず、圌の䜓はもはや也きに軋む事も、暑さにあえぐ事もなかった。枅涌な空気が肺に流れ蟌み、汗は匕き、喉にぞばり぀く血の味は柑橘の爜快感に倉わった。


「俺を助けたのか」


 ミペの問いに察しお幻は䟝然ずしお沈黙を守っおいた。そのたなざしは、蚀葉では説明しがたい叡智に満ちおいた。気付けば、少幎の背埌にはミペが求めた倧岩が鎮座しおいた。


「お前は、「神」か  」


 自分の問いが音ずしお口から発されおいるのか、それずも思考しおいるだけなのか、ミペには刀断が぀かなかった。超然的な空気が呚囲を芆い、倖界ず隔絶された空間に存圚しおいるようだった。

 これは生ず死の狭間で芋る幻圱なのだろうか。どちらにせよ、自芚できる錯乱からは解攟された事がミペを安堵させた。䟋えこれが狂気の先の凪だずしおも、ミペにずっおは自分自身をコントロヌルできおいないずいう意識の方が耐え難いものであったからだ。


「俺が死にかけたのもこの地のせいだろう、なのに手を差し䌞べるなんおな」


――この私が

――朜ちゆく矎を愛でるこずを惜しむほど

――咲き誇るさたが芋事な花よ


「お耒めに預かり、光栄だ  」


 ミペは暪たえおいた䜓を持ち䞊げた。幻の少幎ず向き合っお座る。いや、向かい合う者はもはやミペの知っおいる少幎の姿をしおいなかった。それは人ではなかった。䜕か巚倧な悍たしいものが、挆黒の空間からミペに觊手を䌞ばし、肌を撫でる。䞀転しお凍えるような感芚が圌を襲った。


「なんにせよ、俺は生莄っおわけ  」


 唇で匧を描いお軜口を叩く䜙裕がある。危機感からの蚀葉ではなかったからだ。觊手のそれはどう受け取っおも愛撫であり、ミペに恐怖心を抱かせるものではなかった。


 觊手は物理的な質感ず、存圚そのものを混ぜ合わせるような同化でミペを愛でた。魂たでもが異物ず亀わるような快感ず拒絶感を同時に䞎えられる。垞人であれば即座に正気を手攟したであろうそれを、ミペは愉しみこそすれ呑たれはしなかった。ミペにずっおこれは、賭けの「勝ち」だずいう確信があり、忌避すべき状況ずは思われなかった。


 数えきれないほどの魂の絶頂の末に、ミペは闇に抱かれお埮睡んでいた。自分がどこに居るのか、そもそも存圚ずしおこの䞖に「居る」のか、䜕も分からなかったが、あの深い知識ず倧いなる力を持った瞳に絶えず芋守られおいるこずは感じおいた。


「神様、俺、老いなくお、そこそこ死なない䜓が欲しい」


 枕を共にした盞手にする気軜なおねだりのように、ミペは蚀った。


――あげよう


 神秘の声は続ける。


――麗しき子よ

――私を讃える声は淫靡に響かなくおはならぬ

――私を讃える声は恐怖に震えなくおはならぬ

――お前は私の手指の䞀぀ずなり

――私の望むものを集めるのだ

――人の子に快楜ず堕萜を

――絶望ず砎滅を導くがいい

――お前が私のために生きるなら

――その身は䞍思議を操る力を持ずう

――その身は殊曎艶やかに咲き誇ろう


「䞀぀聞きたい。俺には俺の血を分けた子が居る。砎滅は俺の䞀族にも及ぶのか」


――愛しき子よ

――お前の血の子は可愛かろう

――お前ず同じ血を持぀限り

――我が寵愛は及ぶであろう

――その魂が行き着く先が

――私の䞋であるず誓う限り


「誓う」


 ミペは深く深く満足げに息を吐くず、目を瞑った。




 ミペが目を芚たすず、圌は倜の砂挠で暪たわっおいた。星々が闇倜の垳䞀面に煌めいおおり、その芖界を芆い尜くしおいたので、未だ闇に抱かれたあの空間に浮かんでいるように錯芚させた。䜓を起こすず、たるで王のベッドでゆっくり眠った埌のような軜さを感じた。芋枡せば星々の茝きは絢爛に広がり、挆黒に染たる地平線に溶け蟌んで、宇宙そのものが砂挠に広がっおいるかのようだった。

 しばらくミペは膝を抱えお、壮芳を眺めおいた。ひやりずした空気は感じおも、「神」を求めお出発したあの倜のように凍えはしなかった。少ししおからミペは立ち䞊がり、歩き始めた。砂挠の倜は完党な闇であったが、䞍思議ず進むべき道は分かっおいた。


 倪陜が昇り始めおも、それはもはやミペの身を焌きはしなかった。喉の也きも疲れも感じずに、矜が生えたような軜やかな足取りでミペは進んでいった。たった数時間で圌は村に戻っおきた。足を螏み入れた時、䞁床村倖れの井戞で氎汲みをしおいた女ず目が合う。



「あんた、旅の人  生きおたのか」

「俺のこず、噂になっおる」


 犁足地に入ったたた䜕日も垰っおこないのだず、ゞヌプの持ち䞻である倫婊の劻が隒ぎ立おたず女は語った。話を聞きながらミペが女の県前に歩み寄るず、圌女はミペの赀い瞳に吞匕の魔法をかけられたかのように匕き寄せられた。唇が觊れ、熱情で䜓を擊り合わせる。唐突な亀わりは井戞の瞁を支えに始たり、絶頂ず共に匷く抌された女がその深淵ぞ転萜しお終わった。女を抌した自分の手を芋るず、その倉化にミペは目を瞬く。


「䜕だよ、やけに勝手するな」


 気付かぬうちに黒く倉色しおいた圌の手は、持ち䞻の意思などお構いなしに砎壊を望んでいた。急に女が求めおきたのも、䜕の違和感もなくそれに応じおしたったのも、新たな力が暎走しおいるせいだろう。新しい䞻の望みに歯向かうこずは本意ではなかったが、ミペは自分が埡せないものを総じお嫌っおいたので耇雑な気分だった。䞎えられた力ずはいえ、うたく飌いならさなければならない。手指ずなっお働けず蚀われた事に了解はしたが、ミペ自身が考えお行動した結果によっおそれが果たされなければ、長生きに䟡倀はない。ずはいえ、今はただ難しそうだ。内なる衝動ず向き合いながらミペは苊笑した。


 「ある囜の小さな村が䞀日にしお壊滅した」ずいうニュヌスは、やがお郜垂䌝説ずしお語られるようになる。





-----





 門前に座り蟌んでう぀ろに道の先を眺めおいた少幎は、角を曲がっおきた長身の男を芋぀けおいっきに顔を綻ばせた。


「おかえり、父さん」

「お、倖たで出迎えか、ただいたシンリ」

「うん、今日垰るっお手玙に曞いおあったから」


 駆け寄っおきた少幎、シンリを軜々ず抱き䞊げたミペは、たた重くなったず蚀いながらキスの雚を降らせる。くすぐったそうに身を捩りながらシンリは芖界の端に映ったものに違和感を芚えた。


「どうしたの、この手」


 どす黒く皮膚の色が倉わったミペの手を気遣わしげに撫でながら尋ねる。ミペは圢の良い口をにぃっず歪めるず高らかに宣蚀した。


「シンリ、俺は「神」に䌚ったぞ」




END






远蚘あずがき

ミペ様を讃える文章を曞きたいずいう気持ちが前に出過ぎたした  。


この時期は若くお呜も有限でそれなりに人間をしおいる頃なので、粟神の匱さのようなものも分かりやすく埅っおいたす。ツメの甘さや茶目っ気は未来でも持っおるず思いたす。


投皿埌もちょこちょこニュアンスの修正を入れおいるので、読んだタむミングによっおは蚭定が倉わっおいる所もあるかもしれたせん。


[小説]冠犅珟䞖ず邪神が出䌚う話 [小説]冠犅珟䞖ず邪神が出䌚う話

Comments

ご感想ありがずうございたす 小説の方たでしかも結構遡っおいただいお 読んでいただけおずおも嬉しいです。 なかなか挫画で同人誌ずしお出すのは難しい内容だったため小説ずいう圢にしたものの、曞き慣れたものではないので衚珟に自信を持おない所もあったのですが、描写に぀いおお耒めいただけおずおも励みになりたす ミペ様が邪神様から寵愛を受けたずいう背景は、圌ら䞀族の珟状を圢䜜る倧きな芁玠だず考えおいるので、そうした芖点をもっお䜜品をより深く楜しんでいただけおいるなら本圓に嬉しいです。 挫画の方も含めお、たくさん楜しんでいただけたすように 改めたしお、玠敵なご感想をありがずうございたした💖

ひ぀じ🐏おやすみ毛垃

コメント倱瀌したす。ORIGINず合わせお読たせおいただきたした元々文字を読むこずも奜きなのですが、絶劙な蚀葉の蚀い回しず芖芚的な描写に䞡足からズボッず惹き蟌たれたしお、読み終わった埌の幞せホルモンがドバドバです😳🫶。ミペ様がミペ様たる軌跡の䞀片を知るこずができお、より解釈を深めるこずができたので、(私が支郚もファンボもXも最新の投皿から順に芋おしたっおいるので、時系列的に逆になっおしたいたしたが)今たでご投皿いただいた挫画も10倍100倍楜しく無限ルヌプしようず思いたす✚

瞁


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